東山荘本館とは

東山荘本館は、静岡県熱海市春日町の高台に建つ木造2階建の別荘建築で、昭和8年(1933年)の建築、平成28年(2016年)8月1日に国の登録有形文化財(建造物)に登録された。相模湾を見下ろす敷地の北東寄りに位置し、熱海の別荘地・東山荘を構成する7棟の中心をなす。

建てたのは第一銀行の頭取をつとめた石井健吾である。設計と施工は清水組(現在の清水建設)が引き受けた。昭和14年(1939年)春に山下汽船の初代社長・山下亀三郎へ所有が移り、翌昭和15年(1940年)には玄関の間の奥に6畳間が加えられている。さらに昭和19年(1944年)秋、世界救世教の教祖・岡田茂吉が譲り受けた。旧東山、いまの春日町という土地の名を取って「東山荘」と名づけたのは岡田で、以後この呼称が定着した。

石井と山下の間には古い縁があった。東山荘保存会が記す来歴によれば、山下が海運業を興したばかりで資金に窮していたころ、第一銀行横浜支店にいた石井が自ら3万円を借り入れて山下に用立てたという。山下はその恩義を終生忘れず、石井が頭取を退くまで第一銀行を主取引銀行としつづけた。その石井が晩年に手放した別邸を、山下が引き継いだことになる。

登録有形文化財としての価値

東山荘本館の登録番号は22-0224、登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。同じ平成28年(2016年)8月1日には、正門・離れ・別館・茶室・蔵・物置の6棟も登録され、敷地内の7棟が一括して国の登録有形文化財となった。

昭和初期の熱海には、丹那トンネルの開通を見越して財界人の別荘が相次いで建てられた。その多くはすでに失われている。東山荘は約1,100坪(約3,320平方メートル)の敷地と建物群をまとめて保ち、本館はその中核として創建時の骨格をとどめる。昭和初期から今日までの歴史を抱えた近代和風の別荘建築という評価が、登録の理由となった。

建物の見どころ

東山荘本館は建築面積240平方メートル、屋根は瓦葺で一部を銅板で葺く。平面は南北に長い廊下が背骨となり、その東側中央だけが2階建てとなる構成である。

2階建て部分は上下階とも座敷を2室設け、周囲に縁をめぐらせる。下階は北側に玄関棟、南側に浴室を配し、生活の動線がひとつの棟の中で完結する。

全体を通じて柱や長押の木柄が細い。数寄屋造の手法を加味した細身の造作で、重厚さより軽やかさを優先した意匠である。東面には大きなガラス窓が立ち、相模湾がそのまま室内に入ってくる。昭和初期の別荘が海の眺めをどう扱ったかが、この一面によく表れている。

1階の居間、同じく1階の浴室、2階の寝室が見学の対象となっている。近年は蔵から見つかった創建期の照明器具の復元も進められ、当時の光の量に近い状態で室内を見ることができる。

見学方法とアクセス

東山荘本館を含む敷地は、東山荘保存会による予約制の公開が行われている。公開日は原則として毎月第3日曜日で、3月・5月・8月・11月は第4日曜日にあたる。開始時刻は午前11時と午後1時30分の2回、各回の定員は10名である。

拝観料は1,000円で、当日受付で支払う。ガイドが同行し、所要時間はおよそ1時間。申し込みは東山荘保存会のメールアドレス宛に、氏名・連絡先・希望日・希望時間・人数を書いて送る方式で、受信の先着順に締め切られる。令和8年(2026年)は7月と12月が休館となる。

撮影の可否については公開情報に記載がないため、当日ガイドに確認するとよい。

最寄り駅はJR熱海駅で、南東方向へ坂道を上っておよそ10分の距離にある。専用の駐車場は用意されていないので、市内の有料駐車場を使うことになる。

年に一度、秋には観月会が開かれる。令和8年(2026年)は9月25日午後5時から午後7時までの開催で、会場は東山荘本館、参加費1,000円、定員60名の予約制となっている。

Q&A

Q東山荘本館は見学できますか。公開日と拝観料を教えてください。
A予約制で公開されています。原則として毎月第3日曜日(3月・5月・8月・11月は第4日曜日)の午前11時と午後1時30分の2回、各回10名まで。拝観料は1,000円で、ガイドが付いて所要約1時間です。令和8年(2026年)は7月と12月が休館です。
Q東山荘本館は誰が、いつ建てた建物ですか。
A第一銀行頭取だった石井健吾の別邸として、昭和8年(1933年)に清水組の設計施工で建てられました。昭和15年(1940年)に山下亀三郎の代で6畳間が増築されています。
Q東山荘本館へは熱海駅からどう行きますか。駐車場はありますか。
AJR熱海駅から南東へ坂道を上って徒歩約10分です。専用駐車場はないため、市内の有料駐車場を利用してください。
Q東山荘本館の建築で注目すべき点はどこですか。
A南北の廊下の東側中央だけを2階建てとし、上下階とも座敷2室に縁をめぐらせた構成です。木柄が細い数寄屋風の造作と、東面に立てた大きなガラス窓による相模湾の眺めが見どころになります。
Q東山荘本館は同じ敷地のほかの建物と一緒に見られますか。
A公開はガイド付きで敷地をめぐる形式のため、正門・離れ・別館・茶室・蔵・物置とあわせて見学できます。7棟はいずれも平成28年(2016年)8月1日に登録有形文化財となりました。

基本データ

名称東山荘本館
所在地静岡県熱海市春日町1712-5他
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年平成28年(2016年)8月1日登録
員数1棟
寸法木造2階建、瓦葺一部銅板葺、建築面積240平方メートル
所有者宗教法人世界救世教
公開状況予約制で一般公開(原則毎月第3日曜日、拝観料1,000円)

参考文献

国指定文化財等データベース「東山荘本館」(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00011139
国登録有形文化財 東山荘「建物について」(東山荘保存会)
https://touzansou.jp/about
国登録有形文化財 東山荘「東山荘の歴史」(東山荘保存会)
https://touzansou.jp/history
国登録有形文化財 東山荘「見学申込み」(東山荘保存会)
https://touzansou.jp/application
文化財(世界救世教)
https://sekaikyuuseikyou.or.jp/culture

最終更新日: 2026.09.09