沖縄ホテル瓦石垣:琉球の美意識を今に伝える92メートルの石垣
那覇市大道の閑静な住宅街に、全長92メートルにわたって延びる美しい石垣があります。沖縄最古のホテル「沖縄ホテル」の敷地を囲む「瓦石垣」は、琉球石灰岩の石積みの上に赤瓦屋根を戴く、沖縄ならではの景観を生み出す構造物です。2024年3月に国の登録有形文化財に登録されたこの石垣は、旅館棟・レンガ棟・大道門とともに、戦後沖縄の建築文化と「おもてなし」の精神を今日に伝えています。
歴史的背景
沖縄ホテルは1941年(昭和16年)、「沖縄観光の父」と呼ばれる宮里定三氏によって、那覇市波之上に沖縄初の観光ホテルとして創業しました。国の要人や時の総理大臣も宿泊する格式あるホテルでしたが、1945年の沖縄戦で艦砲射撃により全壊してしまいます。
戦後、琉球映画貿易株式会社(琉映貿)の社長から再びホテル経営を要請された宮里氏は、土建会社「金城カンパニー」社長の自宅兼事務所(大道)を買い取り、ホテルとして改築しました。1961年(昭和36年)には、現在の旅館棟、大道門(うふどーもん)、そして瓦石垣が建設されました。設計を手がけたのは、沖縄現代建築の先駆者であり「花ブロック」の考案者としても知られる建築家・仲座久雄です。
沖縄ホテルは山下清、棟方志功、濱田庄司ら日本を代表する芸術家たちにも愛され、現在は三代目の宮里家により、創業以来の「おもてなしの心」を大切に営業が続けられています。
文化財指定の理由
沖縄ホテル瓦石垣は、「国土の空間、景観に寄与している」という基準により、2024年3月6日付で国の登録有形文化財(建造物)に登録されました。都市化が進む那覇市内において、これほど長大な伝統的石垣が残されていることは極めて稀であり、大道門と一体となってホテルの表構えを整え、沖縄らしい景観を形成している点が高く評価されています。
また、沖縄県内で戦後に建てられた建造物が登録有形文化財となったのは今回が初めてであり、戦後復興期の沖縄建築文化を伝える貴重な事例としても注目されています。
建築的特徴と見どころ
瓦石垣は高さ約1.8メートル、総延長92メートルの規模を誇ります。コンクリート造の壁体に琉球石灰岩を積み上げ、屋根には琉球赤瓦を葺き、棟頂部や端部は砂漆喰(すなしっくい)で塗込められています。この砂漆喰の丸みを帯びた仕上げは、琉球建築の伝統的な意匠であり、首里城や沖縄の伝統的民家にも見られる技法です。
石垣に沿って歩くと、都会の喧騒を忘れさせる静謐な空間が広がります。石垣の先にある大道門(うふどーもん)は、守礼門のデザインに通じる朱色の門で、くぐり抜けると仲座久雄の設計による旅館棟が両手を広げてお客様を迎え入れるようなコの字型の姿で現れます。旅館棟の外壁には、仲座が考案した花ブロックの初期デザインが残されており、沖縄建築史の貴重な資料ともなっています。
設計者・仲座久雄について
仲座久雄(1904〜1962年)は、中城村字津覇に生まれた沖縄を代表する建築家です。大阪で建築を学んだ後、帰郷して戦前には守礼門の修理工事を担当しました。終戦後は、住む家を失った多くの県民のために規格住宅(キカクヤー)を設計し、7万3500戸の復興住宅建設に貢献しました。
仲座の最も知られた功績は「花ブロック」の考案です。沖縄織物のかすり模様から着想を得た幾何学的な透かし模様のコンクリートブロックは、強い日差しを遮りながら風を通すという沖縄の気候風土に適した機能性と、美しいデザイン性を兼ね備えた画期的な建材でした。現在では約100種類ものデザインが存在し、沖縄建築の象徴的存在となっています。沖縄ホテルでは、花ブロックの初期の原型を見ることができます。
周辺情報・アクセス
沖縄ホテルは那覇市大道に位置し、沖縄都市モノレール「ゆいレール」安里駅から徒歩約9分です。那覇空港からは車で約20分。ホテルから栄町市場までは徒歩約7分で、地元の人々が通うディープな飲食店街として知られています。国際通りへも徒歩約10分、首里城へも徒歩圏内と、観光の拠点として便利な立地です。
ホテル内のレストラン「くがにテラス」では、沖縄県産食材をふんだんに使った朝食ビュッフェを提供しています。庭園には首里城の火災で焼け残った石材が使われており、歴史の継承を大切にするホテルの姿勢が感じられます。那覇市内では珍しい大浴場も備えており、旅の疲れを癒すことができます。
登録有形文化財の認定を記念して、平日限定で「有形文化財観覧ツアー」(500円/人、約1時間)が実施されています。宿泊客でなくても参加可能で、4つの登録文化財の解説付き見学とワンドリンクが含まれます。前日21時までにフロントへお申し込みください。
Q&A
- 沖縄ホテル瓦石垣とはどのようなものですか?
