明治37年建立の土蔵

奥順土蔵は、茨城県結城市大字結城字大町にある明治37年(1904年)建立の土蔵造2階建で、平成17年(2005年)2月9日に国の登録有形文化財(建造物)に登録された。

奥順見世蔵の北背後、敷地の奥に位置する。文化庁の国指定文化財等データベースは、桁行5間・梁間2間半の東西棟とし、屋根を切妻造の桟瓦葺、建築面積を41平方メートルと記録する。登録された奥順の5棟のうち最も小さく、平面は最も細長い。

土蔵造は、木造の軸部に土を厚く塗り重ね、表面を漆喰で仕上げる構法である。防火のために発達した技術だが、厚い土壁には別の性質もある。外気の温度と湿度の変化を鈍らせるという性質だ。絹織物を在庫として抱える問屋にとって、この第二の性質こそが実用上の要点だった。

紬を保管するための建築

結城紬の糸は真綿からつくられる。煮た繭を引き伸ばして袋状の真綿とし、そこから手で引き出した繊維を、撚りをかけずに糸とする。撚りがないため糸は空気を多く含み、織り上がった布は軽く暖かい。同時に繊維が開いた状態にあるということでもあり、周囲の環境の影響を受けやすい。数か月にわたって在庫される反物は、湿気とカビ、そして湿度の急変に弱い。

運営者は、この土蔵が紬の保管に適した環境を今も保っていると説明する。機械設備の話ではなく、蓄熱・蓄湿による調湿の話である。厚い土壁は一日の変動をほぼ吸収し、季節変動もなだらかにする。軽量な構造では得られない安定である。

ここに納められてきた織物の技術自体も保護の対象となってきた。本場結城紬は、糸つむぎ・絣くくり・地機織りの3工程について昭和31年(1956年)に重要無形文化財に指定された。地機は経糸の張りを織り手の腰で調整する古式の織機である。平成22年(2010年)11月には、ユネスコ無形文化遺産の代表的な一覧表への記載が決定した。

土蔵の登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」、登録番号は08-0163で、同日に奥順の他3棟も登録されている。

壁面のディテールを読む

外壁は白漆喰塗で、細部に見どころがある。壁の腰まわりは袴状に塗り出されている。袴腰と呼ばれるこの形は、雨水を壁足元から離して落とすための工夫だ。土壁でもっとも傷みやすいのが足元だからである。

北面の2階だけは漆喰ではなく押縁下見板張とする。横板を張り、その上から縦の押縁で押さえる仕上げである。関東平野の冬の風雨をまともに受ける北面では、漆喰の補修より板の交換のほうが手を入れやすい。

南面の東寄りには戸口が開く。両開の漆喰塗戸を釣り込んだ、土蔵特有の建具である。この種の扉は厚く造り、重い軸で吊り、段欠きの框に合わせて閉じる。炎と煙が隙間をまっすぐ通り抜けないようにするためだ。南面と北面には下屋が付く。

見学については注意が必要である。土蔵は非公開で、運営者は土蔵・店舗・離れへの立ち入りを控えるよう案内している。いずれも現役の施設として使われているためだ。敷地内から外観を望むことはでき、外観の撮影に制限はない。

同じ敷地の結城紬ミュージアム「つむぎの館」(結城市大字結城12-2)は入館無料。開館時間は平日10時から16時、土曜・日曜・祝日は10時から17時で、休館日は火曜・水曜と年末年始。資料館の観覧と染織体験は有料である。JR水戸線結城駅北口から徒歩約10分、無料駐車場20台分。

Q&A

Q奥順土蔵の内部は公開されていますか。
A公開されていません。運営者は、土蔵・店舗・離れへの立ち入りを控えるよう案内しています。いずれも現役の施設として使用されているためです。外観はつむぎの館の敷地内から見学・撮影できます。
Q奥順土蔵はいつ建てられたのですか。
A明治37年(1904年)です。文化庁のデータベースと結城市の解説はいずれも同じ年を示しています。登録有形文化財への登録は平成17年(2005年)2月9日、告示は同年2月28日、登録番号は08-0163です。
Q奥順土蔵はなぜ土蔵造なのですか。
A土蔵造は密集した商家町での防火を目的に発達した構法ですが、厚い土壁は内部の温湿度を安定させる働きも持ちます。運営者は、この土蔵が紬の保管に適した環境を今も保っていると説明しています。撚りのない真綿糸で織られた結城紬は湿気の影響を受けやすいためです。
Q奥順土蔵の北面だけ仕上げが違うのはなぜですか。
A北面2階は押縁下見板張で、他は白漆喰塗です。北面は冬の風雨を強く受けるため、補修しやすい板張としたと考えられます。壁の腰は袴状に塗り出され、雨水を壁足元から離して落とす形になっています。
Q奥順土蔵はどこにあり、どう行けばよいですか。
A結城市大町の奥順の敷地内、見世蔵の北背後にあります。JR水戸線結城駅北口から徒歩約10分、東京方面からは小山駅で水戸線に乗り換えます。敷地内に無料駐車場が20台分あります。

基本情報

名称奥順土蔵(おくじゅんどぞう)
所在地茨城県結城市大字結城字大町9-2、字西の宮町1336-2
指定区分登録有形文化財(建造物) 登録番号08-0163
指定年平成17年(2005年)2月9日登録(告示は同年2月28日)
員数1棟
寸法土蔵造2階建、瓦葺、建築面積41平方メートル。桁行5間・梁間2間半の東西棟
所有者奥順株式会社(文化庁データベースに所有者名の記載なし)
公開状況外観のみ見学可。内部への立ち入りは不可

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース「奥順土蔵」
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00004503
結城市公式ホームページ 登録有形文化財「奥順株式会社」
https://www.city.yuki.lg.jp/kosodate-kyouiku/shougaigakushuu/bunkazai/bunkazai/tourokuyuukei/page003228.html
つむぎの館「土蔵」
https://www.yukitumugi.co.jp/guide/storehouse/
文化遺産オンライン 重要無形文化財「結城紬」
https://online.bunka.go.jp/special_content/intangible/135182
つむぎの館「アクセス」
https://www.yukitumugi.co.jp/access/

最終更新日: 2026.08.04