社宅群の頂点に立つ所長の住まい

愛媛県新居浜市星越町の旧住友鉱業株式会社別子鉱業所長社宅主屋は、昭和12年(1937年)築の木造平屋建、入母屋造桟瓦葺の住宅である。建築面積は214平方メートル。応接棟・茶室とあわせた延床面積は349.13平方メートルに及び、住友山田社宅の中で敷地・建物とも最大規模を誇る。3棟はそれぞれ令和2年(2020年)8月17日に国の登録有形文化財(建造物)となった。

元禄4年(1691年)の開坑以来、住友の事業の基盤であり続けた別子銅山。その現地の総責任者である鉱業所長のために建てられたのが本社宅である。大正14年(1925年)竣工の星越選鉱場の門前には昭和4年(1929年)以降、社宅街が造成され、市の資料によれば最盛期には最大290戸を数えた。職階に応じて住宅の規模が定められたその序列の頂点が、この所長社宅だった。

平成30年(2018年)に改修され、現在は新居浜市の所有。敷地中央に北面して建つ。

華美を抑えた上質、雁行する廊下

外観は横長の入母屋造。棟の東端では南北両面に千鳥破風を載せ、南面には下屋を廻す。破風の位置を東端に寄せた非対称の屋根構成が、長大な建物に変化を与えている。

内部の骨格は雁行、すなわち折れ曲がりながら通る廊下である。廊下が屈折するたびに視界が変わり、平屋でありながら空間に奥行きが生まれる。南側には床を備えた座敷などの居室が庭に面して並び、北側には玄関と家政部、つまり家事使用人の働く領域が配される。文化庁の解説文はこの建物を、華美さを抑えた端正かつ上質な造りと評する。

飾らないことが最上の格式となる。質実を旨とした住友の家風が、木と漆喰と瓦で表現された建築といってよい。登録基準は「造形の規範となっているもの」である。

日曜午前の公開と3棟の巡り方

所長社宅は新居浜市により内部が限定公開されている。公開日は4月から11月が毎週日曜、12月から3月が第2・第4日曜、時間は午前10時から正午まで。見学無料、無料駐車場あり。5名以上の団体は2週間前までに別子銅山文化遺産課への予約が必要で、工事状況により公開が変更される場合がある。

見学ではまず主屋の雁行する廊下をゆっくり歩き、屈折のたびに座敷越しの庭の見え方が変わることを確かめたい。北面西寄りの渡廊下の先には洋風応接室を持つ応接棟、南東には8畳の茶室が接続し、和室・洋室・茶席という三様の接客空間を一度の見学で体験できる。昭和戦前期の企業トップの暮らしをこれほど立体的に伝える遺構は全国でも貴重だろう。

同じ公開日には徒歩圏の住友化学工業幹部社宅、外国人技師東・西社宅も内部を見学でき、丘上の日暮別邸記念館とあわせて半日の散策コースとなる。

Q&A

Q別子鉱業所長社宅主屋の内部は見学できますか?
A見学できます。4月から11月は毎週日曜、12月から3月は第2・第4日曜の午前10時から正午まで公開され、見学は無料です。
Qどのくらいの規模の住宅ですか?
A主屋の建築面積は214平方メートル、応接棟・茶室を含む3棟の延床面積は349.13平方メートルで、住友山田社宅では敷地・建物とも最大規模です。
Q主屋の建築的な見どころはどこですか?
A雁行して通る廊下、南側に並ぶ床付の座敷、棟東端の南北両面に載る千鳥破風です。装飾を抑えつつ質の高さで格式を示す、住友の家風を映した意匠が読みどころです。
Q応接棟・茶室とはどのような関係ですか?
A主屋・応接棟・茶室はそれぞれ個別に登録された文化財ですが、渡廊下等で結ばれた一体の所長社宅を構成します。応接棟は洋風の接客、茶室は茶事の場として使い分けられました。

基本情報

名称旧住友鉱業株式会社別子鉱業所長社宅主屋(きゅうすみともこうぎょうかぶしきがいしゃべっしこうぎょうしょちょうしゃたくおもや)
所在地愛媛県新居浜市星越町乙1903-1
指定区分登録有形文化財(建造物) 令和2年(2020年)8月17日登録 登録番号38-0142
年代昭和12年(1937年)/平成30年(2018年)改修
構造及び形式木造平屋建、入母屋造桟瓦葺、建築面積214平方メートル
所有者新居浜市
公開状況内部公開あり(4月〜11月は毎週日曜、12月〜3月は第2・第4日曜、午前10時〜正午、無料)

参考文献

国指定文化財等データベース — 旧住友鉱業株式会社別子鉱業所長社宅主屋
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00013458
新居浜市 — 住友山田社宅4棟を限定公開しています
https://www.city.niihama.lg.jp/soshiki/dozan/sumitomoyamadashatakunitouwogenteikoukai.html
新居浜市 — 住友山田社宅2棟を仮オープンします
https://www.city.niihama.lg.jp/soshiki/dozan/sumitomoyamadashatakunitouwokario-punnsimasu.html

最終更新日: 2026.07.02