世界と対した座敷

前座敷は、鉄師の家が外の世界と対した場である。松江藩主を迎え、のちには与謝野晶子や近衛文麿もここに通された。

明治後期の建築で、昭和11年(1936)に一部を改めた。木造平屋建、鉄板葺に一部瓦葺を交え、建築面積は約150㎡。邸宅のうち接客をつかさどる表側に構えられ、客はここへ導かれて対面や饗応を受けた。絲原家は農民の登録でありながら士分格を許された特異な家柄で、その居宅は松江藩主の本陣となることもあった。

木に刻まれた格式

平成16年(2004)2月17日に登録され、基準は「造形の規範となっているもの」。藩客を迎える座敷にふさわしい端正な格式が、床の間の比例、続き間の座敷の配し方、造作の質にあらわれている。絲原家には松江藩七代藩主で茶人として知られた松平不昧ゆかりの茶道具が伝わり、この座敷はそうした茶の湯の交わりを受けとめる場でもあった。

表座敷を読む

座敷からの庭は、室内の延長として目に映る。砂鉄を採った跡地に数十年をかけて造られた出雲流の池泉回遊式庭園である。見学者は記念館の順路に沿ってこの表座敷を通る。ひとつの大きな見せ場よりも、明治後期から昭和初めの大工が木部に残した細部を、腰を据えて見たい。

Q&A

Q誰がこの座敷に通されましたか。
A公式の御成には松江藩主が、のちには与謝野晶子や近衛文麿らが迎えられた。
Qいつのものですか。
A明治後期の建築で、昭和11年(1936)に一部が改造されている。
Q本陣とは何ですか。
A参勤などで大名一行が宿泊した公式の宿所で、絲原家の居宅もその役を務めた。
Qどこを見ればよいですか。
A床の間の比例、続き間の並び、そして接客のために整えられた造作である。
Q公開されていますか。
A絲原記念館の一部として見学でき、室内への立ち入りは記念館の案内による。

基本情報

名称絲原家住宅前座敷
所在地島根県仁多郡奥出雲町大谷856-1
指定区分登録有形文化財(建造物)
登録年月日2004年(平成16)2月17日
登録番号32-0019
構造及び形式等木造平屋建、鉄板葺一部瓦葺、建築面積150㎡
時代・年代明治後期(昭和11年〈1936〉一部改造)
登録基準造形の規範となっているもの
所有者個人(非公開)
公開状況絲原記念館の一部として公開

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース — 登録有形文化財(建造物)
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00003910
絲原記念館 — 公式サイト
https://itoharas.com/
奥出雲町観光ガイド — 絲原記念館・絲原家住宅・庭園
https://okuizumo.org/jp/guide/detail/188/
しまね観光ナビ — 絲原記念館
https://www.kankou-shimane.com/destination/20282

最終更新日: 2026.07.05