木村家住宅茶室とは

木村家住宅茶室(きむらけじゅうたくちゃしつ)は、大阪府八尾市東本町二丁目の河内木綿商の屋敷に明治中期(1883〜1897年)に建てられ、明治後期に増築された茶室で、令和3年(2021年)6月24日に登録有形文化財に登録された。主屋の裏座敷から廊下で通じ、裏座敷と本蔵のあいだに建つ。

桁行1間半・梁間2間半の切妻造・桟瓦葺で、建築面積は19平方メートル。北の三畳と南の四畳半、性格の違う2席が一つ屋根の下に並ぶ。主屋から通じる廊下の入口には「月燈菴」の額が掛かる。登録の基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」で、文化庁は屋敷の点景をなす建物としている。

「月燈菴」と明治の当主

八尾市が公表した登録時の所見(茶室の項は大阪電気通信大学の矢ヶ崎善太郎教授が執筆)によると、「月燈」は天保8年(1837年)に没した十三代庄兵衛の号「月燈居士」を指す。十三代が使った茶道具も伝わっており、この茶室は十三代をしのんで建てられたものとみられている。

天保13年(1842年)と推定される家相図には、主屋と蔵をつなぐ渡り廊下だけが描かれ、茶室はない。明治38年(1905年)ごろの実測平面図になって、渡り廊下の脇に三畳の茶室が現れる。所見は、三畳の席を明治中期の建築とし、明治初期や幕末までさかのぼってもおかしくないとする。四畳半は柱の古び方から後の増築で、渡り廊下を取り払って建て足されたと推定している。

このころの当主、十五代庄兵衛(嘉永7年・1854年生まれ、明治38年・1905年没)は儒者の藤沢南岳に学び、東塢と号して茶道と南画をたしなんだ。所見は、十五代が家督を継いだ明治24年(1891年)前後に茶室が建てられた可能性にも触れている。昭和29年(1954年)に歌人の柳原白蓮が木村家で短歌の会を開いた折に、茶室の前で撮った写真も残る。

木村家住宅茶室の三畳と四畳半 抹茶と煎茶

北の三畳は、東寄りの一畳を点前座、西の二畳を客座とする。点前座には丸一畳の畳を敷くが、炉は台目の位置に向切に切られ、所見はわび茶の台目畳向切の構えに通じると見る。点前座の正面には下地窓を開け、天井は網代張りの落天井とする。茶道口の上部はわずかに曲線を付けた花頭形で、客座の天井は全面を化粧屋根裏とする。北西の隅に躙口を開け、西の壁は掛物を掛ける釘だけを打った壁床である。

南の四畳半は、三畳と襖で仕切られる。南に明かり障子を立てて濡縁を付け、ここを上がり口とする。西の壁には半間の釣床を構え、東の壁の高い位置に円窓を開ける。炉は切られていない。文化庁は、釣床や円窓、庭に大きく開いた構えを煎茶にふさわしいものと評価している。

所見は、三畳を茶の湯(抹茶)のための本格的な草庵風の席、四畳半を煎茶にもかなう開放的な席とみる。木村家には煎茶道具も伝わり、2席を襖でつなげば大人数の茶会や稽古にも使えた。抹茶と煎茶の二つの茶の文化が、明治の八尾の商家で並んでいたことを示す建物である。

木村家住宅茶室の見学

木村家住宅茶室は一般公開されていない。主屋の裏手、庭に面して建つため、北側の道からは見えない。

八尾市は木村家住宅を整備して活用する事業を進めている。茶室が公開されるかどうか、またその時期は、今後の八尾市の発表で確かめてほしい。屋敷全体への行き方は木村家住宅のページにまとめてある。

Q&A

Q木村家住宅茶室はいつ建てられましたか?
A文化庁は明治中期(1883〜1897年)の建築で、明治後期に増築されたとしています。三畳の席が先に建ち、四畳半が後から加えられました。
Q木村家住宅茶室の「月燈菴」とは何ですか?
A廊下の入口に掛かる額の名です。天保8年(1837年)に没した十三代庄兵衛の号「月燈居士」にちなみ、十三代をしのんで建てられたとみられています。
Q木村家住宅茶室の三畳と四畳半はどう違いますか?
A三畳は台目の位置に炉を切った、わび茶のための草庵風の席です。四畳半は炉がなく、釣床や円窓を備えて庭に開いた、煎茶にもかなう席です。
Q木村家住宅茶室は見学できますか?
A現在は一般公開されておらず、北側の道からも見えません。公開の予定は八尾市の発表で確かめてください。
Q木村家住宅茶室にゆかりのある人物はいますか?
A明治の当主十五代庄兵衛が茶道と南画をたしなみ、昭和29年(1954年)には歌人の柳原白蓮が木村家で短歌の会を開いて、茶室の前で写真が撮られています。

基本情報

名称木村家住宅茶室
所在地大阪府八尾市東本町2丁目47-7
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年令和3年(2021年)6月24日登録
員数1棟
寸法木造平屋建、瓦葺、建築面積19平方メートル
所有者八尾市
公開状況非公開

参考文献

国指定文化財等データベース 木村家住宅茶室(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00013838
資料6 国登録文化財 意見具申用所見(八尾市 木村家住宅整備活用事業)
https://www.city.yao.osaka.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/025/241/data6.pdf
事業概要書(公表版) 国登録有形文化財 木村家住宅活用マーケットサウンディング調査(八尾市)
https://www.city.yao.osaka.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/018/500/jigyougaiyousyo.pdf
木村家住宅整備活用事業(PFIコンセッション方式)について(八尾市)
https://www.city.yao.osaka.jp/shisei/seisaku_keikaku_zaisei/1003421/1012858/1025241.html

最終更新日: 2026.10.02