大野越排水溝とは
大野越排水溝は、沖縄県宮古島市平良字東仲宗根添の大野山林にある昭和9年(1934年)建設の鉄筋コンクリート造の排水隧道で、平成19年(2007年)7月31日に国の登録有形文化財に登録された。
読みは「おおのごしはいすいこう」。名称は「排水溝」だが、実体は地中を延長640メートルにわたって貫くトンネルで、宮古島市は英語で Onogoshi Drainage Tunnel と表記している。所有者は宮古島市、登録番号は47-0045である。
文化庁の解説は大野越排水溝の位置を「市北東部」とし、土地を開墾するための基盤となる施設と位置づける。宮古島の地上にあるのは坑口と周りの森だけで、構造の大部分は人目に触れない地下にある。
大野越排水溝が造られたわけ
宮古島市の解説によると、大野越排水溝の一帯には低湿地が広がり、水はけが悪く、いつも湿ったままの土地だった。農地としての利用を進めるため、国は大野山耕地整理計画を策定し、その事業の一つとして大野越排水溝を建設した。湿地にたまる水をトンネルで抜き、耕せる土地へ変えるための施設である。
効き目は農業の面だけではなかった。文化庁の解説は、湿地の排水路となった大野越排水溝が、マラリアを媒介する蚊の駆除に効果を上げたと記している。水たまりが消えれば、蚊が卵を産み幼虫が育つ場所も減る。土地を乾かす工事が、そのまま住民の健康を守る対策としても働いたことになる。
大野越排水溝の構造と登録の理由
大野越排水溝の断面は、円の一部を切り取った弧を天井とする欠円アーチの形をとる(宮古島市の解説ではアーチ型と表現)。市の資料では高さ約1.7メートル、幅約1.8メートルで、この断面が延長640メートルにわたって連続する。
文化庁が評価したのは、宮古島で最も早い時期に造られた鉄筋コンクリート造の構造物の一つという点である。宮古島市も、昭和初期の隧道としては規模が大きく、建設当時の技術水準の高さと時代の背景を映す建造物として貴重だと述べている。
見逃せないのは東側の坑口の造りである。鉄筋コンクリートで築きながら、石を積んだアーチのような見かけに仕上げ、アーチの頂部には要石(キーストーン)をかたどった形を据えている。排水という実用一点張りの施設でありながら、出入口だけは石造アーチの体裁を整えたことになる。
登録の基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」。完成から90年以上たった今も、大野越排水溝は排水トンネルとして使われ続けており、市は保存状態を比較的良好と評価している。
大野越排水溝の見学について
大野越排水溝は宮古島市が所有する現役の排水施設で、見学用に整備された場所ではない。市の文化財紹介ページには坑口への道順や見学方法の案内がなく、開放時間や料金といった決まりもない。トンネルの内部は水の通り道なので、中に入ったり水路へ下りたりすることは考えないほうがよい。撮影の可否についても公式の案内は見当たらない。
大野越排水溝は大野山林の森の中にある。文化財データベースの位置情報は、宮古島市熱帯植物園から北東へおよそ1キロメートルの地点を指しており、宮古空港からは北東へ直線で約4キロメートルになる。市のページに載る地図でもおおよその場所は確かめられるが、森の中は道がわかりにくく足元も悪いことが考えられる。訪ねる前に、宮古島市教育委員会の生涯学習振興課(電話0980-72-3764)に坑口の場所と近づけるかどうかを問い合わせておくと確実である。
Q&A
- 大野越排水溝はどこにありますか?
- 沖縄県宮古島市平良字東仲宗根添の大野山林の中にあります。文化財データベースの位置情報では、宮古島市熱帯植物園の北東およそ1キロメートル、宮古空港からは北東へ直線で約4キロメートルです。
- 大野越排水溝はいつ、何のために造られましたか?
- 昭和9年(1934年)、国の大野山耕地整理計画の事業の一つとして建設されました。水はけの悪い低湿地の水をトンネルで抜き、農地として使えるようにするための施設です。
- 大野越排水溝とマラリアにはどんな関係がありますか?
- 文化庁の解説によると、大野越排水溝は湿地の排水路として、マラリアを媒介する蚊の駆除に効果を発揮しました。たまり水が減ったことで、蚊の発生する場所も減ったためです。
- 大野越排水溝の中に入って見学できますか?
- できません。大野越排水溝は現在も排水トンネルとして使われており、見学用の施設ではありません。坑口の場所や近づけるかどうかは、宮古島市の生涯学習振興課に事前に確認してください。
- 大野越排水溝はなぜ登録有形文化財になったのですか?
- 宮古島で最も早い時期の鉄筋コンクリート造の構造物であり、昭和初期の隧道としては延長640メートルと規模が大きいためです。東の坑口には要石をかたどった石造アーチ風の意匠もあり、平成19年(2007年)7月31日に「国土の歴史的景観に寄与しているもの」として登録されました。
基本情報
| 名称 | 大野越排水溝(おおのごしはいすいこう) |
|---|---|
| 所在地 | 沖縄県宮古島市平良字東仲宗根添 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) |
| 指定年 | 平成19年(2007年)7月31日登録(登録番号47-0045) |
| 員数 | 1所 |
| 寸法 | 延長640メートル(断面 高さ約1.7メートル、幅約1.8メートル) |
| 所有者 | 宮古島市 |
| 公開状況 | 見学施設としての公開なし(現役の排水トンネル。内部立入不可) |
参考文献
- 国指定文化財等データベース「大野越排水溝」(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00006257
- 文化遺産オンライン「大野越排水溝」(文化庁)
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/143521
- 【国登録有形文化財・建造物】大野越排水溝(宮古島市)
- https://www.city.miyakojima.lg.jp/soshiki/kyouiku/syougaigakusyu/syougaikakusyu/bunkazai-OnogoshiHaisuiko.html
- 宮古島市の文化財(宮古島市)
- https://www.city.miyakojima.lg.jp/kanko/bunkazai/miyakojimabunkazai/
最終更新日: 2026.10.05