沖縄ホテル旅館棟:沖縄最古のホテルに息づく戦後建築の遺産
那覇市大道の閑静な住宅街の奥に佇む「沖縄ホテル」は、1941年(昭和16年)創業の沖縄最古のホテルとして知られています。1961年(昭和36年)に完成した旅館棟は、沖縄現代建築のパイオニアであり「花ブロック」の考案者としても名高い建築家・仲座久雄の設計によるもので、2024年(令和6年)3月6日に国の登録有形文化財(建造物)に登録されました。戦後沖縄の観光発祥の地として、また沖縄建築文化の貴重な証として、今なお現役の宿泊施設として多くの旅行者を迎え入れています。
歴史的背景
沖縄ホテルは、「沖縄観光の父」と称される宮里定三氏によって、1941年に那覇市波之上に沖縄唯一の観光ホテルとして開業しました。しかし1943年には軍政下に置かれ、1945年の沖縄戦における艦砲射撃で全壊という運命をたどります。
戦後、琉球映画貿易株式会社(琉映貿)の社長から再びホテル経営を要請された宮里氏は、土建会社「金城カンパニー」社長の自宅兼事務所(大道)を買い取りホテルに改築し、1951年に営業を再開しました。その後、宮里氏は建築家・仲座久雄に「沖縄のイメージを持ち、VIPを迎え入れられるホテル」の設計を依頼。1961年に旅館棟、大道門(うふどーもん)、瓦石垣が完成し、和室17室・洋室13室を備えた本格的な観光ホテルが誕生しました。
完成当時は電気冷蔵庫、水洗便所、ボイラーによる給湯設備を備え、どの部屋からも那覇市内を一望できる先進的な施設でした。放浪の天才画家・山下清、版画家・棟方志功、陶芸家・濱田庄司をはじめ、多くの芸術家や文化人、さらには歴代の総理大臣など国の要人にも愛されてきました。2022年9月にリニューアルオープンし、現在も営業を続けています。
文化財指定の理由
2023年11月24日、国の文化審議会は沖縄ホテルの旅館棟、レンガ棟、大道門、瓦石垣の4施設を登録有形文化財(建造物)に登録するよう文部科学大臣に答申し、2024年3月6日に正式登録されました。沖縄県内で戦後に建てられた建築物が登録有形文化財となるのは初めてのことです。
旅館棟は「造形の規範となっているもの」という基準で評価されました。西に開いたコの字形平面で、中央棟に吹抜けの玄関ホールと階段、北棟と南棟に客室を配する構成は、到着する客を両手を広げて迎え入れるかのようなイメージで設計されています。各階の窓上に庇を廻らし、中空ブロック(花ブロックの初期形態)で飾った壁面やバルコニーなど、仲座久雄らしい特徴が随所に見られます。数回の改修を経てもなお60年前とほぼ変わらぬ姿を保っており、「戦後沖縄におけるホテル発祥の遺例として希少」と高く評価されました。
見どころ・魅力
花ブロック(フラワーブロック)
仲座久雄が1950年代に考案した花ブロックは、沖縄の伝統的な絣(かすり)織物の幾何学模様から着想を得たコンクリート製の透かしブロックです。強い日差しを和らげながら心地よい風を通し、外部からの視線も適度に遮る機能性と美観を兼ね備えた画期的な建材で、今や沖縄建築の象徴となっています。旅館棟はその初期のデザインを見ることができる貴重な建築であり、建築愛好家にとって必見のスポットです。
おもてなしのコの字型設計
旅館棟はやや末広がりのコの字型平面で設計されており、大道門をくぐって正面に進むと、まるで建物が両腕を広げてお客様を歓迎しているかのような印象を受けます。仲座久雄が沖縄の風土と文化で観光客を迎え入れることを目指した設計思想が、建物の形そのものに表現されています。
大道門(うふどーもん)と瓦石垣
守礼門のデザインに通じる朱色の大道門と、全長92メートルにわたる琉球石灰岩の石垣に赤瓦を載せた瓦石垣は、文化庁から「国土の歴史的景観に寄与している」と評価されました。那覇市内では珍しい長大な石垣が続く風景は、沖縄らしい情緒を色濃く感じさせます。
レンガ棟
1949年頃に建設されたレンガ棟は、敷地内で最も古い建物です。戦後の混乱期にさまざまな場所から集められたレンガで造られたため、一つひとつの色や形が微妙に異なり、復興の記憶を今に伝えています。沖縄では珍しい暖炉も備えていたとされ、「再現することが容易ではないもの」として文化財登録されました。
ご利用案内
