木造校舎のなかの不燃の器
旧第二高等学校書庫は、宮城県仙台市青葉区片平にある明治43年(1910年)建設の煉瓦造建築で、現在は東北大学文化財収蔵庫として使われ、平成29年(2017年)10月27日に国の登録有形文化財に登録された。
片平キャンパスの中程、木立の中に建つ。赤煉瓦、三階建、黒瓦葺の寄棟屋根。建築面積は83平方メートルしかない。建物というより塔に近い比例だが、それは当然で、これは書物を納めるための容器である。敷地が狭く蔵書が増える以上、上へ伸ばすほかなかった。
煉瓦であることに意匠上の理由はない。明治43年当時、周囲の校舎は木造だった。どこかで火が出れば蔵書ごと失われる。この書庫は、可燃物の集まる構内に置かれた不燃の核であった。
壁を読む
積み方はイギリス積み。長手だけの段と小口だけの段を交互に重ねる、明治期の煉瓦造で主流となった手法である。基礎まわりには壁面と色の違う煉瓦を廻し、その下に切石を敷く。各階の窓台の高さには赤褐色の煉瓦による水平の帯が走る。突出させず壁面とフラットに納めた、色で描いたストリングコースである。
軒にはデンティル、すなわち歯飾りが並ぶ。西洋古典建築のコーニスから採られた要素である。四隅と側面・背面の壁体中間には付柱が立ち、下階へ行くほど太くなる。建物は足元へ向かって視覚的に広がり、安定感を得る。構造補強と意匠が同じ操作で処理されている。
出入口は東妻側。上部にセグメンタルアーチを架し、外側に両開きの鉄板扉、内側に引き込みのガラス戸を設ける。基壇部には換気口が開く。土蔵に見られる配慮と同じ発想である。
内部は木造の独立柱を立てて床を支え、小屋組は木造トラス。各階とも間仕切のない漆喰仕上げの一室で、南東部に木製の階段が付く。登録基準は「造形の規範となっているもの」、登録番号は04-141、第88回登録にあたる。
第二高等学校が残したもの
第二高等学校は明治20年(1887年)に第二高等中学校として仙台に置かれたのが始まりで、明治27年(1894年)の高等学校令により改称、昭和24年(1949年)に新制東北大学へ包括された。校舎が片平の地にあったのは明治22年(1889年)8月から大正14年(1925年)7月までの36年間である。学校はその後、北六番丁に移り、昭和20年(1945年)の戦災で校舎を焼失して三神峯へ再度移転した。
書庫は移らなかった。大正14年(1925年)に所有が東北帝国大学へ移管され、以後現在まで考古学関係の収蔵庫として使われている。第二高等学校がこの地に建てたもののうち、現存する遺構はごく少ない。この書庫はその数少ない一つである。
建築年の根拠は、宮城県教育委員会が平成14年(2002年)3月に刊行した『宮城県の近代化遺産 宮城県近代化遺産総合調査報告書』による。『第二高等学校一覧』の建物配置図にこの書庫が現れるのも明治43〜44年度版からで、記録が符合する。
改修の履歴も残る。昭和55年(1980年)に床の張り替え・建具調整・壁補修などの内部改修、平成13年(2001年)に漏水補修を含む屋根と外壁の改修、平成24年(2012年)には前年の東日本大震災による外壁クラックの補修と脱落した瓦の葺き替えが行われた。外壁の煉瓦は建設当初のものである。
現役の収蔵庫であるため内部は非公開。外観は片平キャンパス内から随時眺められ、拝観料もない。近くには第二高等学校創設以来の枝垂桜が立っており、四月上旬に合わせて訪ねる価値がある。外観の撮影に制限はない。最寄りは仙台市地下鉄南北線の五橋駅、東西線の青葉通一番町駅で、いずれも徒歩5分から10分程度。同じ片平キャンパスの南端には旧仙台高等工業学校建築学科棟が建つ。
Q&A
- 旧第二高等学校書庫の内部は見学できますか。
- 内部は非公開です。東北大学の考古学関係資料を収蔵する施設として現に使用されています。外観は片平キャンパス内から自由に見学でき、拝観料はかかりません。外観の撮影にも制限はありません。
- 旧第二高等学校書庫はなぜ煉瓦造で建てられたのですか。
- 防火のためです。明治43年(1910年)当時、周囲の校舎はいずれも木造でした。構内のどこかで出火しても蔵書を守れるよう、書庫だけを不燃の煉瓦造としたものです。基壇部の換気口や、外側の鉄板扉と内側のガラス戸という二重の建具も、土蔵と共通する防火・防湿の考え方に基づいています。
- 旧第二高等学校書庫の煉瓦の積み方は何ですか。
- イギリス積みです。小口だけの段と長手だけの段を交互に積む方式で、明治期の煉瓦建築の標準的な手法でした。壁面には各階の窓台の高さに赤褐色の煉瓦による水平の帯(ストリングコース)が壁とフラットに施され、軒にはデンティルが並びます。
- 旧第二高等学校書庫は現在どのように使われていますか。
- 東北大学文化財収蔵庫として使用されています。キャンパスマップ上の記号はD09。第二高等学校の移転にともない大正14年(1925年)に東北帝国大学へ移管されて以来、一貫して考古学関係の収蔵庫です。
- 旧第二高等学校書庫はどこにあり、どう行けばよいですか。
- 東北大学片平キャンパスの中程、仙台市青葉区片平二丁目1-1にあります。仙台市地下鉄南北線の五橋駅、東西線の青葉通一番町駅からいずれも徒歩5分から10分程度です。キャンパスの大通り沿いではなく、木立の中の赤煉瓦を目印に探してください。
基本情報
| 名称 | 旧第二高等学校書庫(東北大学文化財収蔵庫) |
|---|---|
| 所在地 | 宮城県仙台市青葉区片平二丁目1-1 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物)/登録番号 04-141/登録基準:造形の規範となっているもの |
| 指定年 | 平成29年(2017年)10月27日登録(第88回登録) |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 煉瓦造3階建、瓦葺、建築面積83平方メートル、明治43年(1910年)建設・平成24年(2012年)改修 |
| 所有者 | 国立大学法人東北大学 |
| 公開状況 | 内部非公開(収蔵庫として使用中)。外観は片平キャンパス内から見学可、無料 |
参考文献
- 国指定文化財等データベース(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00011846
- 東北大学キャンパスガイド「4.旧第二高等学校書庫」
- https://campus.bureau.tohoku.ac.jp/campusguide/bunkazai/bunkazai_04.html
- 東北大学
- https://www.tohoku.ac.jp/japanese/
- 宮城県 文化財課
- https://www.pref.miyagi.jp/soshiki/bunkazai/
最終更新日: 2026.08.07