石造灯台として日本一の塔高
出雲日御碕灯台は、島根県出雲市大社町日御碕にある明治36年(1903年)竣工の洋式灯台で、令和4年(2022年)2月9日に国の重要文化財に指定された。塔高は43.65メートル、海面から灯火までの高さは63.30メートルを測る。
着工は明治33年(1900年)。約3年の工期を経て、明治36年4月1日に初点灯した。背景には海運事情の変化がある。明治32年(1899年)7月、浜田・境の両港が開港場に指定されて外国貿易が活発化し、日本海側にも大型の沿岸灯台が必要になっていた。
設計は逓信省航路標識管理所の技師、石橋絢彦。明治初期に外国人技師が担った灯台建設は、この頃には日本人技師の手に移っていた。文化庁は本灯台を、日本人技師が手掛けた石造灯台の到達点と評価している。
注目したいのは壁の造りである。明治初期の洋式灯台を指導した英国人技師ブラントンは、高い塔が地震の揺れを吸収できるよう二重円筒構造を考案していた。石橋はこれを異なる二種の材で組み立てた。外壁は切石積み、内壁は煉瓦積み。両者を咬み合わせ、間に空隙を設ける。塔内にはこの接合部を観察できるよう一部を露出させた箇所がある。石材は旧八束郡森山(現在の松江市美保関町森山)で切り出された硬質のものが使われた。
指定の理由と評価
文化庁の指定基準は二項目が挙げられている。技術的に優秀なもの、そして歴史的価値の高いもの。種別は近代/産業・交通・土木、指定番号は02735で、員数は1基。周囲の囲障1所が附として指定に含まれる。構造及び形式等は「金属製、石造及び煉瓦造、建築面積97.46㎡」と記録されている。
評価は二段階で進んだ。平成25年(2013年)にまず登録有形文化財となり、その9年後の令和4年2月に重要文化財へと引き上げられた。登録と指定は制度上まったく別のもので、登録は現役で使われ続ける建造物を緩やかに保護する枠組み、指定は国家的に重要な文化財を強い規制のもとで守る枠組みである。日御碕灯台は前者から後者へ移った。
価値の一端は塔頂にある。灯籠に収まるのは最大級の第1等レンズで、これを現用する灯台は国内に5基しかない。光度は48万カンデラ、光達距離は21海里(約39キロメートル)。明治36年の初点灯以来120年以上にわたって光を絶やしておらず、海上保安庁が所有する現役の航路標識である。
地域への寄与も評価の対象となった。島根半島の東端に立つ美保関灯台と対をなし、両者が山陰沿岸を挟むことで夜間航行の安全が確保された。この2基はいずれも、平成10年(1998年)に国際航路標識協会が選定した「世界の歴史的灯台100選」に日本から選ばれた5基に含まれている。
登る灯台としての見どころ
出雲日御碕灯台は内部を登れる数少ない参観灯台のひとつで、螺旋階段は163段ある。踏面は上に行くほど狭まり、途中に踊り場はない。登り切ると灯籠のまわりを一周する回廊に出る。北半分は日本海が占め、晴れた日には遠く隠岐諸島が姿を見せることもある。南に目を移せば中国山地の稜線が連なる。
参観時間は令和8年(2026年)3月1日に改定され、昼の休止時間が入るようになった。午前は通年9時から12時まで。午後は3月から9月の土日祝が13時から17時、同期間の平日と10月から2月は13時から16時30分となる。入場は終了時刻の20分前まで。参観寄付金は中学生以上300円で、小学生以下は無料。障害者手帳をお持ちの方とその同行者1名も無料である。強風や荒天のときは参観が中止される場合があり、内部改修による休止も過去に実施されている。訪問前に管理する公益社団法人燈光会へ確認しておくと確実だ。
塔に隣接する灯台資料展示室は無料で見学できる。模型やパネルで灯台の構造と歴史をたどる展示になっている。
外観の撮影に制限はない。黒い岩肌と紺碧の海を背にした白亜の塔が、多くの人の目当てだろう。西面に光が回る午後遅い時間が撮影には向く。夜間には日を決めて、カラーのライトアップも行われている。
