文政5年創業、玉川上水のほとりに残る5件の登録文化財

田村酒造場は、東京都福生市福生にある文政5年(1822年)創業の酒蔵で、敷地に建つ酒造蔵・前蔵・雑蔵・旧水車小屋及び脇蔵・石垣の5件が、平成25年(2013年)12月24日にそろって国の登録有形文化財に登録された。清酒「嘉泉(かせん)」の醸造元で、読みは「たむらしゅぞうじょう」。文化庁のデータベースでは5件とも「田村酒造」を冠した名称で登録されている。

蔵元の公式サイトによると、田村家は武蔵国多摩郡福生村に代を重ねてきた旧家で、最も古い文書には1600年代後半に先祖「半十郎 豊真」の名が見える。江戸時代の福生村は幕府の直轄領で、田村家は名主などの村役を務めた。酒造りを始めたのは半十郎から数えて9代目の勘次郎(賢真)で、名主を継いだのちの文政5年(1822年)、46歳のときである。

酒銘の「嘉泉」は、敷地内の井戸に酒造りに向く中硬水を得た喜びから付けられたという。勘次郎は周辺の酒造家や酒店と「店内関係」と呼ばれる結びつきをつくり、武州一帯にその店蔵が24を数えた。この仕組みは明治36年(1903年)に役目を終えている。田村酒造場は大量に造る道を選ばず、造り高を1500石前後に保ってきたと蔵元は説明している。

なお、同じ福生市内にある旧ヤマジュウ田村家住宅は、所在地も登録も別の物件である。

田村酒造場の5件と建てられた順

田村酒造場の5件は、第76回の登録で登録番号13-0308から13-0312として登録された。登録基準はいずれも「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。建てられた順に並べると次のとおり。

  • 酒造蔵:文政5年(1822年)頃。大正7年(1918年)と大正11年(1922年)に増築された、酒造場の中心をなす平屋の大きな土蔵
  • 前蔵:文政13年(1830年)。もとは米蔵で、5件のうち最も小さい2階建の土蔵
  • 雑蔵:文久2年(1862年)。前蔵の南に接して建つ2階建の土蔵
  • 石垣:大正後期(1919年〜1926年)。玉川上水に面して総延長145メートルにわたって積まれた石垣
  • 旧水車小屋及び脇蔵:昭和前期(1926年〜1945年)。水車の力で精米していた木造の小屋と土蔵がひと続きになった建物

江戸後期の創業期から昭和前期まで、100年あまりのあいだに建てられた建物と工作物が同じ敷地にそろっている。酒を仕込む大きな蔵、米蔵だった蔵、水車で米を搗いた小屋、そして上水に面した石垣が一続きに残り、造り酒屋の敷地がどう整えられてきたかをたどることができる。

田村酒造場の敷地と玉川上水

田村酒造場の敷地は東側で玉川上水に接している。蔵元によれば、屋敷の中を流れる「田村分水」は隣の玉川上水から取水したもので、かつては地域の生活用水や田畑を潤す灌漑用水として使われた。

文化庁の解説文から5件の位置を拾うと、酒造蔵は敷地の北西に建ち、南から本蔵・中蔵・新蔵が連なって、本蔵の南に八角形の煉瓦煙突が立つ。前蔵は敷地の南西に棟を東西に向けて建ち、雑蔵はその南に接して棟を南北に向ける。敷地東面の中央、上水から引いた導水路の脇に旧水車小屋及び脇蔵があり、石垣は敷地の東面から南面の東寄りまで矩折れにのびて、東面の中央に出入口を開いている。

建物の4件はいずれも土蔵造を主体とし、旧水車小屋及び脇蔵だけが北半を木造とする。屋根は酒造蔵・前蔵・雑蔵が瓦葺、旧水車小屋及び脇蔵が鉄板葺である。いちばん大きいのは建築面積912平方メートルの酒造蔵、いちばん小さいのは34平方メートルの前蔵になる。

田村酒造場の見学:予約制の蔵見学ツアー

田村酒造場の敷地と登録文化財は、予約制の蔵見学ツアーで案内される。ツアーは専門のガイドとともに敷地内の文化財や酒蔵を巡る約60分の内容で、そのあと併設の日本酒体験施設「&KASEN(アンドカセン)」のSAKE-Barで飲み比べをする。料金は1人2,700円(税込)からで、定員は10名、1名から申し込める。

開催は火曜日から金曜日が午前10時30分からの1回、土日祝日は午前10時30分と午後3時30分からの2回で、所要は1時間から1時間半ほど。予約は&KASENのネット予約から行い、当日は開始の10分前までに&KASEN SHOPで受付を済ませ、代金を前払いする。未成年者と車などを運転する人には酒が提供されない。

&KASENは、レストランとバー、ショップを備えた田村酒造場の新しい施設で、2026年に福生市福生609で開業した。ツアーと食事を組み合わせたコースは7月1日からしばらく受け付けを休んでおり、食事も希望する場合は別々に予約するよう案内されている(2026年9月30日確認)。敷地内での撮影の可否は公式の案内に記載がないため、当日ガイドに確かめたい。

田村酒造場への行き方

田村酒造場の最寄りはJR青梅線の福生駅で、蔵元の案内では駅から徒歩約10分、ツアーの案内では10分から15分ほどとされている。所在地は蔵元の表記で「福生市福生626」、文化庁のデータベースでは「福生市大字福生字奈賀626-1他」となっている。

車の場合は、圏央道の日の出インターチェンジから約4キロメートルで、駐車場は正門前にある。ツアーのあとに飲み比べがあるので、酒を飲むつもりなら電車で訪れたい。

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁):田村酒造酒造蔵
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00009723
国指定文化財等データベース(文化庁):田村酒造前蔵
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00009724
国指定文化財等データベース(文化庁):田村酒造雑蔵
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00009725
国指定文化財等データベース(文化庁):田村酒造旧水車小屋及び脇蔵
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00009726
国指定文化財等データベース(文化庁):田村酒造石垣
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00009727
福生市郷土資料室:福生の指定文化財
https://www.museum.fussa.tokyo.jp/fussa/cultural
田村酒造場:歴史
https://www.tamurashuzojo.com/page/history
田村酒造場:蔵案内(蔵元概要・アクセス)
https://www.tamurashuzojo.com/page/kura
田村酒造場:酒蔵ツアー予約
https://www.tamurashuzojo.com/page/tour
田村酒造場:日本酒体験施設「&KASEN」
https://www.tamurashuzojo.com/page/and-kasen
&KASEN ネット予約(お店からのお願い・プラン)
https://booking.ebica.jp/webrsv/plan_search/e014252901/37748

最終更新日: 2026.09.30

基本情報

名称田村酒造場
所在地東京都福生市大字福生字奈賀626-1他
指定登録有形文化財 5件
座標35.74146, 139.32038