山中家住宅(名張市)とは

山中家住宅(やまなかけじゅうたく)は、三重県名張市本町の初瀬街道沿いに建つ江戸時代末期の町家で、主屋・離れ・北蔵・南蔵の4棟が令和元年(2019年)9月10日に登録有形文化財となった。登録番号は24-269から24-272までの連番で、4棟とも同じ日に登録されている。

敷地は奈良の長谷寺と伊勢を結んだ初瀬街道が折れ曲がる角にあたる。主屋が街道に東を向けて建ち、その奥に中庭を囲んで離れと2棟の土蔵が配される。北棟の屋根に据えられた鬼瓦には「嘉永六年」(1853年)の銘が刻まれており、少なくとも19世紀中ごろには現在の主屋が建っていたと考えられている。

街道の角で営まれた酒屋と宿

山中家住宅の土地には、山中家が移ってくる前から街道に向けた商いの歴史がある。平成31年(2019年)3月に登録の答申を伝えた地元紙の報道によると、18世紀中ごろには酒造業の「賀渡屋」が、19世紀初めごろには宿屋の「角屋」がこの角地で営まれていたという。登録時の所有者である山中家は、明治時代の初めに旧国津村から移り住んだ家とされる。

角屋の名は、測量家伊能忠敬の測量日記にも現れる。伊能忠敬e史料館が公開する日記の宿泊地一覧では、第6次測量の一行が文化5年12月23日(1809年2月7日)に名張町に泊まり、本宿を年寄の辻吉治郎方、別宿を角屋源三郎方としている。一行は大和の初瀬村から髭無村を経て名張に入り、翌日は阿保宿へ向かった。この角屋源三郎方が山中家住宅の地にあった宿と同じものかどうかは、日記の記載だけでは確かめられない。

主屋は北棟と南棟の2棟が並ぶ形で、地元紙は北棟を住まい、南棟を泊まり客の棟として使い分けていたと伝えている。明治時代初めの図面には、南側にもう1棟が連なっていた姿が描かれているという。

4棟の配置と登録の理由

山中家住宅の4棟は、街道から敷地の奥へ向かって次のように並ぶ。

  • 主屋は街道に面して東向きに建つ。北棟は切妻造、南棟は入母屋造で、どちらもつし二階の造りをとる。
  • 北蔵は主屋北棟の西に、東を向いて建つ調度蔵である。
  • 離れは敷地の北西の隅に、南を向いて建つ明治時代前期の座敷である。
  • 南蔵は敷地の南西の隅に、北を向いて建つ穀物蔵である。

離れと北蔵が北西の隅で1つのまとまりをつくり、南蔵はその向かい側から中庭を受け止める。文化庁の解説文が述べるように、南蔵は主屋の座敷や離れから眺める中庭の景色に添えられた建物でもある。

文化庁の国指定文化財等データベースでは、主屋・北蔵・南蔵の3棟が「国土の歴史的景観に寄与しているもの」、離れが「造形の規範となっているもの」として登録有形文化財に登録されている。主屋の解説文は、近世の宿場町の景観を伝える町家と位置づけている。

名張市の旧市街では、登録有形文化財の多くが上八町から新町にかけての初瀬街道沿いに集まっている。山中家住宅の登録を報じた記事は、それまで市内で登録された20件もこの約2キロの区間に並ぶと紹介していた。山中家住宅はその街道の中ほど、本町の角地で町並みの一部をなしている。

見学と行き方

山中家住宅は個人の所有で、名張市の指定文化財一覧(令和7年(2025年)5月27日現在)でも所有者は個人とされている。令和8年(2026年)春には、旧市街で空き家の活用に取り組む一般社団法人つなぐと東京のランドブレイン株式会社が共同で設立した株式会社kyucho hotelが管理運営を引き受け、山中家住宅を一棟貸しの宿泊施設「kyucho hotel(旧町ホテル)」として開業した。

そのため、建物の内部に入れるのは宿泊者に限られる。宿泊の受付は近くの元町にある拠点「FLAT BASE」で行われ、そこから山中家住宅まで案内される。敷地内に駐車場は無い。宿泊者以外が見学できるのは、初瀬街道に面した主屋の外観である。離れと2棟の蔵は敷地の奥に建つため、公道からはほとんど見通せない。

鉄道の最寄りは近鉄大阪線の名張駅で、山中家住宅までは道のりでおよそ1.1キロ、歩いて15分ほどかかる。街道筋は住宅地でもあるので、写真は公道から撮り、通行や住民の暮らしの妨げにならないよう気を配りたい。

参考文献

国指定文化財等データベース 山中家住宅主屋(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00012934
国指定文化財等データベース 山中家住宅離れ(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00012935
国指定文化財等データベース 山中家住宅北蔵(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00012936
国指定文化財等データベース 山中家住宅南蔵(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00012937
文化遺産オンライン 山中家住宅主屋
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/413635
名張市 文化財に関すること
https://www.city.nabari.lg.jp/s061/010/020/000/030/201502051897.html
名張市 名張市指定文化財一覧(令和7年(2025年)5月27日現在)
https://www.city.nabari.lg.jp/s061/010/020/000/030/R7shiteibunnkazaiitirann64.pdf
伊能忠敬e史料館 第6次 伊能忠敬測量 測量日記第13巻
https://www.inopedia.tokyo/database/diary/survey.php?id=13
伊賀タウン情報YOU 国の登録有形文化財に 名張市本町の山中家住宅(2019年3月19日)
https://www.iga-younet.co.jp/2019/03/19/13532/
伊賀タウン情報YOU 文化財住宅を宿に再生 名張市本町に「旧町ホテル」(2026年5月8日)
https://www.iga-younet.co.jp/2026/05/08/114510/

最終更新日: 2026.10.02

基本情報

名称山中家住宅(名張市)
所在地三重県名張市本町200
所有者個人
指定登録有形文化財 4件
座標34.61883, 136.08733