建築面積53平方メートルの登録文化財

一橋大学旧門衛所は、東京都国立市中にある昭和6年(1931年)3月建設の木造平屋建の建物で、平成12年(2000年)9月26日に国の登録有形文化財(建造物)となった。

建築面積は53平方メートル。同じ構内の兼松講堂は1471平方メートルである。登録制度は面積で価値を測らないが、この差は覚えておいてよい。この建物の見どころは、規模ではなく寸法と位置から生じているからだ。

昭和初期の学校施設にとって、門衛所は実務上の必需品だった。人が詰め、出入りを記録し、用のない者を止める。関東大震災で神田一ツ橋の校舎を失った東京商科大学が国立へ移り、移転作業の途上でこの小屋を建てた。仮設の番小屋で済ませることもできたはずである。実際に建ったのは、フランス瓦を葺き、ハーフティンバーで壁を組み、側面に出窓を張り出させた建物だった。

壁面を読む

登録基準は「造形の規範となっているもの」。登録番号13-0093、第25回登録、告示は平成12年10月11日である。

構造は木造平屋建、瓦葺。文化庁の記載が力点を置くのは壁面の扱いで、現地では実際にそこを見ることになる。上部はモルタル塗とし、軸組の木部を露出させるハーフティンバー。その下に腰を巡らせ、スクラッチタイルを矢筈積とする。さらに下見板張が加わる。側面には鉄板葺の出窓が突き出す。屋根に葺かれているのは和瓦ではなくフランス瓦、すなわち平板の噛み合わせ型である。

一部屋ほどの建物に、モルタル、タイル、板、金属の四種が使われている。用途本位の付属屋の作法ではない。小規模な洋館の語彙を圧縮して大学構内に置いた、と言うほうが近い。

腰のスクラッチタイルは、この建物を周囲へつなぐ細部である。同じタイルが兼松講堂を覆い、大学通りを挟んだ東本館も覆っている。いずれも鉄筋コンクリート造の大建築だ。木造の壁に同じ材を矢筈に積んでみせたのは、キャンパスの素材を住宅規模で引用する操作だった。

立地と、残った理由

位置がすべてである。旧門衛所は2つの校門の間、西キャンパスの中心軸線上を走る緑地帯に位置し、図書館と正面から向き合って立つ。大学通りから構内に入る者は必ずこの前を通った。訪問者が最初に出会う建築であり、その家庭的で童話めいた表情には意図があった。塀の内側に閉じた官学ではなく、学園都市の一角として自らを示す構えである。

この配置は都市計画と切り離せない。国立の町は堤康次郎の構想による学園都市として計画され、駅から南へ大学通りが一直線に伸び、その中心に大学が置かれた。旧門衛所は、町の軸と大学の軸が接する地点に立っている。

門衛所としての役目は昭和42年(1967年)に終わった。現在の西守衛所が建ち、機能が移ったためである。用途を失った建物は、拡張を続けるキャンパスで真っ先に整理される。この建物は残された。のちに日本建築学会が、特色ある景観を構成しているとして、保存に価する建物に選定している。

見学は三件のうち最も気楽である。もともと外から眺めて成立する建物だからだ。構内へは守衛所で手続きのうえ立ち入れるが、建物内部は原則として関係者以外は入れない。例年2月下旬の入学試験期間には入構自体が規制される場合がある。外観の撮影に制限はない。JR中央線国立駅南口から大学通りを徒歩約10分、JR南武線谷保駅北口から徒歩約20分、または国立駅行きバスで約6分の一橋大学下車。西キャンパスに入り、中央の緑地帯沿いに進めば、図書館と向かい合う瓦屋根の小さな建物が目に入る。

Q&A

Q一橋大学旧門衛所は見学できますか。
A外観は、守衛所で手続きのうえ国立キャンパス構内に立ち入れば見学できます。内部は原則として関係者以外立ち入れません。例年2月下旬の入学試験期間には構内への入構が規制される場合があります。
Q一橋大学旧門衛所は今も門衛所として使われていますか。
A使われていません。昭和42年(1967年)に現在の西守衛所が建てられ、役割を引き継ぎました。旧建物は解体されずに残され、日本建築学会が保存に価する建物として選定しています。
Q一橋大学旧門衛所はどのような造りですか。
A木造平屋建、瓦葺の小規模な洋風建築です。外装はモルタル塗、腰にスクラッチタイルを矢筈積とし、下見板張を併用します。側面には鉄板葺の出窓を設け、屋根はフランス瓦葺のハーフティンバー仕上げです。
Q一橋大学旧門衛所は構内のどこにありますか。
A西キャンパスの中心軸線上に設けられた緑地帯で、2つの校門の間に立ち、図書館と向かい合っています。JR中央線国立駅南口から大学通りを徒歩約10分の位置です。
Q一橋大学旧門衛所の規模はどのくらいですか。
A建築面積53平方メートル、木造平屋建、瓦葺です。国立キャンパスにある三件の登録有形文化財のうち、最も小規模な建物です。

基本情報

名称一橋大学旧門衛所(ひとつばしだいがくきゅうもんえいじょ)
所在地東京都国立市中2-1
指定区分登録有形文化財(建造物) 登録番号13-0093
指定年平成12年(2000年)9月26日登録/同年10月11日告示
員数1棟
寸法木造平屋建、瓦葺、建築面積53平方メートル
所有者国立大学法人一橋大学
公開状況守衛所で手続きのうえ構内から外観見学可。建物内部は原則非公開。入学試験期間等は入構規制あり。

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁) 一橋大学旧門衛所
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00001766
文化遺産オンライン 一橋大学旧門衛所
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/177986
国立市 国登録文化財(4)
https://www.city.kunitachi.tokyo.jp/soshiki/Dept08/Div03/Sec01/gyomu/0061/0062/0067/1463551201705.html
一橋大学 国立キャンパス 交通案内
https://www.hit-u.ac.jp/guide/campus/kunitachi.html
一橋大学 施設案内
https://www.hit-u.ac.jp/guide/other/facility.html

最終更新日: 2026.08.04