冨士屋旅館とは

冨士屋旅館は、大分県別府市鉄輪の鉄輪温泉にある明治31年(1898年)建築の木造旅館建築で、主屋・前門・石段・石垣の4件が平成13年(2001年)11月20日に国の登録有形文化財に登録された。読みは「ふじやりょかん」。

4件の登録番号は44-0069から44-0072まで連番になっており、同じ日にそろって登録有形文化財となった。登録基準はいずれも「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。文化庁の解説は冨士屋旅館を、別府八湯の中核をなす鉄輪温泉の老舗旅館と位置づけている。

旅館としての営業は平成8年(1996年)に終わった。建物は取り壊されずにギャラリーとホールに転用され、現在は「一也百(はなやもも)ホール&ギャラリー」の名で、カフェと店舗を併設して公開されている。

湯治場の老舗から、ホールとギャラリーへ

冨士屋旅館の建築年について、文化庁のデータベースは4件とも明治31年(1898年)としている。一方、建物を運営する一也百は明治32年(1899年)の建築と案内しており、1年の差がある。このサイトでは文化庁の記録に従う。

運営者によれば、建物は別府・亀川の大工の棟梁、豊嶋彌九郎(とよしま やくろう)をはじめ、木挽・石工・左官など多くの職人の手で造られたことが記録に残っている。大正・昭和を通じて湯治客を迎え、平成8年(1996年)に暖簾を下ろした。

2013年の雑誌記事によると、いま鉄輪むし湯が建つ場所には、かつて冨士屋の本館があった。本館が取り壊されたあと、残った建物も老朽化を理由に解体される予定だったが、現在のギャラリー代表が来た解体業者をその場で帰し、ギャラリーとして残す道を選んだという。登録された4件は、この解体を免れた側の建物と外構である。

令和7年(2025年)7月には、運営会社が冨士屋旅館の庭園内に新しい宿泊棟「冨士屋ホテル」を開業した。登録されている主屋はその施設の一部として、ホールとギャラリー、カフェラウンジに使われている。

敷地の配置と、かつての入口

冨士屋旅館の主屋は東を正面とし、南北に長い寄棟造の本館部の南に、東西棟が取り付く。建てた当初の玄関は東面中央の式台玄関で、大正期に南側へ入母屋造の玄関が増築された。

文化庁の解説は、かつての客の動線を具体的に書き留めている。いでゆ坂から敷地東側の石畳の道に入り、石段を昇り、前門をくぐって式台玄関に向かう。前門は旧式台玄関と向き合う位置に立ち、石段の幅は門の間口に合わせてある。敷地の東辺を限る石垣は、その石段をはさんでジグザグに折れながら延びる。

つまり登録された4件のうち3件は、この東側の入口をかたちづくる部材である。石垣・石段・前門・主屋の玄関跡を東から順に見ていくと、明治の旅館が客をどう迎えたかが一続きの景色として読み取れる。

冨士屋旅館の見学案内(公開状況・アクセス)

冨士屋旅館の主屋の内部は、カフェラウンジの営業時間に入ることができる。運営者の案内では営業は午前11時から午後5時までで、月曜と火曜が定休日(月曜が祝日の場合は火曜・水曜が休み)。ホールでは演奏会や展示などの催しが不定期に開かれる。営業日や時間は変わることがあるので、出かける前に公式サイトで確かめてほしい(2026年10月1日確認)。

前門・石段・石垣は敷地の東側にあり、外から眺めることができる。前門と石段がいまも出入口として使われているかは確認できていないので、敷地への出入りは現地の案内に従ってほしい。

冨士屋旅館へはJR別府駅から路線バスで鉄輪方面へ向かい、「鉄輪」バス停で降りて歩く。目印は隣の鉄輪むし湯である。車の場合、運営者は大分交通の鉄輪終点前にある専用駐車場を案内しており、そこから歩いて1〜2分。鉄輪の路地は狭いので、カーナビの経路には注意が要る。問い合わせ先は冨士屋(0977-66-3251)。

参考文献

冨士屋旅館主屋(文化庁 国指定文化財等データベース)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00002567
冨士屋旅館前門(文化庁 国指定文化財等データベース)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00002568
冨士屋旅館石段(文化庁 国指定文化財等データベース)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00002569
冨士屋旅館石垣(文化庁 国指定文化財等データベース)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00002570
冨士屋旅館主屋(文化遺産オンライン)
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/115647
冨士屋ホテルについて(冨士屋ホテル 公式サイト)
https://kannawa-fujiya.com/about
カフェで過ごす(冨士屋ホテル 公式サイト)
https://kannawa-fujiya.com/cafe
アクセス(冨士屋ホテル 公式サイト)
https://kannawa-fujiya.com/access
明治時代の旅館建築「冨士屋ギャラリー 一也百」(colocal)
https://colocal.jp/odekake/20034.html
登録有形文化財「旧冨士屋旅館」庭園内に「冨士屋ホテル」2025年7月オープン(PR TIMES)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000163204.html

最終更新日: 2026.10.01

基本情報

名称冨士屋旅館
所在地大分県別府市大字鉄輪字ウカリユ735-1
指定登録有形文化財 4件
座標33.31685, 131.47807