千石の通りに面した米屋の店舗

伊勢五主屋は、東京都文京区千石三丁目38-9にある米穀店の店舗建築で、明治前期の木造2階建として平成15年(2003年)9月19日に国の登録有形文化財に登録された。

店名は初代・今井五郎右衛門に由来する。屋号を伊勢屋と称したことから、二つを詰めて「伊勢五」となった。正確な創業年は分かっていない。享保年間(1716〜1736年)にはすでに商いをしていたと店に伝わる。小石川の北にあたるこの一帯には大名の下屋敷が点在し、米の需要が大きかった土地である。

文化庁の国指定文化財等データベースによれば、建物は木造2階建、瓦葺、建築面積124平方メートル。主体部は切妻造・桟瓦葺とし、南側に寄棟造の平屋部が接続する。1階は通りに面して帳場を取り、その奥に6畳、8畳、4畳半の各室を配する。2階は表側を座敷、裏を物置とした。明治期の東京の商家が採った、ごく標準的な平面である。

登録有形文化財としての評価

登録有形文化財は、平成8年(1996年)施行の改正文化財保護法によって始まった制度である。国宝や重要文化財が厳選と許可制による手厚い保護を前提とするのに対し、登録は届出制と指導・助言を基本とする緩やかな仕組みで、開発によって急速に失われつつあった近代の建造物を数多く受け止めるために設けられた。文京区の説明によれば、登録の対象となるのは道路から見える外観である。

伊勢五主屋の登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」。登録番号は13-0157で、第38回登録にあたる。登録年月日は平成15年9月19日、告示は同年10月17日。北隣の伊勢五蔵も同じ日に13-0158として登録されており、二棟はひと続きの商家の構えとして評価された。だから両者は切り離さずに見るのが筋である。

この評価の重みは、戦災の地図を思い浮かべると分かりやすい。昭和20年(1945年)の空襲で東京の木造商店街の多くが焼け、文京区が公表する国登録文化財は区内全域で65件にとどまる。千石一帯は焼け残った。明治前期の米屋が、低い軒と格子窓を保ったまま商いを続けている例は、この街では珍しい。

店の前に立って見るもの

通りの向かい側から眺めると、まず軒の低さに気づく。出桁造りといって、軒を受ける桁を柱筋より外へ持ち出し、持ち送りで支える町家の構法である。屋根が道の上まで張り出すため、店先は日中の大半が影になる。2階には格子窓が並ぶ。太い材をそのまま見せる構えで、装飾らしい装飾はほとんど付かない。

目に入るすべてが明治のものではない。店の説明では昭和34年(1959年)頃に改造が行われ、正面は硝子戸となり、土間の部分が広がった。今かかっている看板もそのときに新調されたという。使われ続ける建物は手が入る。登録の制度はその変化を否定しない。

買い物のために中へ入ったなら、奥の機械にも少し目を向けてほしい。伊勢五は循環式の精米機を使っている。玄米を一度で仕上げず、繰り返し機械に通して少しずつ削る古い方式で、当然ながら時間はかかる。米粒に傷をつけずに精米できるというのが店の言い分で、この型の機械が日々の商売に使われている例は少なくなった。

訪ねる際の実務的な話をしておく。伊勢五は資料館ではなく営業中の店である。拝観料も見学コースもない。各種の案内によれば営業時間は月曜から土曜のおよそ8時30分から18時30分、駐車場はない。外観は道路からいつでも見られ、写真も自由に撮れる。店内は商いの場なので、帳場や精米機にレンズを向ける前に一声かけたい。最寄り駅は都営三田線の千石駅で、A4出口から徒歩6分から10分ほど。東京メトロ丸ノ内線の茗荷谷駅、新大塚駅からはいずれも15分ほど歩く。千石二丁目には同じく登録有形文化財の進開屋と日本聖公会東京諸聖徒教会礼拝堂があり、続けて歩ける距離にある。

Q&A

Q伊勢五主屋は見学できますか。内部に入れますか。
A伊勢五主屋は営業中の米穀店で、資料館ではありません。拝観料も見学コースもなく、買い物客として営業時間内に入る形になります。営業時間は各種案内で月曜から土曜のおよそ8時30分から18時30分とされています。外観は道路からいつでも見られます。個人商店ですから臨時休業もありえます。遠方から訪ねるなら電話で確認しておくと確実です。
Q伊勢五主屋はいつ建てられ、いつ登録有形文化財になりましたか。
A文化庁の国指定文化財等データベースは明治前期(1868〜1911年)の建築とし、文京区の一覧は「明治初期」と記しています。登録年月日は平成15年(2003年)9月19日、告示は同年10月17日、登録番号は13-0157です。建物より商売のほうがはるかに古く、享保年間から米を扱ってきたと店に伝わります。
Q伊勢五主屋の写真撮影はできますか。
A道路から見える外観は自由に撮影できます。登録の対象もこの外観です。店内は私有の営業スペースですから、撮る前に店の方に一声かけてください。ほかのお客が写り込まないよう配慮も必要です。道幅の狭い住宅街ですので、歩道に三脚を据えるのは避けたほうがよいでしょう。
Q伊勢五主屋へのアクセスは。最寄り駅はどこですか。
A最寄りは都営三田線の千石駅で、A4出口から徒歩6分から10分ほどです。東京メトロ丸ノ内線の茗荷谷駅、新大塚駅からはそれぞれ15分ほど歩きます。所在地は東京都文京区千石三丁目38-9。店に駐車場はないため、電車で向かうのが現実的です。
Q伊勢五主屋と伊勢五蔵はどう違いますか。
A同じ住所にある別々の登録物件です。主屋(13-0157)は通りに面した木造2階建の店舗で、建築面積124平方メートル。蔵(13-0158)はその北隣に建つ土蔵造2階建の道具蔵で、建築面積25平方メートル、外壁を石造風に目地を切ったモルタルで仕上げています。両者とも平成15年9月19日の登録で、二棟あわせてひとつの商家の構えを成しています。

基本情報

名称伊勢五主屋(いせごしゅおく)
所在地東京都文京区千石三丁目38-9
指定区分登録有形文化財(建造物)/登録番号 13-0157/登録基準「国土の歴史的景観に寄与しているもの」
指定年登録年月日 平成15年(2003年)9月19日、登録告示 同年10月17日(第38回登録)
員数1棟
寸法木造2階建、瓦葺、建築面積124平方メートル。主体部は切妻造・桟瓦葺、南に寄棟造の平屋部が接続
所有者文化庁データベースに所有者名の記載なし。米穀店「伊勢五」が使用
公開状況営業中の店舗。外観は道路から常時見学可。店内は営業時間内(各種案内で月曜から土曜のおよそ8時30分〜18時30分)に買い物客として立ち入り可。駐車場なし

参考文献

国指定文化財等データベース|伊勢五主屋(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00003526
国指定文化財等データベース|伊勢五蔵(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00003527
文化遺産オンライン|伊勢五主屋
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/179746
伊勢五 公式サイト
https://isego.jp/
国登録文化財|文京区
https://www.city.bunkyo.lg.jp/b047/p004380.html
登録有形文化財(建造物)|文化庁
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/yukei_kenzobutsu/toroku_yukei.html

最終更新日: 2026.08.22