沖縄ホテルレンガ棟:戦後沖縄のホテル発祥を伝える唯一の遺構

那覇市大道の沖縄ホテル敷地内に静かに佇むレンガ棟は、戦後沖縄の建築史と観光史を今に伝える貴重な建造物です。1949年(昭和24年)頃に建設されたこの2階建ての建物は、戦後の資材不足のなか島内各地から集められたレンガを用いて造られました。沖縄の現代建築のパイオニアであり、花ブロックの考案者としても知られる建築家・仲座久雄が設計を手がけ、2024年(令和6年)3月に国の登録有形文化財に登録されました。

歴史的背景

レンガ棟の歴史は、沖縄ホテルの歩みと深く結びついています。沖縄ホテルは1941年(昭和16年)、のちに「沖縄観光の父」と称される宮里定三によって、那覇市波之上に沖縄県初の観光ホテルとして創業されました。三笠宮殿下や李王殿下、タイ国のワン・ワイ・タヤコン殿下など、国賓や要人が宿泊する沖縄唯一の貴賓ホテルとして知られていましたが、1945年5月、米軍の艦砲射撃により全壊しました。

終戦後、琉球映画貿易株式会社が県外からタレントを招くようになりましたが、宿泊施設がないことが問題となりました。そこで宮里定三は那覇市大道の現在地に、2階建て7室の木造レンガ造りの建物でホテルを再開しました。これがレンガ棟の始まりです。戦後の沖縄では建設資材が極度に不足しており、レンガは島内各地から集められました。沖縄に豊富にあった赤土を活かして焼かれたレンガは、一つひとつ色や形が微妙に異なるという特徴を持っています。

小さなホテルながら常に満室の状態が続き、日本航空の指定宿として歴代所長が長期滞在したほか、三井物産などの商社マンや時事通信の記者など、ビジネス目的の滞在者も多く訪れました。画家の山下清、版画家の棟方志功、陶芸家の濱田庄司など、多くの芸術家にも愛され、濱田は半年にわたり滞在しながら壺屋焼の指導に通ったと伝えられています。

文化財指定の理由

レンガ棟は「再現することが容易ではないもの」という基準により、2024年3月6日に登録有形文化財(建造物)に登録されました。その評価にはいくつかの重要な要素があります。

第一に、建設に使用されたレンガの希少性です。戦後の極度の資材不足のなか、島内各地から集められたレンガは一つひとつ色や大きさが異なり、同様のレンガを使った建物は沖縄県内で他に現存していません。第二に、建築家・仲座久雄がレンガ造りの手法を用いた唯一の作品として、彼の建築キャリアを知る上でも貴重な資料となっています。第三に、戦後沖縄におけるホテル発祥の遺例として、沖縄の観光・ホスピタリティ産業の原点を示す歴史的価値が高く評価されました。

建築的特徴と見どころ

レンガ棟は、戦後沖縄の創意工夫を体現する混構造の建物です。1階は鉄筋コンクリートのラーメン構造で、外壁にはレンガ積みを化粧として現しています。2階はレンガ造りの壁体構造となっており、屋根は木造トラス組による切妻造桟瓦葺です。建築面積は約103平方メートルで、各階に2室ずつの部屋が配されています。

外壁には大きめの矩形の窓が開けられ、1階と2階には沖縄では珍しい暖炉が設けられていました。建物の裏側には煙突が今も残っています。一つひとつ異なるレンガの色合いが織りなすモザイクのような外観は、この建物の成り立ちの物語を静かに語りかけています。

訪問情報

沖縄ホテルは現在も那覇市の中心部で営業を続けており、レンガ棟は敷地内で見学することができます。ホテルでは登録有形文化財の登録を記念して、平日限定で「有形文化財観覧ツアー」を実施しています。午前10時開始、所要時間約1時間、参加費500円(ワンドリンク付き)で、レンガ棟をはじめ旅館棟・瓦石垣・大道門の4施設を解説付きで見学できます。参加申し込みは前日の午後9時までにフロントへお問い合わせください。

