千草舎、屋敷でいちばん小さな登録建造物

城東むかし町屋(旧梶村家住宅)茶室は、岡山県津山市東新町にある昭和初期、1926年以降の木造平屋建の茶室で、1997年(平成9年)5月7日に登録有形文化財となった。「千草舎」という固有の号を持ち、ここに残る他の7棟にはこれがない。

建築面積は11平方メートル。この数字はいったん立ち止まる値打ちがある。敷地の前面に建つ主屋の211平方メートルと並べれば、差は算術の問題ではなくなり、小さな部屋が何のためにあったかという話になる。

建つのは屋敷地の西端で、中庭を望む位置に据えられている。屋根は入母屋造。この規模の建物としては格の高い形で、この部屋がきちんとした扱いを受けるべきものだったことを示している。

意外なのは屋根の材料である。瓦でも檜皮でも茅でもなく、スレート。茶道に造詣のあった当主が昭和の初めに庭の一画へこの茶室を造らせ、古典的な屋根形に工業製品の被覆を選んだ。この屋敷は近代の経済で身代を築いており、茶室はそれを取り繕っていない。

これほど小さな部屋が登録された理由

城東むかし町屋の茶室の登録番号は33-0012。隣り合う6棟と同じく「造形の規範となっているもの」という基準で登録有形文化財となった。登録は1997年5月7日付、告示は同年5月29日である。

判断に大きさは関わっていない。国指定文化財等データベースは、小規模な造りながら吟味された材料を用いた上質の茶室であり、技法的にも見るべきものがあると評している。茶の建築はこう測られる。柱一本の選び方、開口の割り付け、天井の張り方で位が決まる。

もう一つ、この登録が意味を持つ事情がある。20世紀初頭の商家の茶室はほとんど失われた。私的で、小さく、家が代替わりしたり建て替えたりすれば真っ先に消える種類の建物だからである。これが残ったのは屋敷全体が壊されずに残り、やがて津山市の所有となったからだ。周辺の旧街道沿いの城東地区は2013年(平成25年)に重要伝統的建造物群保存地区へ選定されている。

どこを見るか

まず庭から。城東むかし町屋(旧梶村家住宅)茶室はそちらを向いて据えられている。池を中心とする庭は同じ昭和初期に作られ、南西の隅には巨石を組んだ滝石組みが置かれ、当時敷設された上水道から水が導かれた。茶室と庭は一組として構想されている。

次に屋根の線。入母屋にスレートを葺くと、瓦より縁が薄くなり影が鋭くなる。結果として軒は、形から予想するよりも軽く見える。

内部では間取りより材を見たい。木目、柱の仕上げ、あえて塗らずに残した部分。見どころはそこにある。

最後に距離のこと。茶室は敷地が許すかぎり通りから遠くに置かれ、座敷と蔵に遮られている。そこまで歩くこと自体が、この建物の働きの一部になっている。

見学の方法

現在は立ち入れない。所有者の津山市は2025年の6月1日に梶村家の屋敷を閉め、整備工事に入った。2026年11月頃に一部を宿泊施設として再開する意向が示されている。その後に城東むかし町屋(旧梶村家住宅)茶室を公開するかどうかは公表されていない。問い合わせは0868-22-5791へ。

閉館までは入館無料で、午前9時から午後5時まで開き、入館は午後4時30分まで受け付けた。火曜日が休みで、火曜が祝日にあたるときはその翌日に振り替え、12月29日から1月3日は年末年始の休みとした。

移動そのものは難しくない。JR津山駅から東へ徒歩約25分、車なら中国自動車道の津山インターチェンジから約10分で、城東地区の観光駐車場に停める。茶室は敷地の最も奥にあるため、道路からはまったく見えない。

再開後の撮影の扱いは公表されていない。狭い室内は実務上の理由で制限されることが多いので、カメラを構える前に尋ねたい。

Q&A

Q城東むかし町屋(旧梶村家住宅)茶室は見学できますか。
A今のところできません。屋敷は2025年から整備工事のため閉館し、2026年の再開が公表されています。茶室は敷地の奥にあり、通りからは見えません。
Q城東むかし町屋(旧梶村家住宅)茶室には名前がありますか。
A「千草舎」という号があります。茶道に造詣のあった当主が、昭和初期、1926年以降に庭の一画へ造らせたものです。
Q城東むかし町屋(旧梶村家住宅)茶室の大きさはどのくらいですか。
A建築面積は11平方メートルで、屋敷の登録建造物8棟のうち最小です。木造平屋建、屋根はスレート葺です。
Q城東むかし町屋(旧梶村家住宅)茶室はなぜ登録されたのですか。
A1997年5月7日に「造形の規範となっているもの」として登録されました。登録番号は33-0012で、吟味された材料と技法の質が評価されています。
QJR津山駅から城東むかし町屋(旧梶村家住宅)茶室へはどう行きますか。
A東へ徒歩約25分です。車では中国自動車道の津山インターチェンジから約10分で、城東地区の観光駐車場を利用します。

基本情報

名称城東むかし町屋(旧梶村家住宅)茶室
所在地岡山県津山市東新町40
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年1997年(平成9年)5月7日登録
員数1棟
寸法木造平屋建、スレート葺、建築面積11平方メートル
所有者津山市
公開状況整備工事のため休館中(2025年から)。2026年に再開予定

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース「城東むかし町屋(旧梶村家住宅)茶室」
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00000166
津山まちじゅう博物館 デジタル体験ガイド「城東むかし町家」
https://tsuyama-machijuu.jp/guide/joto-mukashi/
岡山観光WEB「城東むかし町家(旧梶村家住宅)」
https://www.okayama-kanko.jp/spot/detail_10509.html

最終更新日: 2026.09.09