和泉の町なかで動き続けるガラス棒工場
佐竹ガラスは、大阪府和泉市幸2丁目にある昭和2年(1927年)創業の工芸用色ガラス棒の製造工場で、敷地に建つ主屋・事務所・溶解場・作業場・調合場・鎮守社の6棟が平成13年(2001年)4月24日に国の登録有形文化財に登録された。6棟は同じ日に登録され、登録番号は27-0135から27-0140まで続いている。
佐竹ガラスの敷地は、住まいと工場がひとつの区画に同居する屋敷構えになっている。敷地南端の角地に和風の主屋があり、その脇に小さな事務所、奥へ進むと溶解炉を抱えた工場棟が続く。敷地の角には小さな社が祀られている。住む・働く・祀るという三つの機能が、ひとつの敷地の中で途切れずにつながっている点がこの施設の特徴である。
和泉市の文化財紹介では、伝統的な和風建築の主屋や事務所が工場と一体で維持されていることが貴重とされ、佐竹ガラスは和泉市で最初に国の登録を受けた建造物群として紹介されている。
色ガラス棒と和泉の地場産業
ここでつくられているのは、ガラス細工やとんぼ玉の材料になる細長い色ガラスの棒である。バーナーの炎で棒の先を溶かし、芯に巻き付けたり引き伸ばしたりして玉や動物をかたちづくる。この技法はバーナーワーク(ランプワーク)と呼ばれる。同社の事業の柱は、このバーナーワーク用の色ガラス棒(カラーロッド)の製造と販売である。
和泉市一帯は、ガラス細工と模造真珠(人造真珠)の産地として知られてきた。近畿経済産業局の産業施設ガイドは、佐竹ガラスが市内のガラス細工の材料だけでなく、人造真珠の芯になる原玉も供給してきたと紹介している。同じガイドと同社は、戦前から工芸用色ガラス棒を作り続けている工場は国内でここだけだとしている。
会社のあゆみによれば、創業は昭和2年(1927年)1月で、以来色ガラス棒の製造と販売を続けてきた。平成6年(1994年)には敷地内にバーナーワークの工房「流工房」が設けられ、体験教室が始まった。令和6年(2024年)10月には「いずみガラス」が経済産業大臣指定の伝統的工芸品となったことを、同社は公式サイトで案内している。登録された建物は、この産業が今も稼働している現場そのものである。
6棟の配置と登録の基準
文化庁の国指定文化財等データベースの解説をつなぎ合わせると、6棟の位置関係が読み取れる。敷地南端の角地に木造2階建の主屋が建ち、その北西面に平屋の事務所が接続する。事務所の北西には溶解炉を備えた溶解場があり、溶解場の東面に接して敷地の奥へL字形の作業場が広がる。溶解場の北面には材料を調合する調合場が接し、屋敷の角地には一間社流造の鎮守社が建つ。
建てられた時期は、主屋が昭和16年(1941年)、残る5棟は昭和初期とされる。工場棟はいずれも木造平屋で、瓦屋根を載せた和風の外観を持つ。溶解場と作業場の内部では、四方に方杖を付けた柱がキングポストトラスの小屋組を受けており、和風の外観の中に洋式の架構が収まっている。
登録にあたって適用された基準は棟によって異なる。主屋は「造形の規範となっているもの」、事務所・溶解場・作業場・調合場・鎮守社の5棟は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」として登録された。主屋は意匠そのものが評価され、残る5棟は屋敷全体の景観をかたちづくる要素として評価された、という分かれ方である。
見学・体験とアクセス
佐竹ガラスは現在も操業中の工場で、見学と体験はいずれも予約制である。同社の案内では、営業時間は平日の午前9時から正午までと午後1時から午後5時まで。月曜日はガラス棒の製造作業を行わず、土曜日と日曜日は教室のみの営業となる。年末年始などに臨時の休業日があり、公式サイトに掲示される。
工場見学は無料で、所要はおよそ20分。近畿経済産業局のガイドでは、火曜日と水曜日の午前と午後に受け付けるとしている。窯の破損や調合・溶解の都合で、ガラス棒を引く作業が見られない日もある。予約の締め切りは案内によって異なるため、日程が決まったら早めに電話(0725-41-0146)で問い合わせるのが確実である。
流工房のとんぼ玉制作体験は1人3,000円(材料費込み)。平日は午前9時30分と午後2時の2回で、見学と1時間の制作、40分の徐冷がセットになっている。土曜日(第1から第4)と日曜日(第2から第4)にも体験コースがあり、土曜日は日本語のみのレッスンとなる。近畿経済産業局のガイドでは、見学は英語、体験は英語と中国語に対応するとしているが、担当スタッフの在否によるため予約時に伝えておきたい。建物や作業の撮影の可否も、予約の際に確認しておくとよい。
最寄り駅はJR阪和線の信太山駅で、駅から北北東へ歩いて約10分。車では阪神高速湾岸線の助松出口から約10分、堺泉北道路の取石出口から約5分で、同社の案内では駐車場は7台分ある。所在地は大阪府和泉市幸2丁目11-30。
参考文献
- 国指定文化財等データベース(文化庁):佐竹ガラス主屋
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00002154
- 国指定文化財等データベース(文化庁):佐竹ガラス事務所
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00002155
- 国指定文化財等データベース(文化庁):佐竹ガラス溶解場
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00002156
- 国指定文化財等データベース(文化庁):佐竹ガラス作業場
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00002157
- 国指定文化財等データベース(文化庁):佐竹ガラス調合場
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00002158
- 国指定文化財等データベース(文化庁):佐竹ガラス鎮守社
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00002159
- 和泉市の文化財紹介(和泉市文化財活性化推進実行委員会):佐竹ガラス
- https://izbun.jp/introduction/shinoda/satakegarasu.html
- 近畿経済産業局 関西の見学可能な産業施設ガイド:佐竹ガラス株式会社
- https://www.kansai.meti.go.jp/2kokuji/tvlist/kohyo/846.html
- 佐竹ガラス株式会社:会社概要・あゆみ
- https://www.satake-glass.com/company/
- 佐竹ガラス株式会社:アクセス
- https://www.satake-glass.com/access/
- 佐竹ガラス株式会社:バーナーワーク教室・トンボ玉教室
- https://www.satake-glass.com/workshops/
- 佐竹ガラス株式会社:いずみガラス(伝統的工芸品)
- https://www.satake-glass.com/izumiglass/
最終更新日: 2026.09.25
基本情報
| 名称 | 佐竹ガラス |
|---|---|
| 所在地 | 大阪府和泉市幸2-11-30 |
| 指定 | 登録有形文化財 6件 |
| 座標 | 34.50266, 135.43813 |