- 沖縄ホテルの敷地外周を囲む全長92メートル、高さ約1.8メートルの石垣です。コンクリート造の壁体に琉球石灰岩を積み、琉球赤瓦の屋根を載せた伝統的な構造物で、2024年3月に国の登録有形文化財に登録されました。
- 宿泊しなくても見学できますか?
- はい。石垣は公道からも眺めることができます。また、平日限定で「有形文化財観覧ツアー」(500円/人、約1時間)が実施されており、宿泊されない方でも参加可能です。前日21時までにフロントへご予約ください。
- 瓦石垣を設計した建築家は誰ですか?
- 沖縄現代建築の先駆者である仲座久雄(1904〜1962年)です。花ブロックの考案者としても知られ、戦後の守礼門復元や規格住宅の設計など、沖縄の建築・文化財保護に多大な貢献をしました。
- アクセス方法を教えてください。
- 沖縄都市モノレール「ゆいレール」安里駅から徒歩約9分、那覇空港からは車で約20分です。国際通りや栄町市場も徒歩圏内です。
- 沖縄ホテルには他にも文化財がありますか?
- はい。瓦石垣のほか、旅館棟、レンガ棟、大道門(うふどーもん)の計4施設が国の登録有形文化財に登録されています。いずれも沖縄県内で戦後建造物として初めての登録となりました。
基本情報
| 名称 | 沖縄ホテル瓦石垣(おきなわほてるかわらいしがき) |
|---|---|
| 文化財区分 | 国登録有形文化財(建造物)/2024年3月6日登録 |
| 建設年 | 1961年(昭和36年) |
| 構造 | 石造及びコンクリート造、瓦葺、総延長92m、高さ約1.8m |
| 設計 | 仲座久雄 |
| 所在地 | 沖縄県那覇市字大道上大道原35 |
| アクセス | ゆいレール安里駅から徒歩約9分/那覇空港から車で約20分 |
| 文化財観覧ツアー | 平日10:00〜(約1時間)、500円/人、前日21時までに要予約 |
参考文献
- 沖縄ホテル瓦石垣 — 文化遺産オンライン
- https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/602990
- 沖縄ホテル、国の登録有形文化財に レンガ棟、瓦石垣など4件 — 琉球新報
- https://ryukyushimpo.jp/news/entry-2505963.html
- 沖縄ホテルの4つの建造物 登録有形文化財に登録へ — QAB NEWS
- https://www.qab.co.jp/news/20231124193765.html
- 巨匠に愛された沖縄建築 気候にあわせた「花ブロック」の発案者・仲座久雄 — OKITIVE
- https://www.otv.co.jp/okitive/article/54792/
- 登録有形文化財に認定された沖縄最古のホテル「沖縄ホテル」 — マハエの沖縄ダイアリー
- https://www.okinawastory.jp/mahaeblog/?p=20224
最終更新日: 2026.04.10