敷地西端の隠居所

伊賀市丸柱の長谷園、その敷地の西端に、もと隠居部屋として建てられた一棟がある。大正期、1912年から1926年のあいだの建築で、その時代らしい住まいとして読める。主体部は木造二階建の入母屋造で、上下階それぞれに造作の整った和室を二室ずつ備える。建築面積はおよそ119平方メートル。

周囲の古い建物と別荘を分けるのは、玄関脇に付く小さな洋間である。パラペットには洋瓦を葺き、壁面からはベイウィンドウが張り出す。和風の住居に洋間を添えるこうした趣向は大正期に流行したもので、別荘はそれを破綻なくまとめている。

登録の理由

別荘は、国土の歴史的景観に寄与するものとして平成27年(2015年)3月に登録有形文化財となった。敷地内の他の建物とともに一括で登録されており、明治から大正にかけて整えられた一族の屋敷の一部をなす。

近くの茅葺の主屋と対比させると、別荘の意図が見えてくる。古い主屋は農家的な系譜を引き、ベイウィンドウと洋瓦の洋間をもつ別荘は新しさへ向かう家の姿を示す。二棟を並べて見ることに意味があり、同じ一族の建築史の二つの時点を示している。

見どころ

静かな見どころは和室のほうにある。造作は丁寧で、庭側から届く光には、見せるための部屋ではなく隠居のための部屋らしい柔らかさがある。対して洋間は最初に目を引く場所で、ベイウィンドウが探すべきディテールになる。

別荘は、稼働する窯元であり散策エリアでもある長谷園の敷地の一部で、一般に公開されている。建物に近づくときは、屋敷全体を視野に入れておくとよい。別荘は単独で建つのではなく、門や渡廊下を経て至る屋敷地の端に据えられている。

Q&A

Q別荘はもともと何に使われていましたか。
A一族の隠居部屋として建てられた住まいで、敷地の西端に置かれた静かな居所でした。
Qこの建物の見どころは何ですか。
A造作の整った和室に、ベイウィンドウと洋瓦を備えた小さな洋間を組み合わせた点で、大正期らしい和洋折衷の住宅です。
Qいつ頃の建築ですか。
A大正期、1912年から1926年のあいだの建築です。
Q見学はできますか。
A丸柱の長谷園敷地内にあり、本店・散策エリアとして公開されています。建物内部の可否は現地の案内に従ってください。
Q主屋とはどんな関係にありますか。
A古い茅葺の主屋と対をなすよう建てられ、同じ屋敷における後の時代を示す一棟です。

基本情報

名称長谷園別荘(ながたにえんべっそう)
所在地三重県伊賀市丸柱569他
指定区分登録有形文化財(建造物/産業2次)
登録年月日平成27年(2015年)3月26日 登録番号 24-0191
員数1棟
時代大正期(1912~1926年)
構造木造2階建、瓦葺、建築面積約119㎡、洋間付
公開長谷園敷地内、本店・散策エリアとして公開

参考文献

国指定文化財等データベース — Cultural Heritage Online (Agency for Cultural Affairs)
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00010465
伊賀焼窯元 長谷園 公式サイト — 長谷園について
https://igamono.co.jp/at-first/
観光三重 — 伊賀焼窯元 長谷園
https://www.kankomie.or.jp/spot/33

最終更新日: 2026.07.11