材木問屋の富を支えた塚田家住宅銘木蔵

塚田家がいかに財を成したかを一棟で説き明かすとすれば、それは屋敷地の南辺に建つ大きな蔵である。ほかの建物が家の暮らしに仕えたのに対し、この一棟は家業に仕えた。銘木、すなわち材木問屋の商品である珍しい良材を収めるために建てられ、建築面積は約152平方メートル。塚田家の蔵のなかで群を抜いて大きく、住まいではなく生業の尺度で構想された倉庫建築である。

塚田家は巴波川の川湊から木材を利根川、江戸へと送り出しており、良質の材は守るに値する財産であった。銘木蔵は大正期の建築とされ、切妻造・桟瓦葺の屋根の下に東西へ棟を通す。長く高いその容積が屋敷の南側を圧して、屋敷全体に商いの重心を据えている。

この蔵が別格である理由

平成12年(2000年)10月にまとめて登録された塚田家の五棟のなかで、銘木蔵だけは異なる印をもつ。他の四棟が「国土の歴史的景観に寄与しているもの」として登録されたのに対し、この一棟は「再現することが容易でないもの」という基準で登録された。種別も、群のなかで唯一「住宅」ではなく「産業」に分類されており、これが根は商業建築であることの公式の裏づけとなっている。

建物は壁沿いをゆっくり歩くほど応えてくれる。北の庭側には吹放しの下屋庇が屋根を外へ延ばし、西端は一段低い落棟となって入母屋屋根で納め、長い塊を変化に富んだ輪郭へとほぐす。東・南・西の三面は白漆喰塗、北面の庇上は簓子下見板張。この壁面の切り替わりは、表向きの顔から働く裏側へという用途の移り変わりをそのままたどっている。

見どころ

蔵に近づいたら、細部を見る前にまず全長へ目を走らせたい。ひたすら横に延びる水平の伸び、漆喰から下見板への移り、西端の低い入母屋の翼。これらは、巨大な容積を単なる壁で埋めるのではなく、丁寧に扱った建て手の采配である。館内では、この蔵は全国から集められた珍しい木材の展示空間として使われ、建物をほぼ本来の用途へと引き戻している。

屋敷地は塚田歴史伝説館として公開され、銘木蔵は巴波川沿いの巡路の締めくくりにあたる。川や対岸から望むと、水面の上に長い漆喰の側面がせり上がる。この町を築いた商いを記録するのが、ここのどの建物にもまして、この蔵である理由がよく分かる。

Q&A

Q銘木とは何ですか。なぜ専用の蔵が必要だったのですか。
A銘木は木目の美しい珍重される良材です。材木問屋の商品として高価であり、大きな専用の蔵を建てるだけの価値がありました。
Qこの蔵だけ登録基準が違うのはなぜですか。
A他の四棟と異なり「再現することが容易でないもの」として登録され、種別も住宅ではなく産業に分類されています。
Q他の蔵と比べてどれくらい大きいのですか。
A建築面積は約152平方メートルで、塚田家の蔵のなかで群を抜いて大きく、材木商いそのものの尺度で建てられています。
Q外観の見どころは。
A北の庭側の吹放し下屋庇、入母屋屋根の低い西の翼、三面の白漆喰塗、北面の庇上の簓子下見板張などです。

基本情報

名称塚田家住宅銘木蔵
所在地栃木県栃木市倭町2-16
指定区分登録有形文化財(建造物) 登録年月日:2000年10月18日
登録番号09-0048
年代大正期(1912〜1925年)
構造・員数土蔵造2階建、瓦葺、建築面積約152平方メートル/1棟
所有者一般財団法人塚田歴史伝説館
公開状況塚田歴史伝説館として一般公開(原則月曜休館)

References

国指定文化財等データベース — 塚田家住宅銘木蔵
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00001894
栃木市観光協会 — 塚田歴史伝説館
https://www.tochigi-kankou.or.jp/spot/tsukadarekishikan
とちぎ旅ネット — 塚田歴史伝説館
https://www.tochigiji.or.jp/spot/s3325

最終更新日: 2026.07.03