中町に建つ木造三階建

竹屋は、佐賀県唐津市中町1884-2にある大正12年(1923年)建築の木造三階建の店舗で、平成10年(1998年)に国の登録有形文化財(建造物)に登録された。明治期の創業と伝わる鰻料理店が、いまも同じ建物で営業を続けている。

建築面積はおよそ100平方メートル、屋根は瓦葺。町家の敷地としては広くない。その分、建物は上へ伸びる。一階は調理場と家族の住居部、二階に六畳ほどの客室を三室、三階に十畳ほどの客室を二室置く。客は階段を上がる前提で設計されている。

木造三階建は大正期の住宅建築としてはほぼ上限にあたる規模で、地方都市の商業地にこれが残る例は多くない。唐津の旧城下でこの一棟が生き延びた理由は単純で、一家が営業をやめなかったからである。

商いの歴史は建物より長い。もとは刀剣にかかわる生業を営み、明治9年(1876年)の廃刀令を機に料理屋へ転じ、明治10年(1877年)ごろに鰻料理へ落ち着いたと伝わる。刀鍛冶とする資料と刀研ぎ・漆工とする資料があり、どの職種であったかは伝承の域を出ない。確実なのは、現在の店舗が大正12年に同じ町割の上で建て替えられたという点である。北へ数百メートルで唐津湾に注ぐ松浦川の汽水域は、当時の鰻の供給源であった。

登録という選択

文化財建造物の保護には二つの系統があり、竹屋は軽い側に属する。重要文化財や国宝は国が選ぶ「指定」で、現状変更には許可がいる。登録有形文化財は所有者が届出を行う「登録」で、大きな改変の前に届け出れば足り、税制上の優遇や技術的な助言を受けながら、建物を使い続けられる。築五十年を過ぎた店舗や住宅、工場が現役のまま保護対象になるよう、平成8年(1996年)に設けられた制度である。

竹屋の登録年月日は平成10年7月23日、告示は同年8月4日、登録番号は41-0004。文化庁の記録では第10回登録にあたり、適用された登録基準は「再現することが容易でないもの」である。

この基準の選択には含みがある。造形として傑出しているという評価ではなく、ここに集約された材と技の組み合わせを、いまあらためて再現するのは現実的でないという判断だからだ。文化庁の解説文は、用材が吟味されている点を挙げたうえで、階段廻りと客室の欄間、床棚の造作に言及する。いずれも日本建築の内部で施主の懐具合と指物師の腕が最も表に出る箇所である。

なお、観光情報や飲食店紹介では「指定」と記されることが少なくない。国指定文化財等データベースの登録上は「登録」であり、所有者に課される義務の内容も異なる。

座敷に上がってから見るもの

中町は、唐津城築城時の町割でできた内町のほぼ中央に位置する。竹屋周辺の街路は当時の区画を引き継いでおり、旧大手門に近い一帯には職人が多く住んでいた。建物は道に面してまっすぐ建ち、正面は木の看板を掛けるほかにほとんど装飾がない。大正期の店主が広告というものをどう考えていたかが見てとれる。

多くの客がまず口にするのは階段である。当時の間口と防火の要請から幅は狭く勾配は急で、踊り場まわりの仕口には手が入っている。上階では、客室ごとに欄間の意匠が異なる。二階の窓は中町の通りを見下ろす位置にあり、十一月上旬の唐津くんちでは曳山がこの町筋を進むため、その時期の上階座敷は予約が極めて取りにくい。

鰻は蒸しを入れない関西風の地焼きで供される。皮の縁が締まり、身が崩れない焼き上がりになる。焼き方に合う小ぶりの鰻を選び、たれは創業以来つぎ足してきたものだという。

実務的な情報を挙げる。営業は11時30分から19時(ラストオーダー18時30分)、17時以降は予約客のみ。休みは毎週水曜・木曜と1月1日から3日、8月15日。うなぎ定食が3,070円から、うなぎ丼(肝吸付)が2,910円から。駐車場はなく、周辺のコインパーキングを使うことになる。JR唐津駅から徒歩約6分、大手口バスセンターから徒歩約3分。いずれも変更されうるので、訪問前に店または唐津観光協会に確認したい。

内部を見るには食事をする以外の方法がない。営業中の飲食店であって公開施設ではなく、拝観券も見学順路も存在しない。館内撮影について公式の案内は出ておらず、他の客が同席する座敷でもあるため、撮る前に店の方へ一言かけるのが確実である。

徒歩五分ほどのところに旧唐津銀行本店が建つ。明治45年(1912年)竣工、唐津出身の辰野金吾が監修し、弟子の田中実が設計した佐賀県指定重要文化財で、入館は無料。赤煉瓦調タイルのクイーン・アン様式と、素木の三階建。十一年の間に同じ町が建てた二棟を続けて見ると、当時の唐津が抱えていた二つの建築観が並んで見える。

Q&A

Q唐津の竹屋は内部を見学できますか。外観だけですか。
A内部に入れますが、食事をする客としての入店に限られます。竹屋は営業中の鰻料理店で公開施設ではないため、拝観券も見学順路もありません。予約をしておくのが無難で、17時以降は予約が必須です。
Q竹屋の営業時間と定休日を教えてください。
A営業は11時30分から19時、ラストオーダーは18時30分で、17時以降は予約客のみの対応です。定休日は毎週水曜と木曜、および1月1日から3日と8月15日。変更されることがあるため、訪問前に店または唐津観光協会の情報で確認してください。
Q竹屋へは唐津駅からどう行きますか。駐車場はありますか。
AJR唐津駅から徒歩約6分、大手口バスセンターからは徒歩約3分です。専用駐車場はないため、車の場合は周辺のコインパーキングを利用することになります。
Q竹屋は登録有形文化財ですか、重要文化財ですか。
A竹屋は登録有形文化財です。平成10年7月23日登録、登録番号41-0004で、重要文化財ではありません。登録は届出制で、税制優遇や技術的助言を受けながら建物を使い続けられる仕組みです。許可制の指定とは所有者の義務が異なります。
Q竹屋の鰻は関東の蒲焼とどう違いますか。
A竹屋は蒸しを入れない関西風の地焼きです。関東では白焼きのあとに蒸してから再び焼くため身がやわらかく仕上がりますが、地焼きは直火で通すため皮が締まり、味が濃く出ます。焼き方に合わせて小ぶりの鰻を用いる点も特徴です。

基本情報

名称竹屋(たけや)
所在地佐賀県唐津市中町1884-2
指定区分登録有形文化財(建造物)/登録番号 41-0004/登録基準「再現することが容易でないもの」
指定年平成10年(1998年)7月23日登録、同年8月4日告示
員数1棟
寸法木造3階建、瓦葺、建築面積約100平方メートル/大正12年(1923年)建築
所有者国のデータベースに所有者名の記載なし。管理団体・管理責任者名は「竹屋」
公開状況飲食客としての入店に限り内部に入れる。11時30分〜19時(LO18時30分)、17時以降は予約のみ。水・木曜、1月1〜3日、8月15日休。専用駐車場なし

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース「竹屋」
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00000608
唐津観光協会「うなぎ 竹屋」
https://www.karatsu-kankou.jp/spots/detail/124
唐津観光協会「旧唐津銀行本店」
https://www.karatsu-kankou.jp/spots/detail/194
旧唐津銀行(辰野金吾記念館)公式サイト
https://karatsu-bank.jp/

最終更新日: 2026.08.09