萩原家住宅(八尾市)とは

萩原家住宅(八尾市)は、大阪府八尾市恩智中町三丁目にある江戸後期(1751〜1830年)の主屋を中心とした河内木綿問屋の屋敷で、主屋・蔵・門など7件が令和元年(2019年)9月10日に国の登録有形文化財に登録された。

読みは「はぎわらけじゅうたく」。萩原家が木綿問屋として名乗った屋号「茶屋吉兵衛(ちゃやきちべえ)」は、地元で「茶吉(ちゃきち)」と親しまれてきた。その愛称をとって、屋敷はいま「茶吉庵(ちゃきちあん)」と呼ばれている。同じ名称の登録文化財はほかの地域にもあるため、このページでは八尾市の萩原家住宅を扱う。

屋敷は、河内二の宮とされる恩智神社の参道と、東高野街道(旧国道170号)が交わる角にある。主屋が街道に向かって東を向き、その後ろに蔵と納屋が並ぶ。

木綿問屋から郵便局、織物工場へ

萩原家の伝えでは、1600年ごろから恩智の庄屋(村の世話役)として屋敷を構え、1750年ごろに河内木綿の問屋を開いた。当主は代々「萩原吉兵衛(茶屋吉兵衛)」を名乗っている。

明治9年(1876年)には主屋の一部を改装して「恩知」郵便局が開かれた。文化庁のデータベースが萩原家住宅主屋の年代に「明治9年頃改修」と記すのは、この改装にあたるとみられる。局名は明治18年(1885年)に「恩智」と改められたが、明治28年(1895年)にいったん廃止された。

明治21年(1888年)、萩原家は木綿問屋を閉じて萩原織布工場を設け、機屋(織物業)に転じた。昭和10年(1935年)には萩原織布株式会社となり、昭和16年(1941年)に工場は軍需工場へ転用され、昭和20年(1945年)にはアメリカ軍に接収されている。翌年に織布業へ戻り、平成5年(1993年)に撤退するまで仕事を続けた。

平成29年(2017年)、19代目の当主が屋敷を残すことを決め、改修が始まった。翌年から一部で活用が始まり、その次の年に登録を受けている。

萩原家住宅の屋敷構えと歩く順序

萩原家住宅の建物は、街道に面した表と、中庭を挟んだ裏とに分かれる。表を先に見て、裏へ回る順が分かりやすい。

表では、主屋が敷地前方の北端に建ち、東の街道を向く。主屋の南半分の前には前庭があり、その東と北の2面を表門及び高塀が矩折れに囲む。敷地の東南隅、主屋の座敷棟の東側には巽蔵が西を向いて建つ。

裏では、木綿蔵が主屋の背後の北辺に南を向いて建ち、米蔵が西北隅から東を向く。2棟はL字形に連なり、屋敷の背面を厚く固めている。西南隅には納屋があり、米蔵と納屋のあいだ、敷地西面の石積みに設けた階段の上に裏門が立つ。

巽蔵の「巽」は東南、萩原家が木綿蔵を呼ぶ「乾蔵」の「乾」は西北を指す。主屋から見た方角が、そのまま蔵の名になっている。敷地には昭和7年から11年(1932〜1936年)に地元の大工が建てた離れもあるが、こちらは登録の対象ではない。

萩原家住宅の登録7件

萩原家住宅で国の登録有形文化財になっているのは次の7件で、登録基準はいずれも「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。

  • 萩原家住宅主屋:江戸後期(1751〜1830年)。明治9年(1876年)頃に改修、大正期に増築
  • 萩原家住宅表門及び高塀:大正前期(1912〜1918年)
  • 萩原家住宅巽蔵:江戸後期(1751〜1830年)
  • 萩原家住宅木綿蔵:江戸後期(1751〜1830年)
  • 萩原家住宅米蔵:明治42年(1909年)
  • 萩原家住宅裏門:昭和前期(1926〜1945年)
  • 萩原家住宅納屋:昭和前期(1926〜1945年)

八尾市によると、萩原家住宅は市内で6か所目の登録有形文化財(建造物)で、これにより市内の登録建造物は27棟になった。江戸後期から昭和前期まで、およそ150年のあいだに建てられた建物が1つの屋敷にそろっている。

萩原家住宅の見学とアクセス

萩原家住宅は萩原家が所有・管理する屋敷で、「茶吉庵」としてカフェやギャラリー、貸しスペース、寄席や音楽会などの催しに使われている。見学専用の公開日や入館料の定めは公式サイトに見当たらず、建物の中に入れるのはカフェの営業時やギャラリー・催しの開催時である(2026年9月確認)。

主屋の一角に入るカフェは、午前11時から午後5時までの営業で、火曜日を定休とし、ほかに休みの日もあると案内されている。ギャラリーや催しの予定は茶吉庵のサイトに載るので、訪ねる前に確かめたい。

萩原家住宅は住宅地の中にあり、茶吉庵は近隣への配慮とペット同伴の遠慮を求めている。撮影についての決まりは公式サイトに見当たらないため、店内や展示を撮るときはその場で尋ねるとよい。

最寄り駅は近鉄大阪線の恩智(おんぢ)駅で、萩原家住宅まで徒歩約7分。茶吉庵によれば無料の駐車場があるが、台数に限りがある。

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース「萩原家住宅主屋」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00012964
文化庁 国指定文化財等データベース「萩原家住宅表門及び高塀」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00012969
文化庁 国指定文化財等データベース「萩原家住宅巽蔵」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00012965
文化庁 国指定文化財等データベース「萩原家住宅木綿蔵」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00012966
文化庁 国指定文化財等データベース「萩原家住宅米蔵」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00012967
文化庁 国指定文化財等データベース「萩原家住宅裏門」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00012970
文化庁 国指定文化財等データベース「萩原家住宅納屋」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00012968
八尾市「萩原家住宅(恩智中町三丁目) 国登録有形文化財(建造物)に」
https://www.city.yao.osaka.jp/bunka_sports_event/bunka_geijutsu_reikishi/1011330/1011376/1011380.html
茶吉庵「茶吉庵について」
https://chakichian.co.jp/aboutchakichian/
茶吉庵 トップページ
https://chakichian.co.jp/
大阪文化財ナビ「萩原家住宅(茶吉庵)」
https://osaka-bunkazainavi.org/bunkazai/%E8%90%A9%E5%8E%9F%E5%AE%B6%E4%BD%8F%E5%AE%85%EF%BC%88%E8%8C%B6%E5%90%89%E5%BA%B5%EF%BC%89
ゆくるカフェ 公式サイト
https://www.yukuru-cafe.com/

最終更新日: 2026.09.30

基本情報

名称萩原家住宅(八尾市)
所在地大阪府八尾市恩智中町三丁目1
指定登録有形文化財 7件
座標34.60766, 135.63196