谷積とは

谷積(たにづみ)は、石を斜めに傾けて据え、下の段の石と石のあいだにできる谷へ上の石を落とし込むように積んでいく石積の積み方で、「落し積」とも呼ばれる。正面から見ると石の面がひし形に並び、横目地は一直線に通らない。

石の高さをそろえて横目地を水平に通す布積とは、この目地の走り方で区別できる。国土交通省河川局の資料は、谷積では斜めに置かれた石どうしが互いに押し合う「せり持ち作用」が働き、布積よりも安定性があるとされると説明している。大きさの揃わない石を目地にこだわらず組む乱積とも違い、谷積は形の揃った石を一定の角度で規則正しく傾けていく。斜めの石を左右から向き合わせて矢羽根の模様をつくる矢筈積とは、石の向きがそろうか交互に変わるかで見分けられる。

近代以降は、四角錐形に加工した間知石(けんちいし)を谷積にした「間知石谷積」が、擁壁や護岸の標準的な形として広まった。土木研究所は、間知ブロックを谷積とする方法を、経験に基づいて受け継がれてきた従来の積み方として扱っている。

文化財の記録での書かれ方

文化庁の登録有形文化財の記録では、谷積は石造の堰堤や擁壁、屋敷の石垣の説明に繰り返し現れる。いちばん多いのは石材と組み合わせた書き方で、「間知石谷積の石垣」「花崗岩の谷積」のように、何の石をどう積んだかを一語で示す。

コンクリート造の砂防堰堤にも谷積の語が出てくる。「表面谷積」とあれば、コンクリートの堤体の表面を谷積の石で仕上げたことを指し、「谷積風の練積」とあれば、石を斜めに見せる外観を、目地をモルタルで固める練積で築いたことを指す。外から見える積み方と、堤体の構造とは別に記録されている。

古い石造の堰堤では、谷積は改築や嵩上げの部分を示す語として現れることが多い。「上部を布積と谷積の石垣で嵩上げする」「上部は谷積により段状に築く」のように、下部の積み方と書き分けて記されている。

実物を見るときの手がかり

石積の前に立ったら、まず目地の線を目で追う。水平に長く通る線があれば布積、斜めの線が交差してひし形の網目をつくっていれば谷積である。一つの石が、角を下に向けて下段の2つの石のあいだに収まっている並びを探すと確かめやすい。

同じ壁のなかで積み方が切り替わっている場合は、その境目に注目したい。下部が乱積や布積で上部が谷積なら、上部が後の時代に積み足されたことを示している場合がある。記録に「谷積」の語があれば、それがどの部分を指しているかを壁の上で探すと、その構造物の改修の経過が読み取りやすくなる。

斜めに据えた石は、壁の端で水平の天端や隅に収めるために、三角形に割った石や形を変えた石が必要になる。谷積の壁の端や天端に不規則な形の石が並ぶのはこのためで、そこも見分けの手がかりになる。

参考文献

国土交通省河川局河川環境課 河川の景観形成に資する石積み構造物の整備に関する資料(平成18年8月)
https://www.mlit.go.jp/river/shishin_guideline/kankyo/stone-structure/s-1.pdf
土木研究所 大型化した積みブロックの使用によるブロック積擁壁の生産性向上
https://www.pwri.go.jp/jpn/about/pr/mail-mag/webmag/wm067/kenkyu.html
国指定文化財等データベース(文化庁)堂々川四番砂留
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00005663
国指定文化財等データベース(文化庁)東鴉川第四堰堤
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00007176

最終更新: 2026.09.24