昭和7年建設の鉄筋コンクリート造 ― 2011年に登録
旧飯南郵便局局舎は、三重県松阪市飯南町横野字殿垣内212-3にある昭和7年(1932年)建設の鉄筋コンクリート造2階建で、2011年(平成23年)1月26日に国の登録有形文化財に登録された。塔屋付、建築面積80平方メートル。所有は個人である。
松阪市の記録は、この建物を国登録有形文化財、昭和7年、飯南町横野、個人所有、鉄筋コンクリート造2階建 塔屋付、建築面積80平方メートルと記載する。同市は登録の日付を平成23年1月26日としている。
登録は「指定」とは別の制度で、届出制を基本とし、所有者が使い続ける自由を広く残す。個人所有のまま残されている建物が登録の対象となるのは、この枠組みによる。
建設時は柿野郵便局だった
登録名称と建設時の名称は一致しない。この建物は昭和7年に柿野郵便局として建てられた。
名称が変わったのは行政区画の変遷による。昭和31年(1956年)に飯南郡の柿野町と粥見町が合併して飯南町となり、郵便局の名称も飯南郵便局に改まった。さらに平成17年(2005年)の合併で飯南町は松阪市に編入されている。
登録名称の「旧飯南郵便局局舎」は、合併後の名称に「旧」を冠したものである。建物の名前は建設時ではなく、閉局時点の名称に基づく。資料を参照する際、昭和7年の記録には柿野郵便局として現れる点に注意したい。
郵便局としての使用を終えたのちも建物は残り、現在は個人の所有である。
山間の農村に鉄筋コンクリート造
この建物の位置づけは、構造そのものにある。
昭和初期の山間農村部において、鉄筋コンクリート造の建築は一般的ではなかった。木造が当然の環境で、郵便局という公共的な施設に鉄筋コンクリート造が採られている。構造の選択そのものが、当時この地域に近代の技術が届いていたことを示す。
2階建で屋上に塔屋を備える。塔屋は昭和初期の郵便局や公共建築に見られる要素で、建物の輪郭に垂直方向のアクセントを与える。建築面積80平方メートルは小さく、規模ではなく構造と意匠で公共施設としての性格を示している。
築90年を超えて建物が残っていることは、鉄筋コンクリート造の耐久性を示すものでもある。
和歌山街道に面して建つ
旧飯南郵便局局舎が面するのは和歌山街道である。
和歌山街道は紀伊半島をほぼ東西に横断し、松阪と和歌山を結ぶ街道である。江戸時代には紀州藩の藩道として参勤交代に用いられ、伊勢参宮や熊野詣、吉野詣の道としても、また海産物を大和地方へ運ぶ交易路としても使われた。
飯南町横野から松阪市六呂木町にかけては伊勢本街道と重複する区間である。古くからの街道沿いに、昭和初期の近代建築が建っているという位置関係が、この建物の立地の意味にあたる。
登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」で、三つの基準のうち最も適用例が広い。単体の意匠の卓越よりも、町並みのなかで果たしている役割を評価する枠組みである。街道沿いという立地は、この基準と対応している。
訪ねる
建物は個人の所有であり、内部は公開されていない。見学は外観のみとなる。
和歌山街道(国道166号)沿いに面して建っているため、道路から外観を見ることができる。周囲は住宅であるので、撮影や見学の際は近隣への配慮が要る。敷地内への立ち入りはできない。
飯南町横野は山間の集落である。付近に公共交通の便は多くない。
交通はJR紀勢本線・近鉄山田線の松阪駅から車で約40分。伊勢自動車道の松阪インターチェンジから車で約35分である。
Q&A
- 旧飯南郵便局局舎はいつ建てられ、いつ登録されましたか。
- 昭和7年(1932年)の建設で、2011年(平成23年)1月26日に国の登録有形文化財に登録されました。鉄筋コンクリート造2階建、塔屋付、建築面積80平方メートルです。所有は個人です。
- なぜ登録名称と建設時の名称が違うのですか。
- 昭和7年の建設時は柿野郵便局でした。昭和31年(1956年)に飯南郡の柿野町と粥見町が合併して飯南町となり、郵便局の名称も改まりました。登録名称はその後の名称に「旧」を冠したもので、昭和7年の記録には柿野郵便局として現れます。
- この建物のどこが評価されているのですか。
- 昭和初期の山間農村部において鉄筋コンクリート造は一般的ではなく、郵便局という公共的な施設にこの構造が採られている点です。構造の選択そのものが、当時この地域に近代の技術が届いていたことを示します。登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」です。
- 和歌山街道とはどのような街道ですか。
- 紀伊半島をほぼ東西に横断し、松阪と和歌山を結ぶ街道です。江戸時代には紀州藩の藩道として参勤交代に用いられ、伊勢参宮や熊野詣の道としても、海産物を大和地方へ運ぶ交易路としても使われました。飯南町横野から松阪市六呂木町にかけては伊勢本街道と重複します。
- 旧飯南郵便局局舎は見学できますか。
- 個人の所有で内部は公開されていません。見学は外観のみで、和歌山街道(国道166号)沿いに面しているため道路から見られます。敷地内には立ち入れません。周囲は住宅なので近隣への配慮が必要です。
基本情報
| 名称 | 旧飯南郵便局局舎(きゅういいなんゆうびんきょくきょくしゃ)/建設時の名称は柿野郵便局 |
|---|---|
| 所在地 | 三重県松阪市飯南町横野字殿垣内212-3 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物)/登録基準「国土の歴史的景観に寄与しているもの」 |
| 指定年 | 2011年(平成23年)1月26日 登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 鉄筋コンクリート造2階建、塔屋付、建築面積80平方メートル。和歌山街道に面して建つ。1932年 |
| 所有者 | 個人 |
| 公開状況 | 内部は非公開。外観のみ道路から見学可。敷地内への立ち入りはできない |
参考文献
- 松阪市 文化情報 旧飯南郵便局局舎
- https://www.city.matsusaka.mie.jp/site/culture-info/kyuiinanyubinkyokukyokusya.html
- 松阪市 松阪市の文化財
- https://www.city.matsusaka.mie.jp/site/culture-info/matsusakashi-bunkazai.html
- 三重県 歴史の道 和歌山街道
- https://www.bunka.pref.mie.lg.jp/kaidou/rekisi/rekisi8/index.htm
- 文化庁 登録有形文化財(建造物)の制度
- https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/yukei_kenzobutsu/
最終更新日: 2026.09.03