天智天皇のために開かれた昭和の社

近江神宮は、滋賀県大津市神宮町にある神社で、天智天皇を祭神として昭和15年(1940年)11月7日に鎮座した。境内に建つ社殿と工作物40件は、平成10年(1998年)10月9日に国の登録有形文化財に登録されている。

天智天皇は天智天皇6年(667年)に飛鳥から近江大津宮へ都を遷した。その旧都の地に天皇を祀る社を建てようという動きは、明治の後半から地元で続いていた。明治28年(1895年)に当時の大津町長が有志を募って志賀宮址碑を建て、明治41年(1908年)には大津市制施行10周年に際して市長が創立の請願運動を始めている。

計画が形になったのは昭和に入ってからである。昭和12年(1937年)10月12日に近江神宮奉賛会が組織され、翌13年(1938年)5月1日に創立が発表された。地鎮祭は同年6月10日、時の記念日にあたる日に執り行われている。工事には延べ7万人を超える県民が勤労奉仕で加わった。

竣工は皇紀2600年にあたる昭和15年(1940年)。11月7日、勅使の参向のもとで御鎮座祭が斎行された。近江大津宮の正確な位置は当時まだ分かっておらず、近江神宮の境内が大津宮の一角ないし隣接地にあたると確かめられたのは、戦後の発掘によってである。

斜面に段を重ねる境内

社殿の計画は内務省神社局が担当し、設計は角南隆と谷重雄による。近江神宮の社地は琵琶湖西岸の山裾にあって平坦ではなく、傾斜地に対応した配置構成がこの社の特色になっている。歩く順序がそのまま高さの順序になる。

参道は京阪の踏切をわたったところに立つ第一鳥居から始まる。まっすぐ進むと石階段の上に第二鳥居が立ち、その右手奥に手水舎がある。さらに石階段を昇ると楼門が現れ、くぐった先が外拝殿である。参拝はここで行う。

外拝殿の奥は段が重なる。内院を囲む廻廊と翼廊、その西端に建つ内拝殿、内拝殿から昇る登廊、登廊を昇りきったところの中門、中門から伸びる渡廊、そして最上段の本殿と祝詞舎。一般の参拝者が立てるのは外拝殿までで、この奥へは進めない。段の重なりは外から読むことになる。

外院の北部には神楽殿と参集所が並び、北神門がその入口にあたる。南側には社務所と斎館、勅使玄関があり、斎館へ通じる脇参道の入口に脇鳥居が立つ。近江神宮の公式サイトは、この社殿の形式を「近江造り」「昭和造り」と呼んでいる。

40件が同じ日に登録された

近江神宮の登録有形文化財は40件で、登録番号は25-0054から25-0093までの連番になっている。登録年月日は全件が平成10年(1998年)10月9日、告示は同月26日。登録基準もいずれも「造形の規範となっているもの」で揃っている。

40件の内訳は本殿から鳥居まで幅が広い。本殿・祝詞舎・渡廊・中門・翼廊・後門・透塀といった内内院まわり、内拝殿・登廊・内院廻廊の内院まわり、外拝殿・外廻廊・外透塀の外院まわり、神楽殿・参集所・神饌所・社務所・斎館などの社務の建物、それに手水舎と3基の鳥居。境内をつくる要素がほぼ丸ごと入っている。

工事は二期に分かれた。第一期は昭和15年(1940年)の竣工で、本殿から外拝殿までの中枢と鳥居・手水舎がこれにあたる。第二期は昭和19年(1944年)で、神楽殿とその廻廊、参集所、北神門などが加わった。文化庁の解説は第二期の建物について、時節にもかかわらず上質に仕上げられていると記している。公式サイトは、近江神宮の社殿が近代神社建築の代表として登録文化財になったと説明している。

個々の棟の構造や見どころは、それぞれのページに分けて書いてある。

参拝と行き方

近江神宮の参拝時間は午前6時から午後6時まで。参拝は無料で、境内の撮影も自由である。ご祈祷の受付は午前9時30分から午後4時、お守りと御朱印の授与は午前9時から午後4時30分、時計館宝物館は午前9時30分から午後4時30分で入館は午後4時までとなっている。

鉄道の最寄りは京阪石山坂本線の近江神宮前駅で、駅から徒歩約9分。京都方面からはJR湖西線を使い、京都駅から大津京駅まで約11分、JR大津京駅と京阪大津京駅のあいだは約150メートルの徒歩連絡になる。近江神宮前駅にタクシーは常駐していない。

車では名神高速道路の京都東インターチェンジから約10分、大津インターチェンジからは15分から20分ほどかかる。駐車場は200台分あり、正月は臨時駐車場を含めて500台まで収まる。12月31日の夜から1月5日までは1000円、観光バスは2000円で、それ以外の期間は無料である。正月の周辺道路は渋滞するため、公式サイトは公共交通機関の利用をすすめている。

車いすで参拝する場合、時計館の横から外拝殿までスロープが設けられている。時計館横に車いす用トイレがあり、身障者用自動車は時計館横まで乗り入れできる。参拝だけなら駐車場から10分程度をみておけばよい。

年中行事では、6月10日の時の記念日に漏刻祭が行われる。小倉百人一首の巻頭が天智天皇の御製であることから競技かるたの大会が盛んで、時の記念日に先立つ6月第1日曜日には流鏑馬神事も奉納される。

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁)「近江神宮本殿」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00000832
近江神宮公式サイト「近江神宮御創建前史」
https://oumijingu.org/pages/91/
近江神宮公式サイト「境内図と境内各所のご案内」
https://oumijingu.org/pages/96/
近江神宮公式サイト「交通アクセス」
https://oumijingu.org/pages/85/
文化遺産オンライン「近江神宮本殿」
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/166142

最終更新日: 2026.09.13

基本情報

名称近江神宮
所在地滋賀県大津市神宮町1-1
所有者近江神宮
指定登録有形文化財 40件
座標35.03221, 135.85246