通りに面していた建物

旧大塚酒造店舗兼主屋は、茨城県坂東市岩井3351-2にある明治中期建築の木造2階建の建物で、平成29年(2017年)5月2日に登録有形文化財となった。文化庁の国指定文化財等データベースは建築年代を1883年から1897年の間とし、施設の運営側は明治30年(1897年)以前の建築としている。

建つのは酒造の敷地の西北方、つまり町の側から見える位置である。仕込みや貯蔵は背後の蔵で行われ、この建物では酒が売られ、家族が暮らした。二つの用途が一つの屋根の下に収まっていることは名称そのものが示していて、店舗の「店舗」と住まいの「主屋」が併記されている。

この蔵元は相澤家で、江戸時代末期の創業から昭和6年(1931年)まで敷地を経営した。以後は千葉県野田市の酒類販売業者・大塚栄吉が土地と設備を引き継ぎ、大塚酒造として平成23年(2011年)まで営んだ。岩井は旧猿島郡の街道が集まる在郷町で、蔵元の店先は人の流れが立ち止まる場所の一つだった。

古い外観の内側にある近代的な間取り

旧大塚酒造店舗兼主屋は桁行15メートル、梁間10メートル、建築面積176平方メートル。屋根は四方に勾配をもつ寄棟造で、桟瓦葺である。

平面は在来の型である整形四間取り、つまり4つの部屋を田の字に並べる形から出発し、2か所でそこを離れる。台所が格子の内側に収まらず東南の角から外へ張り出していること、座敷の背面に廊下が回されていることの2点である。どちらも古い農家の作法ではない。客を家族の居室に通さずに動線を確保したい、明治期の商家の要求から出ている。

登録の理由もそこにある。旧大塚酒造店舗兼主屋は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」という基準で受け入れられ、登録有形文化財としての登録番号は08-0297、員数は1棟である。登録有形文化財の制度は平成8年(1996年)に指定制度より軽い枠組みとして設けられたもので、珍しさではなく、属している町並みによって価値を得るこの種の建物によく合う。

足元の酒樽、箪笥を登る階段

旧大塚酒造店舗兼主屋の1階には土間、応接間、和室、台所、風呂があった。2階へは階段箪笥、つまり段そのものが引き出しになった造作を登り、上には和室が2間ある。

天井高は3メートル。この年代の住宅としては高く、入った瞬間に体が気づく寸法である。格の高い部屋の上には畳の縁のように桟を組んだ格天井が張られ、ほかの部屋には竿縁天井が用いられる。欄間は透かし彫りで、通る光は時刻とともに表情を変える。

ただし驚くのは床のほうだ。平成28年(2016年)の改修では、建物を一度そのまま持ち上げ、下に土台を新設してから元の位置へ下ろしている。そのとき張られた床板は、酒蔵で使われていた酒樽の蓋を切り出したものである。踏んで歩けば、樽の直径がどれほどあったかが足で分かる。

もう1か所、目を留める価値がある。小さな煙突が目印の休憩棟は、大工が首をかしげる小屋組をもつ。登り梁を上下に食い違わせて束に差す点は与次郎組に似ているが、上屋梁は柱間を横断するように掛けられ、天秤梁を用いない。旧大塚酒造店舗兼主屋の南に立つ煉瓦煙突は、かつて台所の煙突があった位置に建つもので、登録の対象には含まれない。ただし煉瓦は東京の小菅集治監で焼かれたものと考えられており、壁側の面には複弁桜花章と思われる刻印が今も読み取れる。

旧大塚酒造店舗兼主屋の見学

旧大塚酒造店舗兼主屋は日常的に使われており、見学もできる。旧酒造の敷地に平成28年(2016年)11月に開設された坂東市観光交流センター「秀緑」の総合案内所がこの建物で、施設名はかつての酒銘から採られている。入場は無料。開館は午前10時から午後6時までで、月曜日は休館、月曜日が祝日にあたる場合は翌日が休館となる。

案内所であるため、旧大塚酒造店舗兼主屋は敷地内でもっとも入りやすい建物にあたり、常駐する職員が質問に答え、背後の蔵にある多目的ホールの予約も受け付けている。市内の陶芸や木工の作品展が室内で開かれることもある。撮影の可否について公式な案内は出ていないので、展示が入っているときは受付でひと言たずねてほしい。当日の状況は0297-35-0002で確認できる。

最寄りのバス停は「本町」、そこから徒歩1分。つくばエクスプレス守谷駅から関東鉄道バスの岩井バスターミナル行きで40分ほど、東武アーバンパークライン野田市駅からは茨城急行バスの岩井車庫行きが同じ停留所に停まる。同線の愛宕駅からはバスかタクシーで30分ほど。車では圏央道坂東インターチェンジから15分ほどで着く。駐車場は敷地の裏側に10台分、南側に車椅子対応が2台分ある。

Q&A

Q旧大塚酒造店舗兼主屋の中に入れますか。入場料はかかりますか。
A入れます。坂東市観光交流センター「秀緑」の総合案内所として使われており、入場は無料です。開館時間中は内部が開いていて、職員が常駐しています。
Q旧大塚酒造店舗兼主屋の開館時間と休館日を教えてください。
A午前10時から午後6時まで開いており、月曜日は休館です。月曜日が祝日にあたる場合は翌日が休館になります。お出かけの前に0297-35-0002でご確認ください。
Q旧大塚酒造店舗兼主屋はいつ建てられたのですか。
A明治中期です。文化庁の国指定文化財等データベースは1883年から1897年の間とし、施設の運営側は1897年以前の建築としています。平成28年(2016年)に改修されました。
Q旧大塚酒造店舗兼主屋では何を見ればよいですか。
A酒樽の蓋を切り出した床板、格天井と竿縁天井を張り分けた3メートルの高い天井、透かし彫りの欄間、そして休憩棟の変わった小屋組です。
Q旧大塚酒造店舗兼主屋へ公共交通機関で行くにはどうすればよいですか。
A守谷駅(つくばエクスプレス)が起点として便利です。岩井バスターミナル行きの関東鉄道バスに40分ほど揺られ、「本町」で降りると徒歩1分。野田市駅(東武アーバンパークライン)発の茨城急行バスも同じ停留所を経由します。

基本情報

名称旧大塚酒造店舗兼主屋(きゅうおおつかしゅぞうてんぽけんしゅおく)
所在地茨城県坂東市岩井3351-2
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年平成29年(2017年)5月2日登録
員数1棟
寸法建築面積176平方メートル、桁行15メートル、梁間10メートル
所有者坂東市
公開状況坂東市観光交流センター「秀緑」の総合案内所として公開。入場無料、午前10時から午後6時、月曜休館

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース「旧大塚酒造店舗兼主屋」
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00011446
文化遺産オンライン「旧大塚酒造店舗兼主屋」
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/256035
観光交流センター秀緑「主屋の佇まい(登録有形文化財)」
https://shuroku.com/shisetsu/syuya
観光交流センター秀緑「煙突と煉瓦の歳月」
https://shuroku.com/shisetsu/entotutorenga
観光交流センター秀緑「施設紹介・旧大塚酒造について」
https://shuroku.com/shisetsu-syoukai
観光交流センター秀緑「アクセス」
https://shuroku.com/access
茨城県 観光いばらき「坂東市観光交流センター『秀緑』」
https://www.ibarakiguide.jp/spot.php?mode=detail&code=217
坂東市「令和6年版 坂東市統計書」(沿革および国登録有形文化財一覧)
https://www.city.bando.lg.jp/data/doc/1748484586_doc_13_0.pdf

最終更新日: 2026.09.06