越屋根とは

越屋根は、屋根の棟の上に一段高く載せた小さな屋根をいう。下の屋根の棟を切り開いてその上に小屋を立ち上げ、上の屋根と下の屋根とのあいだの側面を窓や格子、板戸などの開口とする。室内の煙や湿気、熱気を上に逃がし、あわせて光を取り入れる仕組みである。

用途に応じて大きさが違う。囲炉裏やかまどの煙を抜くだけのものは棟の一部に小さく載り、飯田家住宅の門番所の記録は、桟瓦葺の棟の中央に「煙出しの越屋根」を載せると書く。これに対して、室内の温度と湿度を保つ必要がある養蚕の建物では、棟の全長にわたって長い越屋根を架ける。佐藤家住宅(三ツ引)の蚕室は、棟全体に越屋根を設け、二階の各室の南北両面に窓を開けて蚕室としている。

こうした外観は地域の景観をつくる要素にもなっている。利久堂酒井家住宅主屋の記録は、この建物を越屋根を頂く養蚕農家の外観と説明している。酒蔵や味噌蔵、製糸や製茶の作業場など、湯気や熱を多く出す建物にも越屋根は多い。

記録と実物で見分ける手がかり

記録では、屋根形式と葺材のあとに「棟に越屋根を二つ設ける」「越屋根付」のように付属させて書く。越屋根の数や長さ、位置が書かれていれば、建物の使われ方を読む手がかりになる。棟の一部に短く載るものは煙出しや換気のため、棟の全長に通るものは養蚕などの作業のための可能性が高い。

似た語に「煙出し」がある。煙を抜くための開口や小屋根の総称で、越屋根の形をとるものもあれば、屋根面に小さな穴や小屋根を設けるだけのものもある。記録が「煙出し」とだけ書く場合は、越屋根の形かどうかを写真で確かめたい。

現地では、棟の上に屋根が二段になっていることで容易に見分けられる。後の改修で開口をふさいだり、越屋根そのものを撤去したりした例も多く、棟の上に不自然な継ぎ目があれば、かつて越屋根があった痕跡のことがある。

参考文献

佐藤家住宅(三ツ引)蚕室|国指定文化財等データベース(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00013789
佐藤家住宅(三ツ引)主屋及び奥上段|国指定文化財等データベース(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00013788
飯田家住宅門番所|国指定文化財等データベース(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00005179
利久堂酒井家住宅主屋|国指定文化財等データベース(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00002541

最終更新: 2026.09.26