薬種商の屋敷、その背後に

コニシ株式会社(旧小西儀助商店)三階蔵は、大阪市中央区道修町一丁目にある明治36年(1903年)建設の土蔵造3階建の建物で、平成8年(1996年)12月20日に国の登録有形文化財に登録された。建築面積45平方メートル。火から守るべきものを収めるために、大阪の商家が選び続けてきた厚い土壁の構法による。

敷地を所有するのはコニシ株式会社である。木工用接着剤「ボンド」の製造元といえば通りがよい。ただし出発点は薬種業だった。道修町は江戸期から薬種問屋が集まる町で、現在も製薬企業が軒を連ねる。小西家もその一軒として、この地に商いの根を張っている。

主屋を建てたのは二代目小西儀助。明治33年(1900年)から三年をかけ、明治36年に完成させた。通りに面して店棟を置き、中庭を挟んで奥の居室部へ繋ぐ表屋造である。敷地は道修町通から一筋北の通りまで抜ける奥行きを持ち、その背後に三棟の土蔵が並ぶ。本件はそのうち東北部に位置する一棟にあたる。

登録のまま残った一棟

平成8年12月20日、この敷地では四棟が同時に登録された。主屋、衣装蔵、二階蔵、そして三階蔵である。登録番号は連番で、三階蔵には27-0004が与えられた。大阪府で四番目に発行された番号にあたる。登録制度そのものがこの年に始まったばかりで、全国的にも最初期の登録例である。

五年後、四棟の運命は分かれた。平成13年(2001年)6月15日、主屋・衣装蔵・二階蔵および宅地が重要文化財に指定される。現状変更に許可を要し、修理への公的支援も手厚い、より上位の区分である。指定を受けた建造物は登録を抹消される。二つの区分は上下の階梯ではなく、択一の関係にあるからだ。三階蔵はこの指定の対象に含まれなかった。

結果として、この一棟だけが登録有形文化財のまま今日に至っている。同じ家が同じ十年のうちに建てた蔵が、数メートルを隔てて別々の法的区分に置かれている。建物の側は何ひとつ変わっていない。評価の線が、たまたまここを通ったというだけのことである。文化庁のデータベースは現在も本件を登録有形文化財として記載する。

軒に回された蛇腹

外観は水平に二層へ分かれ、その境目がはっきり読める。一階部分は石張り。その上、二階と三階は白漆喰塗の大壁造とする。柱も梁も壁体の内側に塗り込め、外部には木部を一切見せない。ここまでは土蔵の常道といっていい。

軒がそうではない。垂木を見せるでもなく、瓦の納まりで素っ気なく切るでもなく、この蔵は軒蛇腹を回している。屋根の下端に沿って走る帯状の繰形、すなわちコーニスである。西洋古典建築に由来する要素が、明治36年の土蔵の軒に据えられている。文化庁の解説はこれを「時代の特色を表す」ものと記す。大阪の商家が自らの構えに何を求めたか、その一端がここに出ている。

妻側では処理が変わる。帯を一本の繰形として通さず、のし瓦を二段に積んで段差を付ける。水平線を切り替えることで、平側と妻側が同じ表情に揃わないようにしてある。

見学について整理しておきたい。重要文化財に指定された主屋は令和2年(2020年)に旧小西家住宅史料館として公開が始まり、入館は無料、ただしウェブでの完全予約制である。問い合わせは06-6228-2847、受付時間は平日の10時から12時と13時から17時。史料館が案内するのは主屋と収蔵品であり、三階蔵そのものは大阪府の文化財データベースで「見学不可」と記載されている。屋敷構の一部として理解しておくのがよい。最寄りは Osaka Metro 堺筋線の北浜駅で5番出口から徒歩約1分、京阪本線北浜駅からは27番出口を経て徒歩約6分の距離になる。

Q&A

Qコニシ株式会社(旧小西儀助商店)三階蔵の内部は見学できますか。
A三階蔵そのものは大阪府の文化財データベースで「見学不可」とされています。隣接する主屋は旧小西家住宅史料館として公開されており、入館無料ですが、ウェブでの事前予約が必要です。
Qコニシ株式会社(旧小西儀助商店)三階蔵は、なぜ隣の建物と指定区分が違うのですか。
A四棟は平成8年に一括して登録有形文化財となりましたが、平成13年の重要文化財指定の対象は主屋・衣装蔵・二階蔵および宅地に限られました。指定を受けると登録は抹消されるため、対象外だった三階蔵だけが登録有形文化財として残っています。
Qコニシ株式会社(旧小西儀助商店)三階蔵の所有者はどのような会社ですか。
Aコニシ株式会社です。道修町で薬種商として出発し、のちにアルコールや工業薬品を扱う商社へと業容を広げ、戦後は合成接着剤「ボンド」の製造元として知られるようになりました。この屋敷は長く同社の社屋および小西家の住まいとして使われてきました。
Qコニシ株式会社(旧小西儀助商店)三階蔵の外観で注目すべき点はどこですか。
A三点あります。一階の石張り、二階・三階の白漆喰塗大壁造、そして軒に回された帯状の軒蛇腹です。軒蛇腹は西洋建築由来の要素で、土蔵に据えられている点に明治後期という時代が出ています。妻側ではこの帯がのし瓦二段の積み方に変わります。
Qコニシ株式会社(旧小西儀助商店)三階蔵はいつ建てられ、いつ登録されましたか。
A建設は明治36年(1903年)です。登録年月日は平成8年(1996年)12月20日、登録告示は同年12月26日、登録番号は27-0004。登録制度が発足した最初の回の登録にあたります。

基本情報

名称コニシ株式会社(旧小西儀助商店)三階蔵(こにしかぶしきがいしゃさんかいぐら)
所在地大阪府大阪市中央区道修町1-6
指定区分登録有形文化財(建造物)/登録番号 27-0004
指定年平成8年(1996年)12月20日登録(第1回/告示同年12月26日)
員数1棟
寸法建築面積45平方メートル/土蔵造3階建、瓦葺
所有者コニシ株式会社
公開状況三階蔵は見学不可/隣接する主屋は旧小西家住宅史料館として公開(入館無料・完全予約制)

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁)― コニシ株式会社(旧小西儀助商店)三階蔵
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00000064
文化遺産オンライン ― コニシ株式会社(旧小西儀助商店)三階蔵
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/112944
文化遺産オンライン ― 旧小西家住宅 主屋(重要文化財)
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/176942
コニシ株式会社 ― 旧小西家住宅史料館(利用案内)
https://www.bond.co.jp/konishishiryoukan/
大阪文化財ナビ ― コニシ株式会社(旧小西儀助商店)三階蔵
https://osaka-bunkazainavi.org/bunkazai/コニシ株式会社(旧小西儀助商店)三階蔵

最終更新日: 2026.08.20