沖縄ホテルは現役の宿泊施設であり、登録有形文化財である旅館棟に実際に宿泊することができます。和室は6〜20畳、定員1〜6名とさまざまな広さの部屋が揃い、リニューアルされた洋室もあります。那覇市内では珍しい大浴場(利用時間15:00〜24:00、6:00〜11:00)を備え、敷地内には約50台収容の平面駐車場もあります。
有形文化財の解説付き見学ツアー「有形文化財観覧ツアー」も実施しています。平日の朝10時から約1時間、参加費500円(ワンドリンク付き)で、宿泊者以外の方も参加可能です。前日の夜9時までにフロントへお申し込みください。
アクセスは那覇空港から車で約20分(タクシーで約2,000円)、ゆいレール安里駅から徒歩約8〜10分です。
周辺情報
沖縄ホテルがある大道地区は、那覇の魅力的なスポットが徒歩圏内に集まる好立地です。徒歩約7分の栄町市場には、八百屋、魚屋、肉屋、カフェ、居酒屋などが軒を連ね、地元の日常の活気を体感できます。那覇のメインストリート・国際通りも徒歩でアクセス可能で、ショッピングやグルメを楽しめます。壺屋やちむん通りでは、沖縄伝統の焼き物(やちむん)の工房やショップが並び、陶芸の伝統に触れることができます。琉球王国の象徴・首里城(世界遺産)へも、モノレールやタクシーですぐにアクセスできます。
Q&A
- 登録有形文化財の建物に実際に宿泊できますか?
- はい、旅館棟は現役の宿泊施設です。和室・洋室ともに宿泊が可能で、文化財建築を身をもって体験できます。
- 花ブロックとは何ですか?なぜ重要なのですか?
- 花ブロックは、建築家・仲座久雄が1950年代に考案した穴の開いた装飾的なコンクリートブロックです。強い日差しを遮りながら風を通し、プライバシーも確保できる沖縄の気候に最適な建材で、現在では沖縄建築の象徴として約100種類ものデザインが存在します。旅館棟にはその初期の形態が残されています。
- 那覇空港からのアクセス方法を教えてください。
- 那覇空港から車またはタクシーで約20分(タクシー料金は約2,000円以内)です。公共交通機関をご利用の場合は、ゆいレールで安里駅まで行き、そこから徒歩約8〜10分です。
- 文化財の見学ツアーはありますか?
- はい、平日の朝10時から約1時間の解説付き「有形文化財観覧ツアー」を実施しています。参加費はお一人500円(ワンドリンク付き)、宿泊者以外の方も参加可能です。前日の夜9時までにフロントへお申し込みください。
- どのような著名人が宿泊したことがありますか?
- 放浪の画家・山下清、版画家・棟方志功、陶芸家・濱田庄司をはじめ、多くの芸術家や文化人が宿泊しました。また、歴代の総理大臣など国の要人も訪れています。
基本情報
| 名称 | 沖縄ホテル旅館棟 |
|---|---|
| 文化財種別 | 登録有形文化財(建造物) |
| 登録年月日 | 2024年(令和6年)3月6日 |
| 建築年 | 1961年(昭和36年) |
| 設計者 | 仲座久雄 |
| 構造 | 鉄筋コンクリート造、コの字形平面(中央棟に吹抜玄関ホール・階段、北棟・南棟に客室) |
| 所有者 | 有限会社沖縄ホテル |
| 所在地 | 沖縄県那覇市字大道上大道原35 |
| アクセス | ゆいレール安里駅より徒歩約8〜10分/那覇空港より車で約20分 |
参考文献
- 文化遺産オンライン — 沖縄ホテル旅館棟
- https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/531337
- 琉球新報 — 沖縄ホテル、国の登録有形文化財に レンガ棟、瓦石垣など4件 那覇市大道
- https://ryukyushimpo.jp/news/entry-2505963.html
- おきなわ物語 マハエの沖縄ダイアリー — 登録有形文化財に認定された沖縄最古のホテル「沖縄ホテル」
- https://www.okinawastory.jp/mahaeblog/?p=20224
- QAB NEWS — 沖縄ホテルの4つの建造物 登録有形文化財に登録へ
- https://www.qab.co.jp/news/20231124193765.html
- OKITIVE — 巨匠に愛された沖縄建築 気候にあわせた「花ブロック」の発案者・仲座久雄
- https://www.otv.co.jp/okitive/article/54792/
最終更新日: 2026.04.10