邸が在る理由

床はわずか1㎡ほど。この小さな社は、邸全体が在る理由そのものを納めている。祀るのは鉄の神・金屋子。奥出雲のたたら師がひとしく崇めた神である。

金屋子神は製鉄と金工の守り神で、たたらの炉が燃えるところに広く祀られた。絲原家は明治29年(1896)、この社を邸内に建てた。木造平屋建、屋根は鉄板葺、建築面積はわずか0.9㎡。砂鉄と木炭で鉄を吹くことに家運を負う一族にとって、鉄神の社は飾りではなく、家業の精神的な中心であった。

最小の建物、最大の意味

平成16年(2004)2月17日、歴史的景観の基準で登録。この社は一群のなかで最も小さく、意味においては最も大きな一棟でもある。帳簿の下に流れていた信仰、すなわち一度の操業の成否は金屋子の加護にかかるという思いを、その場に定着させている。明治29年の建築で、洋鉄が大正後期にたたらを終わらせ、家が山林業へ転じる前、絲原のたたら最後の数十年にあたる。

社を探す

主屋が富を、蔵が蓄えの容量を示すとすれば、この社は両者の源を示す。1㎡に満たない建物は見過ごしやすい。歩をゆるめて探すことは、邸をその精神の根から正しく読むすべである。社は敷地内に立ち、見学の順路から望める。

Q&A

Q金屋子とは何ですか。
A製鉄と金工の神で、砂鉄地帯のたたら師に広く崇められた。
Q社はなぜこれほど小さいのですか。
A家の私的な社で、建築面積約0.9㎡、一家の祭祀のために建てられた。
Qいつ建てられましたか。
A明治29年(1896)、絲原のたたら最後の数十年にあたる。
Q何でできていますか。
A木造で、屋根は鉄板葺である。
Q参拝できますか。
A敷地内に立ち、見学の順路から望むことができる。

基本情報

名称絲原家住宅金屋子神社
所在地島根県仁多郡奥出雲町大谷856-21
指定区分登録有形文化財(建造物)
登録年月日2004年(平成16)2月17日
登録番号32-0026
構造及び形式等木造平屋建、鉄板葺、建築面積0.9㎡
時代・年代明治29年(1896)
登録基準国土の歴史的景観に寄与しているもの
所有者個人(非公開)
公開状況絲原記念館の一部として公開

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース — 登録有形文化財(建造物)
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00003917
絲原記念館 — 公式サイト
https://itoharas.com/
奥出雲町観光ガイド — 絲原記念館・絲原家住宅・庭園
https://okuizumo.org/jp/guide/detail/188/
しまね観光ナビ — 絲原記念館
https://www.kankou-shimane.com/destination/20282

最終更新日: 2026.07.05