アクセスは、那覇空港から車で約20分、ゆいレール安里駅から徒歩約7分です。国際通りからも徒歩約10分、栄町市場からは徒歩約6分の好立地にあります。駐車場は50台収容で、予約は不要です。

周辺の見どころ

沖縄ホテルのある大道エリアは、観光客で賑わう国際通りとは一味違った、地元の暮らしに触れられるエリアです。徒歩6分の栄町市場は、夕方から夜にかけて活気づく小さな商店や飲食店が軒を連ねる昔ながらの市場で、沖縄の食文化を体感できます。壺屋やちむん通りでは、沖縄の伝統的な焼き物の窯元やギャラリーが石畳の通りに並び、散策を楽しめます。

ゆいレールで足を延ばせば、復元された琉球王国の王城・首里城にもアクセス可能です。おもろまちの沖縄県立博物館・美術館では、沖縄の歴史と文化を幅広く学ぶことができます。また、那覇空港のJAL側展望デッキには、沖縄ホテル創業者・宮里定三の銅像が設置されており、沖縄観光の礎を築いた人物の足跡に思いを馳せることができます。

Q&A

Q宿泊しなくてもレンガ棟を見学できますか?
Aはい、可能です。沖縄ホテルでは平日限定で「有形文化財観覧ツアー」(参加費500円、ワンドリンク付き)を実施しており、宿泊者以外の方も参加できます。前日の午後9時までにフロントにお申し込みください。
Qレンガ棟のレンガはなぜ特別なのですか?
A戦後の資材不足のなか、島内各地から集められたレンガは一つひとつ色や大きさが異なります。同様のレンガを用いた建物は沖縄県内で他に現存しておらず、大変希少な建造物です。
Q設計者の仲座久雄とはどのような人物ですか?
A仲座久雄は戦後沖縄の建築界を牽引した建築家で、沖縄を象徴する装飾的な透かしブロック「花ブロック」の考案者として知られています。首里城や守礼門の復元にも尽力し、沖縄ホテルの登録有形文化財4施設すべての設計を手がけました。
Qレンガ棟は現在も客室として使われていますか?
A現在は客室としての利用はなく、倉庫として使用されています。今後、ギャラリーなど文化的な用途への再活用が検討されているとのことです。
Q沖縄ホテルへのアクセス方法を教えてください。
A那覇空港から車で約20分、ゆいレール安里駅(東口)から徒歩約7分です。国際通りからは徒歩約10分、栄町市場からは徒歩約6分です。駐車場は50台分あり、予約不要です。

基本情報

名称 沖縄ホテルレンガ棟
指定区分 登録有形文化財(建造物)
登録年月日 2024年(令和6年)3月6日
建設年 1949年(昭和24年)頃
構造 鉄筋コンクリート造及び煉瓦造2階建、瓦葺、建築面積103㎡
設計 仲座久雄
所有者 有限会社沖縄ホテル
所在地 沖縄県那覇市字大道上大道原35
アクセス ゆいレール安里駅から徒歩約7分、那覇空港から車で約20分
電話番号 098-884-3191

参考文献

沖縄ホテルレンガ棟 - 文化遺産オンライン
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/554028
ホテルストーリー | 沖縄ホテル公式サイト
https://www.okinawahotel.co.jp/history/
沖縄ホテル、国の登録有形文化財に - 琉球新報デジタル
https://ryukyushimpo.jp/news/entry-2505963.html
登録有形文化財に認定された沖縄最古のホテル「沖縄ホテル」 | マハエの沖縄ダイアリー
https://www.okinawastory.jp/mahaeblog/?p=20224
戦後の観光の道を切り拓いた、沖縄最古のホテルとは?|Pen Online
https://www.pen-online.jp/article/007870.html

最終更新日: 2026.04.09