金彩鳥獣雲文銅盤 ― 漢時代の黄金の輝きを今に伝える国宝
東京都文京区目白台の閑静な住宅街に佇む永青文庫。この美術館が所蔵する国宝「金彩鳥獣雲文銅盤(きんさいちょうじゅううんもんどうばん)」は、中国・漢時代に制作された格調高い青銅の水器です。鳥獣や雲の文様が金彩で美しく描かれたこの銅盤は、1968年(昭和43年)に国宝に指定され、二千年以上の時を超えて古代中国の精緻な工芸技術と豊かな精神世界を現代に伝えています。
金彩鳥獣雲文銅盤とは
金彩鳥獣雲文銅盤は、中国・漢時代(紀元前3世紀頃〜紀元1世紀頃)に制作された青銅製の盤(ばん)です。「盤」とは、古代中国において手を清める際に水を受けるために使われた水器の一種で、儀礼の場において重要な役割を果たしました。
本品の最大の特徴は、その表面を飾る金彩の装飾です。鳥や獣などの動物文様と、流れるような雲文(うんもん)が組み合わされ、華やかでありながら格調高い意匠を形成しています。漢時代の雲気文は、道教的な神仙思想と深く結びついており、天上界や不老不死の仙人が住まう世界を象徴するものとされていました。鳥獣と雲が一体となった意匠は、天と地、現世と仙界を結ぶ古代中国人の宇宙観を体現しています。
国宝に指定された理由
金彩鳥獣雲文銅盤が1968年4月12日に国宝(考古資料)に指定された背景には、以下のような価値が認められています。
- 金彩装飾の卓越した技術:現存する漢時代の青銅器の中でも、これほど精緻で保存状態の良い金彩装飾を持つ作品は極めて稀であること。
- 図像学的な重要性:鳥獣と雲文の組み合わせは、漢時代の宇宙観や神仙思想を直接的に反映しており、当時の精神文化を理解するうえで貴重な資料であること。
- 保存状態の良好さ:二千年以上前の作品でありながら、金彩や器形が良好な状態で保たれていること。
- 日本における中国古美術コレクションの歴史的意義:細川家による収集・保存の経緯そのものが、日本と中国の文化交流の歴史を物語っていること。
細川家と永青文庫のコレクション
本品を所蔵する永青文庫は、肥後熊本54万石の大名・細川家の下屋敷跡に設立された美術館です。1950年(昭和25年)、細川家第16代当主の細川護立(ほそかわもりたつ、1883〜1970)によって設立されました。
細川護立は「美術の殿様」と称される日本有数の美術コレクターで、1926年(大正15年)のヨーロッパ歴訪の際に金彩鳥獣雲文銅盤をはじめとする多くの美術品を収集しました。護立が蒐集した中国美術は、青銅器・陶磁器・仏像など多岐にわたり、もう一つの国宝「金銀錯狩猟文鏡(きんぎんさくしゅりょうもんきょう)」(通称「細川ミラー」)もそのコレクションに含まれています。
永青文庫の所蔵品は約9万4,000点にのぼり、国宝8件、重要文化財35件を含む日本有数のコレクションです。美術工芸品のほか、細川家に伝わる甲冑・刀剣・茶道具・能道具・禅画・近代日本画など、その内容は極めて多彩です。
見どころ・鑑賞のポイント
金彩鳥獣雲文銅盤を鑑賞する機会に恵まれた際は、以下のポイントに注目してご覧ください。
- 金彩の動物文様:雲の合間を駆け巡るように描かれた鳥や獣の姿は、漢時代の人々が思い描いた天上界の生き生きとした世界を映し出しています。
- 流れるような雲文:漢時代に特徴的な雲気文は、のちの中国美術や日本美術における瑞雲文様の源流とされており、東アジア装飾史における重要なモチーフです。
- 水器としての器形:手を清める儀礼に用いられた盤の形は、古代中国の宮廷文化や祭祀の在り方を今に伝えています。
- 二千年を超える金の輝き:長い歳月を経てなお残る金彩の輝きは、当時の工芸技術の高さを物語っています。
なお、本品は永青文庫の特別展などで数年に一度公開される機会がありますので、展覧会スケジュールを事前にご確認のうえお出かけください。
周辺情報
永青文庫は、東京メトロ有楽町線「江戸川橋」駅や東西線「早稲田」駅から徒歩約15分の目白台に位置しています。緑豊かな閑静な住宅街の中にあり、都心にいながら静かな散策を楽しむことができます。
永青文庫に隣接する「肥後細川庭園」は、細川家の下屋敷の庭園跡を整備した池泉回遊式庭園で、目白台の自然景観や湧水を活かした美しい庭園です。入園無料で、桜や紅葉の季節には特に見事な景観が広がります。庭園内の「松聲閣(しょうせいかく)」では、お茶を楽しみながら休憩することもできます。
近隣には、名門ホテル「ホテル椿山荘東京」の庭園(三重塔が有名)や、神田川沿いの散歩道、早稲田大学の学生街なども広がっており、文化的な散策を存分にお楽しみいただけます。
Q&A
- 金彩鳥獣雲文銅盤はいつでも見ることができますか?