アクセスはJR出雲市駅から一畑バスで45分から60分、「日御碕灯台」停留所下車、徒歩約5分。出雲大社からは車で約20分と近く、両方をまとめて半日で回る行程が組みやすい。県営駐車場は第一65台、第二175台でいずれも無料。灯台の南、徒歩10分から15分の場所には朱塗りの社殿で知られる日御碕神社がある。灯台の北へ延びる海岸遊歩道では、約1600万年前の溶岩が冷えて生じた柱状節理を間近に見ることができ、ウミネコの繁殖地として知られる経島も望める。
Q&A
- 出雲日御碕灯台は登れますか。参観料はいくらですか。
- 登れます。163段の螺旋階段で灯籠まわりの回廊まで上がれます。参観寄付金は中学生以上300円、小学生以下は無料です。障害者手帳をお持ちの方と同行者1名も無料です。隣接する灯台資料展示室は無料で見学できます。
- 出雲日御碕灯台の2026年の参観時間を教えてください。
- 令和8年3月1日から昼の休止をはさむ時間帯に変わりました。午前は通年9時から12時。午後は3月から9月の土日祝が13時から17時、同期間の平日および10月から2月は13時から16時30分です。入場は終了時刻の20分前まで。荒天時は参観が中止になることがあります。
- 出雲日御碕灯台はなぜ日本一の高さと言われるのですか。
- 塔高43.65メートルが石造灯台として国内最高で、明治36年の完成以来その記録が破られていないためです。隆起海食台地の上に立つため、海面から灯火までは63.30メートルになります。文化庁のデータベースでは塔高を「44m」と丸めて記載しています。
- 出雲日御碕灯台が重要文化財に指定されたのはいつですか。
- 令和4年(2022年)2月9日です。平成25年(2013年)に登録有形文化財となっていましたが、技術的に優秀なもの、歴史的価値の高いものという二つの基準により重要文化財へ指定変更されました。周囲の囲障1所が附として指定に含まれます。
- 出雲大社から出雲日御碕灯台へはどう行きますか。
- 車で約20分です。バスの場合は一畑バスの出雲大社連絡所から約20分、「日御碕灯台」下車、徒歩約5分。JR出雲市駅からは同じ路線で45分から60分かかります。県営駐車場は第一65台、第二175台で無料です。
基本情報
| 名称 | 出雲日御碕灯台(いずもひのみさきとうだい) |
|---|---|
| 所在地 | 島根県出雲市大社町日御碕字秘台原山1478番 |
| 指定区分 | 重要文化財(近代/産業・交通・土木)/指定番号 02735/附 囲障1所 |
| 指定年 | 令和4年(2022年)2月9日/平成25年(2013年)登録有形文化財 |
| 員数 | 1基 |
| 寸法 | 金属製、石造及び煉瓦造、建築面積97.46㎡/塔高43.65m/灯火の高さ 海面上63.30m |
| 所有者 | 国(海上保安庁) |
| 公開状況 | 参観可。午前9時〜12時、午後は13時〜17時(3〜9月の土日祝)または13時〜16時30分(3〜9月の平日および10〜2月)。入場は終了20分前まで。参観寄付金 中学生以上300円。外観撮影自由。 |
参考文献
- 国指定文化財等データベース(文化庁)/出雲日御碕灯台
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/102/00005388
- 文化遺産オンライン/出雲日御碕灯台
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/557205
- 文化庁/近代の文化遺産の保存と活用・灯台
- https://www.bunka.go.jp/kindai/todai/015/index.html
- 公益社団法人 燈光会/出雲日御碕灯台
- https://www.tokokai.org/tourlight/tourlight12/
- 出雲市/出雲日御碕灯台 参観時間の変更について(令和8年3月1日〜)
- https://www.city.izumo.shimane.jp/www/contents/1769395852119/index.html
- 出雲観光協会/出雲日御碕灯台
- https://izumo-kankou.gr.jp/677
最終更新日: 2026.08.21