山中家住宅主屋とは
山中家住宅主屋は、三重県名張市本町の初瀬街道沿いに建つ江戸時代末期の町家の主屋で、令和元年(2019年)9月10日に登録有形文化財に登録された。木造平屋一部2階建の瓦葺で、建築面積は209平方メートルある。
文化庁のデータベースは建築年代を江戸末期(1830〜1868年)とし、昭和59年(1984年)に改修を受けたと記す。北棟の屋根に据えられた鬼瓦には「嘉永六年」(1853年)の銘があり、山中家住宅主屋が遅くとも19世紀の中ごろには建っていたことを示す手がかりになっている。文化庁の解説文はこの家を「もと宿屋」と紹介しており、街道を行き交う旅人を泊めた町家であった。
屋根の違う2つの棟が並ぶ正面
山中家住宅主屋は、街道に向かって東を正面とし、北棟と南棟の2つの棟を南北に並べた形をとる。北棟は切妻造、南棟は入母屋造で、街道に立って見上げると、屋根の形が左右で切り替わっているのが分かる。2つの棟はそれぞれ別に玄関を構えている。
どちらの棟もつし二階の造りで、2階は天井の低い屋根裏の部屋にとどまる。正面の1階には下屋が張り出し、その上の壁を白い漆喰で軒の裏側まで塗り込めている。木部を見せずに軒先まで白く包んだ2階の壁は、山中家住宅主屋の正面でいちばん目を引く部分である。
文化庁の解説文によると、山中家住宅主屋は2つの棟とも3室を前後に並べ、いちばん奥を座敷とする。北棟では南側に土間を通し、表の街道から奥へ抜けられるようにしている。地元紙は、北棟を家族の住まい、南棟を泊まり客の棟として使い分けていたと伝えている。
登録の理由と町並みの中での役割
山中家住宅主屋は、登録基準のうち「国土の歴史的景観に寄与しているもの」にあたるとして登録有形文化財となった。文化庁の解説文は、近世の宿場町の景観を伝える町家だと評価している。
評価の中心にあるのは、街道に向けた正面の姿である。切妻と入母屋という2つの屋根、白漆喰で塗り込めたつし二階、1階の下屋が一続きの町家の顔をつくり、初瀬街道に宿場の面影を残している。登録の調査に当たった名張市文化財調査会の委員は、地元紙の取材に対し、江戸時代の情緒をよく残す大型の町家で保存状態も良いと述べている。
明治時代初めの図面には、山中家住宅主屋の南側にもう1棟が連なっていた様子が描かれているという。いま見られる2棟の並びは、かつてさらに長かった街道の表構えの一部ということになる。
山中家住宅主屋の見どころと見学
山中家住宅主屋の正面は、初瀬街道の公道から眺めることができる。北棟と南棟の境目に立つと、屋根の形の切り替わりと、軒裏まで白く塗り込めた2階の壁がよく見える。鬼瓦の「嘉永六年」の銘は瓦の側面に刻まれているため、地上から読み取るのは難しい。
建物の内部は、令和8年(2026年)に開業した一棟貸しの宿泊施設「kyucho hotel(旧町ホテル)」の客室として使われており、入れるのは宿泊者に限られる。和室の欄間や雪見障子などは、泊まった人だけが目にできる。写真は公道から撮り、玄関先や通行の妨げにならないようにしたい。
Q&A
- 山中家住宅主屋はいつ建てられたのですか?
- 文化庁のデータベースは江戸末期(1830〜1868年)の建築としています。北棟の鬼瓦に「嘉永六年」(1853年)の銘があり、遅くともこのころには建っていたと考えられています。昭和59年(1984年)に改修されています。
- 山中家住宅主屋が登録有形文化財になったのはいつですか?
- 令和元年(2019年)9月10日です。離れ・北蔵・南蔵と同じ日に登録されました。登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」です。
- 山中家住宅主屋の北棟と南棟はどう違うのですか?
- 屋根の形が違い、北棟は切妻造、南棟は入母屋造です。どちらもつし二階で、3室を前後に並べて奥を座敷とします。北棟には南側に土間が通っています。地元紙は、北棟が住まい、南棟が泊まり客用だったと伝えています。
- 山中家住宅主屋の中は見学できますか?
- 一般公開はされていません。令和8年(2026年)から一棟貸しの宿泊施設「kyucho hotel(旧町ホテル)」として使われており、内部に入れるのは宿泊者だけです。正面の外観は初瀬街道から見られます。
- 山中家住宅主屋の外観で注目したいところは?
- 切妻と入母屋が並ぶ2つの屋根の切り替わりと、1階の下屋の上を軒裏まで白漆喰で塗り込めたつし二階の壁です。街道に立って北棟と南棟の境目を見上げると、両方を一度に確かめられます。
基本情報
| 名称 | 山中家住宅主屋 |
|---|---|
| 所在地 | 三重県名張市本町200 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) |
| 指定年 | 令和元年(2019年)9月10日登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 木造平屋一部2階建、瓦葺、建築面積209㎡ |
| 所有者 | 個人 |
| 公開状況 | 内部は宿泊施設「kyucho hotel」の宿泊者のみ。外観は公道から見学可 |
参考文献
- 国指定文化財等データベース 山中家住宅主屋(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00012934
- 文化遺産オンライン 山中家住宅主屋
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/413635
- 名張市 名張市指定文化財一覧(令和7年(2025年)5月27日現在)
- https://www.city.nabari.lg.jp/s061/010/020/000/030/R7shiteibunnkazaiitirann64.pdf
- 伊賀タウン情報YOU 国の登録有形文化財に 名張市本町の山中家住宅(2019年3月19日)
- https://www.iga-younet.co.jp/2019/03/19/13532/
- 伊賀タウン情報YOU 文化財住宅を宿に再生 名張市本町に「旧町ホテル」(2026年5月8日)
- https://www.iga-younet.co.jp/2026/05/08/114510/
最終更新日: 2026.10.02