瑞穂酢(大西家住宅)とは
瑞穂酢(大西家住宅)は、奈良県橿原市中町にある食酢醸造元の屋敷と酢蔵の一群で、明治24年(1891年)の内蔵から大正前期(1912〜1918年)にかけて建てられた11件が、令和5年(2023年)2月27日にそろって登録有形文化財となった。読みは「みずほす(おおにしけじゅうたく)」。耳成山の北に広がる集落の中にあり、屋敷の正面を北側の通りへ向けている。
「瑞穂酢」はこの家が造ってきた米酢の銘柄で、大正12年(1923年)に商標として登録された。醸造はいまもミヅホ株式会社が同じ敷地で続けている。塀の内側に住まいと工場が同居し、大正期の建物を使いながら酢を造り続けていることが、この屋敷のいちばんの特徴である。
11件は住まいの側と醸造の側に分かれる。主屋、門屋及び中門、内蔵及び北築地塀、旧味噌蔵が屋敷構えをかたちづくり、北蔵、中蔵、南蔵、旧麹室及び築地塀、米蔵、旧充填場、旧仕込み場が酢造りの工程を受け持ってきた。
米酢を造り続けてきた家
所有者の会社案内によれば、瑞穂酢(大西家住宅)の米酢造りは万治元年(1658年)、大和国十市郡中庄で当主の源の助が始めたとされる。源の助を何代目とするかは資料で食い違い、会社案内は8代、地域情報誌の取材記事は4代目と書く。明治27年(1894年)4月1日には酢の製造の許認可を得ている。
明治の終わりから大正にかけて、瑞穂酢は博覧会で評価を重ねた。明治36年(1903年)の第5回内国勧業博覧会で褒状を受け、大正5年(1916年)には全国特産品博覧会で一等金賞牌を得た。敷地の酢蔵や麹室の多くが大正前期に建てられており、時期はこの受賞とほぼ重なる。
酢造りは酒造りから始まる。会社の説明では、良質の米で麹を作り、初添え・仲添え・留添えの3段仕込みで酒を仕込む。できた酒を吉野杉の30石桶に移し、3か月以上かけて酢に変える。30石はおよそ5,400リットルで、地域情報誌の取材ではこの木桶が蔵に約80本あるという。桶の材も自社の山から取っており、平成14年(2002年)には樹齢120年、平成16年(2004年)には樹齢100年の吉野杉を伐って新しい桶を造った。
瑞穂酢(大西家住宅)の建物は、この工程を順に受け持つように並ぶ。洗米などを行った旧仕込み場、麹を管理した旧麹室、もろみを搾った中蔵と南蔵、杉の大桶で酢を熟成させる北蔵、製造の一工程を担った旧充填場。原料の米は米蔵に納められた。
敷地の構成と見る順序
瑞穂酢(大西家住宅)の表は北側の通りである。通りに沿って西から北蔵、内蔵、門屋、旧味噌蔵が並び、北西の北蔵だけが妻側を通りに向ける。門屋をくぐった奥に主屋が建ち、中門が主屋の座敷庭を仕切って式台玄関へ導く。
醸造の建物は敷地の西側にまとまる。北蔵から南へ中蔵、南蔵と続き、3棟の内部はひと続きの空間になっている。その南、亀甲形の切石積の上に旧麹室が建つ。主屋の南には旧充填場、南東には旧仕込み場があり、さらに南のかつての敷地境の石積には長大な米蔵が載る。米蔵はもとは門扉の付いた長屋門だった。
- 主屋(大正前期/登録番号 29-0340)
- 内蔵及び北築地塀(明治24年/登録番号 29-0341)
- 旧味噌蔵(大正前期/登録番号 29-0342)
- 北蔵(明治中期/登録番号 29-0343)
- 中蔵(明治後期/登録番号 29-0344)
- 南蔵(大正前期/登録番号 29-0345)
- 旧麹室及び築地塀(大正前期/登録番号 29-0346)
- 米蔵(大正前期/登録番号 29-0347)
- 旧充填場(大正前期/登録番号 29-0348)
- 旧仕込み場(大正前期/登録番号 29-0349)
- 門屋及び中門(大正前期/登録番号 29-0350)
登録の基準は棟によって分かれる。主屋と北蔵は「造形の規範となっているもの」、残る9件は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」として登録された。会社の沿革には昭和60年(1985年)に発酵蔵を新設したとあるが、その建物は11件に含まれていない。
見学とアクセス
瑞穂酢(大西家住宅)は稼働中の醸造所で、大西家の住まいでもある。内部の一般公開は行われておらず、所有者のウェブサイトにも見学受付の案内は見当たらない(2026年9月17日確認)。2026年3月の地域情報誌の取材では、蔵見学などの体験を計画していると紹介されていた。見学を望む場合は、会社の問い合わせ窓口で確かめてほしい。
公道から見られるのは北側の通りに面した建物である。北蔵の妻壁、内蔵の漆喰壁、門屋の出格子、旧味噌蔵の焼杉の腰板が、通りを歩くうちに順に目に入る。敷地の奥にある酢蔵や米蔵は、手前の建物の陰になって見通しにくい。撮影についての公式な案内は見当たらないが、門の内側や作業の様子にカメラを向けるのは控えたい。
最寄り駅は、会社案内によると近鉄橿原線の新ノ口駅である。瑞穂酢(大西家住宅)は駅から直線でおよそ1.5キロ東にあたり、歩くなら20分前後を見込みたい。見学者向けの駐車場の案内はない。所在地は文化庁のデータベースでは橿原市中町267-1他、会社の表記では中町267番地である。
参考文献
- 国指定文化財等データベース 瑞穂酢(大西家住宅)主屋(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00014509
- 国指定文化財等データベース 瑞穂酢(大西家住宅)内蔵及び北築地塀(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00014510
- 国指定文化財等データベース 瑞穂酢(大西家住宅)北蔵(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00014512
- 国指定文化財等データベース 瑞穂酢(大西家住宅)米蔵(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00014516
- 文化遺産オンライン 瑞穂酢(大西家住宅)主屋
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/592843
- 奈良県内 登録有形文化財の状況(奈良県)
- https://www.pref.nara.lg.jp/documents/22241/bunkazaiitiran.pdf
- 会社案内(ミヅホ株式会社)
- https://www.mizuhosu.co.jp/company.html
- 酢ができるまで(ミヅホ株式会社)
- https://www.mizuhosu.co.jp/su.html
- 伝統の酢醸造を次代へ繋ぐ老舗酢蔵の17代目(Narakko!)
- https://www.narakko.jp/naramon-mizuhosu/
最終更新日: 2026.09.16
基本情報
| 名称 | 瑞穂酢(大西家住宅) |
|---|---|
| 所在地 | 奈良県橿原市中町267-1他 |
| 指定 | 登録有形文化財 11件 |
| 座標 | 34.52606, 135.81050 |