旧江津町役場本庁舎:甍街道に佇む大正ロマンの庁舎建築
島根県江津市の旧港町、江津本町の神社参道沿いに静かに佇む旧江津町役場本庁舎は、大正末期の1926年に建てられた鉄筋コンクリート造と木造を組み合わせた2階建ての建築物です。江津町の行政の中心として長きにわたり機能し、2010年には国の登録有形文化財に登録されました。現在は「甍街道交流館」として地域のまちづくり活動の拠点となっており、赤い石州瓦の家並みが連なる天領江津本町甍街道のシンボル的存在として親しまれています。
歴史的背景
江津は中国地方最大の河川である江の川の河口に位置し、「川の港」として古くから発展してきました。江戸時代には幕府直轄の天領として治められ、北前船の寄港地や天領米の積出港として繁栄しました。川岸には多くの廻船問屋の蔵屋敷が軒を連ね、旧山陰道が町の中心を貫いて東の大森銀山と西の浜田を結んでいました。当時は「大森銀山に次ぐ石見第二の賑わい」と称されるほどの繁盛ぶりでした。
1926年(大正15年)、この繁栄の地に江津町の新庁舎として建設されたのが本建築物です。1954年に江津町が周辺町村と合併して市制を施行した後も、初代の江津市役所として使用され続けました。1962年に新しい市庁舎が完成するまで行政の中心として機能し、その後は1966年、1977年、2007年と改修を重ねながら保存されてきました。
文化財としての価値
旧江津町役場本庁舎は、2010年(平成22年)1月15日に国の登録有形文化財(建造物)に登録されました。その価値は多方面にわたります。まず、大正期の地方小都市において鉄筋コンクリート造を採用した先駆的な建築であり、海運貿易で栄えた町の近代化への意欲を物語っています。正面のファサードは特に注目に値し、中央と左右に二層分の柱型(ピラスター)を配し、頂部を段状のパラペットとしています。その間に縦長窓や幾何学的な図柄を配することで、左右相称で上昇感のある格調高い立面構成を実現しています。
また、江戸時代の繁栄する港町から近代的な自治体への変遷を示す行政史の生き証人としても貴重です。近隣に建つ旧江津郵便局(同じく登録有形文化財)とともに、甍街道地区の景観を特徴づける一対のランドマーク的建造物となっています。
建築の見どころ
本建築は鉄筋コンクリート造及び木造の2階建てで、寄棟造の屋根に金属板を葺いています。建築面積は約205平方メートルです。最大の見どころは正面ファサードで、力強いピラスター(付柱)が立面を分節し、屋根のラインに沿って段状のパラペットが建物に上昇感を与えています。窓の間に施された幾何学的な装飾は、和洋折衷のデザインを積極的に取り入れた大正・昭和初期の時代精神を反映しています。
全体の構成は厳密な左右対称であり、地方行政の拠点としてふさわしい威厳と格式を備えています。数度の改修を経ながらもファサードの本質的な意匠と空間構成は丁寧に保存されており、現在は「甍街道交流館」として地域のイベントや文化活動、まちづくり活動の拠点として活用されています。
訪問案内
旧江津町役場本庁舎は江津本町地区に位置し、JR江津駅から約1.5キロメートル、徒歩で15~20分、タクシーで約5分の距離です。自動車の場合は山陰自動車道(江津道路)の江津インターチェンジから約10分です。甍街道交流館には駐車場が併設されています。
建物は主にコミュニティセンターとして使用されているため、内部の見学はイベントや催事の開催状況により異なります。ただし、最大の見どころである外観はいつでも自由に見学でき、甍街道の散策と合わせて楽しむことができます。周辺には歴史案内板が設置されており、ガイドツアーも利用可能です。
周辺の見どころ
天領江津本町甍街道は、2003年に夢街道ルネサンス推進会議により「モデル地区」に認定された歴史的まち並みの散策路です。江戸時代から昭和初期にかけての商家、土蔵、数多くの社寺仏閣が、石州赤瓦の屋根の下に軒を連ねています。主な見どころとして、明治前期に建てられたステンドグラスの窓を持つ擬洋風建築の旧江津郵便局(登録有形文化財)や、明治時代の豪商・飯田家の別邸であった二楽閣の石垣跡などがあります。荷物を運ぶ牛馬をつないだ「鼻ぐり石」も街道沿いに残されています。
広域の周辺観光地としては、隣接する大田市に世界遺産の石見銀山があり、西方にはシロイルカで知られるしまね海洋館アクアス、さらに有福温泉などの歴史ある温泉地も点在しています。江津市自体が日本三大瓦のひとつである石州瓦の産地であり、赤瓦の家並みが織りなす景観は石見地方ならではの風景です。
Q&A
- 旧江津町役場本庁舎は現在どのように使われていますか?
- 2007年の改修工事を経て「甍街道交流館」として再生され、地域のまちづくり活動の拠点やイベント会場として活用されています。「本町地区歴史的建造物を活かしたまちづくり推進協議会」の活動拠点でもあります。
- 旧江津町役場本庁舎へのアクセス方法は?
- JR江津駅から徒歩約15~20分、タクシーで約5分です。自動車の場合は山陰自動車道(江津道路)江津ICから約10分です。甍街道交流館に駐車場があります。
- 甍街道とはどのような場所ですか?
- 天領江津本町甍街道は、江戸時代に北前船の寄港地として栄えた江津本町の歴史的まち並みを巡る散策路です。赤い石州瓦の屋根が連なる商家や社寺が点在し、2003年に夢街道ルネサンス推進会議の「モデル地区」に認定されています。
- 建物の内部は見学できますか?
- 現在は甍街道交流館として利用されており、イベントや催事の開催時に内部を見学できる場合があります。建物の最大の見どころである正面ファサードは、外部からいつでも自由にご覧いただけます。最新の情報は江津市観光協会にお問い合わせください。
- 近くに他の観光スポットはありますか?
- 甍街道内には旧江津郵便局(登録有形文化財)をはじめとする歴史的建造物が点在しています。広域では世界遺産の石見銀山(大田市)、しまね海洋館アクアス、有福温泉などがあり、日帰りで訪れることができます。
基本情報
| 名称 | 旧江津町役場本庁舎(きゅうごうつちょうやくばほんちょうしゃ) |
|---|---|
| 文化財指定 | 国登録有形文化財(建造物) |
| 登録年月日 | 2010年(平成22年)1月15日 |
| 建築年 | 1926年(大正15年) |
| 改修年 | 1966年・1977年・2007年 |
| 構造 | 鉄筋コンクリート造及び木造2階建、寄棟造金属板葺 |
| 建築面積 | 約205㎡ |
| 現在の用途 | 甍街道交流館(コミュニティ交流施設) |
| 所在地 | 〒695-0011 島根県江津市江津町121-1 |
| アクセス | JR江津駅から徒歩約15~20分、山陰自動車道(江津道路)江津ICから車で約10分 |
参考文献
- 旧江津町役場本庁舎 - 文化遺産オンライン
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/140774
- 天領江津本町甍街道 - 江津市ホームページ
- https://www.city.gotsu.lg.jp/soshiki/4/4657.html
- 天領江津本町甍街道 公式サイト
- https://gotsuhonmachi.iwaminochikara.or.jp/
- 江津本町甍街道 - しまね観光ナビ
- https://www.kankou-shimane.com/destination/47054
- 江津市の歴史・沿革 - 江津市ホームページ
- https://www.city.gotsu.lg.jp/site/gotsu-navi/4468.html
最終更新日: 2026.04.01