明治33年竣工の旧制中学校本館

岡山県立津山高等学校(旧岡山県津山中学校)本館は、岡山県津山市椿高下62番地に建つ明治33年(1900年)竣工の木造校舎で、平成7年(1995年)12月26日に国の重要文化財に指定された。

現役の校舎である。平日には生徒がこの建物を通って教室へ向かう。日本の指定建造物の大半とは条件が異なり、その一点が見学のあり方を決めている。

学校の沿革をたどると、明治28年(1895年)9月に岡山県津山尋常中学校として開校し、同32年4月の中学校令改正にともなって岡山県津山中学校と改称した。開校当初は旧藩校の建物を仮校舎としていたが、明治31年4月から旧城下町の北辺にあたる現在地で新校舎の建設に着手し、明治33年8月31日に本館と教室棟などの主要建物が竣工している。昭和23年(1948年)に新制高等学校となった。

指定の理由―残っていること自体の価値

指定基準は「(三)歴史的価値の高いもの」。その根拠は希少性にある。

明治期の日本は中学校を数多く建てた。しかしその建物の大半はすでに失われている。火災、戦災、戦後の校舎増改築、そして単純な老朽化がそれらを消していった。明治時代の旧制中学校建築の遺例は少なく、当初の敷地で当初の用途のまま使われ続けている例はさらに限られる。津山の本館は一部に増改築があるものの、全般に保存状態が良く、現在も学校施設として機能している。

構造は木造総二階建。煉瓦積の布基礎の上に建ち、屋根は寄棟造の桟瓦葺である。建築面積は660.73平方メートル。正面には玄関ポーチが張り出し、中央部には塔屋が立つ。員数1棟、指定番号02324。

平面は、妻入の中央屋と左右の翼屋からなる。中央屋の一階に校長室や事務室など管理運営の諸室を置き、二階を講堂とした。翼屋は一階も二階も教室である。創建時の校舎のうち、本館以外の建物はすべて建て替えられた。

正門前から見る

左右対称の構成で、視線はまず中央へ向かう。台形の塔屋に時計が収まり、クリーム色の壁面と丸みを帯びた窓の頭部が洋風の表情をつくる。イタリア・ルネサンス様式を取り入れた外観と説明されることが多い。

その説明が実際に何を意味しているかを見てほしい。語彙は西洋のもの、構法は日本の木造大工技術、屋根は地域の農家と同じ桟瓦である。明治期の地方の公共建築はしばしばこうした形で成立した。輸入された形式を在来の建築技術が翻訳する過程が、この建物には読み取れる形で残っている。

窓の頭部の曲線は、注目に値する部分だ。組積造の建物であれば、これは荷重を受ける本物のアーチになる。ここでは木造の壁に開けた開口をアーチの形に整えたもので、見た目の役割だけを担っている。

正門に立つと、アプローチの正面に建物が収まる。敷地は旧城下町の北、やや高くなった土地にあるため、駅から歩いてくると屋根と塔屋が先に見えてくる。

見学と周辺

内部は非公開である。文化財としての方針というより、授業が行われている建物であることの結果であり、見学は外観に限られると考えたほうがよい。

外観は正門前から見ることができる。ここでは通常の文化財以上に配慮が求められる。生徒のいる学校だからである。授業時間帯に敷地内を歩き回らず正門前から眺めること、敷地に立ち入る用があれば事務室に声をかけることは、いずれも当然の作法にあたる。向かって右側のコンクリート棟一階に事務室があり、一言断って短時間の駐車を認められたという訪問者の報告もある。

敷地外からの撮影に問題はない。生徒を撮影することは避けたい。

JR津山駅から徒歩約20分。車の場合は中国自動車道の津山インターチェンジまたは院庄インターチェンジから約15分だが、学校に見学者用の駐車場はない。市街地の有料駐車場を使うのが現実的である。

津山は滞在して歩く価値のある町だ。駅と学校のあいだには津山城跡(鶴山公園)があり、日本の城郭でも屈指の規模の石垣が残る。津山洋学資料館は、化学用語の多くを考案した宇田川榕菴をはじめとする蘭学者を輩出した町の歴史を扱う。市街東部の城東地区には商家の町並みが残り、重要伝統的建造物群保存地区に選定されている。

Q&A

Q岡山県立津山高等学校本館の内部は見学できますか。
Aできません。現在も授業に使われている校舎のため内部は非公開で、見学施設ではないので拝観料もありません。外観は正門前から見ることができます。敷地内に立ち入る必要がある場合は、事務室に事前に相談してください。
Q岡山県立津山高等学校本館はいつ重要文化財に指定されたのですか。
A平成7年(1995年)12月26日、指定番号02324で指定されました。適用された基準は「(三)歴史的価値の高いもの」です。建物の竣工は明治33年8月31日なので、竣工から95年を経ての指定にあたります。
Q岡山県立津山高等学校本館はどのような様式の建物ですか。
A外観は西洋古典の要素を取り入れ、イタリア・ルネサンス様式を採り入れたものと説明されます。左右対称の構成、丸みを帯びた窓の頭部、中央部の台形の塔屋が特徴です。構造そのものは煉瓦の布基礎に載る日本の木造で、屋根は地域の桟瓦を葺いています。
Q岡山県立津山高等学校本館へのアクセスを教えてください。
AJR津山駅から北へ徒歩約20分、途中に津山城跡があります。車では中国自動車道津山インターチェンジまたは院庄インターチェンジから約15分ですが、学校に見学者用駐車場はありません。市街地の有料駐車場の利用をおすすめします。
Q岡山県立津山高等学校本館の内部はもともとどう使われていましたか。
A妻入の中央屋の一階に校長室や事務室などの管理運営関係の諸室を置き、二階を講堂としていました。左右の翼屋は一階・二階とも教室です。創建時の校舎のうち、本館を除く建物はすべて建て替えられています。

基本情報

名称岡山県立津山高等学校(旧岡山県津山中学校)本館(おかやまけんりつつやまこうとうがっこうほんかん)
所在地岡山県津山市椿高下62番地
指定区分重要文化財(建造物) 指定番号 02324
指定年平成7年(1995年)12月26日
員数1棟
寸法木造二階建、桟瓦葺、正面玄関ポーチ、中央部塔屋付、建築面積660.73平方メートル
所有者岡山県
公開状況外観のみ正門前から見学可。内部は授業で使用中のため非公開

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース 岡山県立津山高等学校(旧岡山県津山中学校)本館
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/3026
岡山県立津山高等学校 施設
https://www.tuyama.okayama-c.ed.jp/life/facility/index.html
文化遺産オンライン 岡山県立津山高等学校(旧岡山県津山中学校)本館
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/190863
岡山観光WEB 津山高校旧本館
https://www.okayama-kanko.jp/spot/detail_10545.html

最終更新日: 2026.08.06