- 常設展示ではありません。永青文庫の特別展で数年に一度公開される機会がありますので、公式サイトで展覧会スケジュールをご確認ください。
- 永青文庫は外国語の案内がありますか?
- 展示の基本言語は日本語ですが、一部の展覧会では英語の解説が付く場合があります。事前にお問い合わせいただくと安心です。
- 永青文庫へのアクセス方法は?
- 東京メトロ有楽町線「江戸川橋」駅(出口1a)より徒歩約15分、東京メトロ東西線「早稲田」駅(出口3a)より徒歩約15分です。JR「目白」駅から都営バスで「ホテル椿山荘東京前」下車、徒歩約3分でもアクセスできます。
- 肥後細川庭園と合わせて訪問できますか?
- はい。肥後細川庭園は永青文庫に隣接しており、入園無料です。美術館と庭園を合わせて訪問すると、半日の文化体験コースとしてお楽しみいただけます。
- 永青文庫には他にどのような国宝がありますか?
- 永青文庫は国宝8件を所蔵しています。著名な「金銀錯狩猟文鏡」(細川ミラー)のほか、「古今伝授の太刀」の名で知られる太刀 銘豊後国行平作、鎌倉時代の螺鈿鞍など、多彩な名品が含まれています。
基本情報
| 名称 | 金彩鳥獣雲文銅盤(きんさいちょうじゅううんもんどうばん) |
|---|---|
| 種別 | 国宝(考古資料) |
| 制作地・時代 | 中国・漢時代(紀元前3世紀頃〜紀元1世紀頃) |
| 員数 | 1口 |
| 国宝指定日 | 1968年(昭和43年)4月12日 |
| 所有者 | 公益財団法人永青文庫 |
| 所在地 | 〒112-0015 東京都文京区目白台1-1-1 |
| 開館時間 | 10:00〜16:30(入館は16:00まで) |
| 休館日 | 毎週月曜日(祝日の場合は翌平日)、展示替期間、年末年始 |
| アクセス | 東京メトロ有楽町線「江戸川橋」駅(出口1a)より徒歩約15分/東京メトロ東西線「早稲田」駅(出口3a)より徒歩約15分/JR「目白」駅より都営バスで「ホテル椿山荘東京前」下車、徒歩約3分 |
| 電話番号 | 03-3941-0850 |
| 公式サイト | http://www.eiseibunko.com/ |
参考文献
- 国宝-考古|金彩鳥獣雲文銅盤[永青文庫/東京] | WANDER 国宝
- https://wanderkokuho.com/201-00865/
- 永青文庫 - Wikipedia
- https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B0%B8%E9%9D%92%E6%96%87%E5%BA%AB
- 永青文庫 | 文京区公式ウェブサイト
- https://www.city.bunkyo.lg.jp/b014/p003842.html
- 永青文庫 令和7(2025)年度 展覧会スケジュール | 美術広報
- https://www.artpr.jp/eiseibunko/2025schedule
- 永青文庫 公式サイト
- http://www.eiseibunko.com/
- 中国文様史 - Wikipedia
- https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E6%96%87%E6%A7%98%E5%8F%B2
最終更新日: 2026.03.16