平作原発電所とは
平作原発電所(へいさくばらはつでんしょ)は、岡山県苫田郡鏡野町上齋原にある中国電力のダム水路式水力発電所で、昭和3年(1928年)2月に運転を始め、恩原貯水池堰堤(恩原ダム)や発電所本館など10件の施設が平成18年(2006年)11月29日に国の登録有形文化財に登録された。
場所は鳥取県との県境に近い吉井川の最上流部である。岡山県内で伸びる電力需要に応えるため、大正15年(1926年)から昭和16年(1941年)まで吉井川水系で電源開発を進めた中国合同電気が計画し、建設した。運転開始時の出力は1,800キロワットで、昭和5年(1930年)に1,100キロワットを増し、最大出力2,900キロワットの現在の規模になった。
持ち主は戦時の電力統制のなかで移り変わった。昭和16年(1941年)に山陽配電、翌昭和17年(1942年)に日本発送電へ移管され、昭和26年(1951年)の中国電力発足とともに同社の設備となった。中国電力が現在も持つダム水路式発電所では、大正13年(1924年)に運転を始めた錦川第一発電所(山口県周南市)に次ぐ古さである。
発電所に社員は常駐していない。中国電力によれば、津山制御所からの遠隔操作で運転され、巡視は月2回行われている。
水の道に沿って並ぶ10件
ダム水路式とは、ダムでつくった落差と水路で得た落差を合わせて使う発電方式をいう。平作原発電所の登録文化財10件はこの水の道に沿って山中に点在し、取水、貯水、沈砂、導水、発電という段階ごとの施設がそろって登録されている。
水の道の起点は恩原貯水池の南の谷にある。遠藤川と遠藤原川にそれぞれ取水堰堤と沈砂池が築かれ、文化庁の解説は遠藤川取水堰堤を吉井川水系の発電所施設の最上流に位置づける。遠藤原川で取った水は、遠藤川の水路に合流する。中国電力の発電所概要は吉井川・遠藤川・遠藤原川の3河川を水源に挙げており、両川の水は水路で恩原貯水池へ導かれる仕組みとされる。
恩原貯水池堰堤は遠藤川取水堰堤の約1.7キロメートル北に立ち、右岸には余水を恩原川へ落とす余水路が付く。堰堤から約270メートル下流に幹線水路の沈砂池があり、水はさらに約2.3キロメートル先の水槽まで送られる。水槽から約330メートル下ったところに平作原発電所本館が建ち、両者を結ぶ鉄管路の脇と本館の周囲を花崗岩の擁壁が支えている。
地図の上で10件を順に追うと、山の地形をどう読んで水を運んだかが見えてくる。
登録の理由と技術上の特色
中国電力は、平作原発電所の10施設が日本の水力発電の歴史を知るうえで貴重な建造物であり、国土の歴史的景観に寄与していることなどから登録されたと説明している。文化庁の登録基準で見ると、恩原貯水池堰堤は「再現することが容易でないもの」、ほかの9件は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」にあたる。
技術史の上で際立つのは恩原貯水池堰堤である。遮水壁の背後を扶壁で支える鉄筋コンクリート造のバットレスダムで、中国電力は国内に現存する6基のバットレスダムの一つ、発電用としては最古のものと紹介している。土木学会の資料によれば、内務省土木研究所長だった物部長穂が大正12年(1923年)の関東大震災を機に確立した耐震設計理論を初めて適用したダムでもある。当初は重力式で計画されたが、地盤が比較的軟弱なこと、山奥で資材の運搬が不便なこと、工期が限られていたことから、コンクリートの量を抑えられるバットレス式に改められた。
運搬の苦労は具体的に記録されている。建設資材は姫新線の院庄駅まで鉄道で運ばれ、ダムの8キロメートル手前までは自動車、その先は馬車でしか運べなかったという。
施設どうしに共通する特徴もある。文化庁は水槽の解説で、ほかの構造物と同じく浅野セメントと小野田セメントの良質なセメントを用いたと記す。沈砂池や擁壁には、川や斜面に接する面を花崗岩の谷積で築いたものが多い。急な渓流が運ぶ土砂をどう防ぐかという課題に、排砂門の位置やスラブの張り出しなど、施設ごとに異なる答えを出している点も見比べたい。
平作原発電所を訪ねる前に
平作原発電所の施設はいずれも稼働中の発電設備で、内部は公開されていない。中国電力は外観ならいつでも見学できると案内しているが、見学者向けの受付や案内所はなく、門や柵で閉ざされた管理区域には入れない。見学は公道など立ち入りが認められた場所から外観を眺める形になる。
訪問には車が前提となる。中国電力の案内では、発電所(上齋原字平作原1878)まで中国自動車道の院庄インターチェンジから車で約70分、JR姫新線の院庄駅から約75分である。鏡野町の観光案内は恩原湖まで院庄インターチェンジから約50分、JR津山駅から約1時間としており、目安の所要時間には案内によって幅がある。10件は数キロメートルの範囲に散らばっているので、見たい施設を先に決めてから向かうとよい。
一帯は標高約700メートルの恩原高原にあり、鏡野町によれば冬は1メートルを超える積雪がある。紅葉の見ごろは例年10月下旬から11月上旬とされる。冬に山道を走る予定なら、雪への備えを確かめておきたい。
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース「平作原発電所恩原貯水池堰堤」
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00005989
- 文化庁 国指定文化財等データベース「平作原発電所遠藤川取水堰堤」
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00006045
- 文化庁 国指定文化財等データベース「平作原発電所水槽」
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00006050
- 文化庁 国指定文化財等データベース「平作原発電所本館」
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00006051
- 中国電力「平作原発電所の歴史|歴史的電力遺産」
- https://www.energia.co.jp/isan/heisakubara_history.html
- 中国電力「平作原発電所|歴史的電力遺産」
- https://www.energia.co.jp/isan/heisakubara.html
- 土木学会 土木図書館「HANDS 069 特異な形式の貯水池と調整池(恩原ダム・奥津調整池)」
- https://dobocolle.jsce.or.jp/archive2014/_common/uploads/archive/hands069_onbara_070_houkoku.pdf
- 鏡野町公式観光サイト かがみの旅とくらし「恩原湖」
- https://www.kagamino.holiday/spot/entry-322.html
最終更新日: 2026.09.25
基本情報
| 名称 | 平作原発電所 |
|---|---|
| 所在地 | 岡山県苫田郡鏡野町上齋原字平作原1878 |
| 所有者 | 中国電力株式会社 |
| 指定 | 登録有形文化財 10件 |
| 座標 | 35.29077, 133.98139 |