元大工町に残る綿商の屋敷

高砂屋(城下町とっとり交流館)は、鳥取県鳥取市元大工町にある明治時代の商家で、店舗棟・住居棟・蔵三棟・脇門の6件が平成19年(2007年)7月31日に国の登録有形文化財に登録された。

「高砂屋」は、この家で綿を商っていた池内家の屋号である。館を運営する鳥取市文化財団の公式サイトによれば、池内家は明治の中ごろに材木町から元大工町へ移り、薬研堀(やげんぼり)と呼ばれた堀の沿いに店を構えた。のちに所有者が建物と敷地を鳥取市へ寄贈し、市はこれを町の記憶として使い続ける場と位置づけて「城下町とっとり交流館」に整えた。館の愛称には、旧所有者の屋号がそのまま残されている。

家の来歴はさらにさかのぼる。鳥取市の観光サイトは、池内家を藩主池田光政とともに鳥取へ移ってきた御用商人の家と紹介している。移住の年は資料によって記述が異なるため、ここでは藩政のはじめごろと伝わるにとどめておく。

鳥取の中心市街地は、昭和18年(1943年)の鳥取地震と昭和27年(1952年)の鳥取大火で大きな被害を受けた。高砂屋はその両方をくぐり抜けた数少ない商家の一つで、店と蔵と庭がひとまとまりで残っている点に価値があると、同じ観光サイトは説明する。

残るまでの道筋は平坦ではなかった。平成15年(2003年)、市民団体「市民文化財ネットワーク鳥取」は、元大工町通りの都市計画道路の拡幅によって池内邸が取り壊されかねないとして、鳥取市議会に保存を求める請願を出している。請願書には、屋敷が戦後の道路拡幅ですでに一度曳き家されていたことも記されている。文化庁のデータベースは店舗棟と住居棟に平成16年(2004年)の曳家を記録しており、2棟はこのときの工事を経て現在の位置に落ち着いたとみられる。

屋敷の配置

通りに面して、東に店舗棟、西に住居棟が並ぶ。2棟で一つの主屋をなし、店舗棟が商いの場、住居棟が暮らしの場にあたる。住居棟は店舗棟より半間ほど通り側へ張り出して建っているので、正面に立つと2棟の軒の線がわずかにずれて見える。

店舗棟の東側、通りに近い位置には脇門が付き、通りと主屋東側の庭とを仕切っている。主屋と同じ瓦で葺かれているため、離れて見ると主屋の端がそのまま門につながっているように映る。

主屋の裏手には庭があり、その奥に土蔵が3棟並ぶ。東端の蔵一は東西2棟の土蔵を正面の蔵前でつないだ形式で、中央の蔵二、西寄りの蔵三と続く。蔵一と蔵三が妻入、あいだの蔵二だけが平入という組み合わせで、蔵の向きが交互に変わることが屋敷の裏手に変化を与えている。

6件の建築年は明治初期から昭和初期までに散らばっている。住居棟と蔵三が明治初期、店舗棟と蔵一が明治後期、蔵二と脇門が昭和初期で、商いを続けながら建て足していった屋敷の履歴が、そのまま建物の年代に表れている。

登録された6件

6件はいずれも平成19年(2007年)7月31日付の第55回登録で、登録番号は31-0104から31-0109まで連番になっている。登録基準は6件とも「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。鳥取県の「とっとり文化財ナビ」は、これを「店舗棟ほか5棟」として一つの項目にまとめている。

  • 店舗棟(31-0104): 明治後期、木造2階建、建築面積135平方メートル
  • 住居棟(31-0105): 明治初期、木造2階建、建築面積85平方メートル
  • 蔵一(31-0106): 明治後期、土蔵造2階建、建築面積70平方メートル
  • 蔵二(31-0107): 昭和初期、土蔵造2階建、建築面積23平方メートル
  • 蔵三(31-0108): 明治初期、土蔵造2階建、建築面積18平方メートル
  • 脇門(31-0109): 昭和初期、木造、間口2.6メートル

個々の建物の構造や見どころは、それぞれの棟のページにまとめてある。

開館時間とアクセス

城下町とっとり交流館 高砂屋は公益財団法人鳥取市文化財団が運営しており、入館は無料である。開館は午前9時から午後5時までで、入館は午後4時30分まで。毎週月曜日(祝日の場合は翌日)と、12月29日から1月3日までの年末年始が休館になる。2階の有料貸室だけは午後9時まで使える。

館内には土間・帳場・休憩室などがあり、2階の和室・板の間・茶室・納戸は貸室として使われている。鳥取市の観光サイトによれば、2階の部屋は予約が入っていなければ無料で見学できる。敷地の蔵は「放哉蔵」「家財蔵ギャラリー」の名で展示に使われており、内容は時期によって入れ替わる。

撮影の可否について、公式サイトに定めは見当たらない。通りから外観を撮るぶんには支障はないと考えられるが、館内や蔵の展示を撮る場合は受付でひとこと確かめておきたい。

JR鳥取駅からは北へ歩いて約20分、車なら約10分の距離である。鳥取駅から100円循環バス「くる梨」の赤コースに乗り、「掛出町」で降りると徒歩約5分で着く。敷地には駐車場もある。

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁) 高砂屋(城下町とっとり交流館)店舗棟
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00006278
国指定文化財等データベース(文化庁) 高砂屋(城下町とっとり交流館)住居棟
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00006599
国指定文化財等データベース(文化庁) 高砂屋(城下町とっとり交流館)蔵一
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00006279
国指定文化財等データベース(文化庁) 高砂屋(城下町とっとり交流館)蔵二
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00006297
国指定文化財等データベース(文化庁) 高砂屋(城下町とっとり交流館)蔵三
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00006298
国指定文化財等データベース(文化庁) 高砂屋(城下町とっとり交流館)脇門
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00006299
とっとり文化財ナビ(鳥取県) 高砂屋(城下町とっとり交流館)店舗棟ほか5棟
https://db.pref.tottori.jp/bunkazainavi.nsf/bunkazai_web_view/B8A2F402710916A74925796F00080023
城下町とっとり交流館 高砂屋 高砂屋の歴史
https://www.tbz.or.jp/takasagoya/guide/history/
城下町とっとり交流館 高砂屋 施設のご案内
https://www.tbz.or.jp/takasagoya/guide/
城下町とっとり交流館 高砂屋 施設貸出について
https://www.tbz.or.jp/takasagoya/guide/lend/
鳥取市観光サイト 城下町とっとり交流館 髙砂屋
https://www.torican.jp/spot/detail_1163.html
市民文化財ネットワーク鳥取 緊急請願書「旧岡崎邸・池内邸の保存対策について」(平成15年)
https://shiminbunkazai.net/seigan.html

最終更新日: 2026.09.25

基本情報

名称高砂屋(城下町とっとり交流館)
所在地鳥取県鳥取市元大工町1
所有者鳥取市
指定登録有形文化財 6件
座標35.49898, 134.23707