ヤマモトロックマシン(旧山本鉄工所)仕上げ工場―欠円アーチの窓で光を取り込む木造工場

ヤマモトロックマシン(旧山本鉄工所)仕上げ工場は、広島県庄原市東城町にある削岩機メーカーの昭和12年(1937年)ころの木造平屋の工場で、平成28年(2016年)2月25日に国の登録有形文化財に登録された。第一工場の東方にこれと並行して建ち、桁行は38メートル、建築面積は417平方メートル。屋根は鉄板葺で、棟の上には越屋根が載る。

機械工場で「仕上げ」といえば、旋盤などで削り出した部品を手で整え、組み付けていく工程を指すことが多い。名前のとおりなら、ここは削岩機が製品として形になる最後の段階を受け持った建屋ということになる。細かな手作業には明るさが欠かせない。この工場の設計は、その一点に意匠の力を注いでいる。

仕上げ工場の登録の理由と価値

登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」。文化庁はこの建物を、洋風意匠で採光を工夫した戦前期の地方工場建築の一例と評している。評価の要点は二つある。ひとつは窓の形とその並べ方に洋風のデザインを取り入れたこと、もうひとつはそれを飾りに終わらせず、作業場に光を入れるための仕掛けとして使ったことである。

同じ敷地の工場どうしを比べると、この建物の位置づけがはっきりする。昭和9年(1934年)の第一工場は梁間を三つに分けて中央を持ち上げ、段差の高窓と越屋根で光を採った。昭和12年(1937年)の第二工場はキングポストトラスで梁間を一気に架け渡した。仕上げ工場は真束を2本立てるクイーンポストトラスを用い、さらに妻面の窓に欠円アーチを与えている。数年のうちに建て継がれた工場が、それぞれ違う方法で同じ課題、つまり広い床の奥まで光を届けることに答えている。仕上げ工場は、そのなかで洋風の意匠をもっとも明確に打ち出した一棟である。

昭和初期の工場建築は、鉄骨や鉄筋コンクリートへの置き換えや建て替えで失われやすい。木造の小屋組と洋風の窓割りをもつ地方工場が、同じ会社のもとでいまも使われ続けていること自体に、記録としての重みがある。

仕上げ工場の見どころ ― クイーンポストトラスと窓の構成

小屋組のクイーンポストトラスは、水平の陸梁の上に2本の束を左右対称に立て、その頭を水平材でつないで斜材で屋根を支える洋式の架構である。棟の真下に束が来ないため、中央に空いた空間ができる。その上に越屋根を載せれば、屋根の頂部から入る光と、こもった熱の逃げ道が確保される。

立面では南の妻面に目を向けたい。窓の上部が浅い弧を描く欠円アーチになっており、切妻の三角形の壁に柔らかな曲線を添えている。東西の側面には上下に開閉する窓が並び、長い壁面に規則正しいリズムを刻む。工場でありながら、学校や事務所の建物を思わせる窓割りである。

越屋根、アーチ窓、上下窓という三種類の開口が、上から、妻から、横から、それぞれ別の方向の光を作業台に落とす構成になっている。内部に入る機会があれば、時間を変えて光の入り方の違いを確かめたい。

仕上げ工場を見学するには

ヤマモトロックマシン仕上げ工場は、同社の東城工場として操業が続く敷地の中にあり、一般の見学は受け付けていない。工場群の内側に位置するため、公道からは屋根の一部や越屋根の輪郭が見える程度で、南妻面の窓まで見通せるかは立つ位置によって変わる。

内部に入れるのは、会社の協力のもとで開かれる見学会などの機会に限られる。工場内は稼働中の機械がある作業場なので、見学会でも案内に従い、撮影の可否はその場で確認すること。敷地には許可なく立ち入らないでほしい。

Q&A

Qヤマモトロックマシン(旧山本鉄工所)仕上げ工場はいつ建てられ、いつ登録されましたか?
A昭和12年(1937年)ころの建築とされます。平成28年(2016年)2月25日の第83回登録で登録有形文化財となり、登録番号は34-0158です。
Qヤマモトロックマシン仕上げ工場の中は見学できますか?
A通常はできません。操業中の工場の敷地内にあり、内部を見られるのは会社の協力で開かれる見学会などの機会に限られます。
Qヤマモトロックマシン仕上げ工場のクイーンポストトラスとはどんな小屋組ですか?
A陸梁の上に2本の束を左右対称に立て、頭を水平材でつないで屋根を支える洋式のトラスです。中央が空くため、その上に越屋根を載せて光と熱の出入り口にできます。
Qヤマモトロックマシン仕上げ工場の窓にはどんな特徴がありますか?
A南の妻面の窓は上部を浅い弧の欠円アーチとし、東西の側面には上下に開閉する窓を並べています。棟の越屋根と合わせて、三方向から作業場に光を採り入れる構成です。
Qヤマモトロックマシン仕上げ工場は第一工場とどういう位置関係ですか?
A桁行78メートルの第一工場の東方に、並行して建っています。仕上げ工場の桁行は38メートルで、第一工場のおよそ半分の長さです。

基本情報

名称ヤマモトロックマシン(旧山本鉄工所)仕上げ工場
所在地広島県庄原市東城町東城字下町6-3他
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年平成28年(2016年)2月25日登録
員数1棟
寸法木造平屋建、鉄板葺、建築面積417平方メートル、桁行38メートル
所有者ヤマモトロックマシン株式会社
公開状況非公開(操業中の工場)。内部は見学会などの機会のみ

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース「ヤマモトロックマシン(旧山本鉄工所)仕上げ工場」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00010994
文化庁 国指定文化財等データベース「ヤマモトロックマシン(旧山本鉄工所)第一工場」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00010992
文化庁 国指定文化財等データベース「ヤマモトロックマシン(旧山本鉄工所)第二工場」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00010993
庄原市「登録文化財」
https://www.city.shobara.hiroshima.jp/main/education/shogaigakushu/cat02/02/post_192.html

最終更新日: 2026.09.24