新宮城跡の南に建つ洋風校舎
旧羽根学園熊野高等経理学校校舎は、和歌山県新宮市丹鶴二丁目にある昭和12年(1937年)建築の学校建築で、令和6年(2024年)12月3日に登録有形文化財として登録された。木造一部鉄骨造の2階建、瓦葺一部鉄板葺、建築面積215平方メートル。新宮城跡の南に位置し、通りに西面して建つ。
羽根学園熊野高等経理学校は、簿記や珠算といった商業の実務を教えた学校である。校舎は昭和40年(1965年)に東半部が増築され、現在は株式会社HANEヘリテージが所有する。旧羽根学園熊野高等経理学校校舎は、戦前の商業系学校の校舎が建築当初の姿をとどめて残る例として登録された。
登録の理由
登録番号は30-0376。登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。文化庁の記録は、玄関ポーチに四つ玉算盤の欄間を掲げ、開学時の息吹を伝える洋風校舎と説明している。校舎の用途が意匠そのものに表れている点が、この建物の評価の中心にある。
登録有形文化財は、原則として建設後50年を経過した建造物を対象とする届出制の制度で、許可制の指定制度とは別の仕組みにあたる。旧羽根学園熊野高等経理学校校舎の登録は令和6年7月19日の文化審議会答申を経て、同年12月3日に告示された。和歌山県新宮市では珍しい近代の学校建築の登録例である。
入母屋造の屋根と下見板張りの外壁
構造は木造の一部を鉄骨造とする2階建で、屋根は入母屋造の桟瓦葺、一部を鉄板で葺く。外壁は下見板張りで、正面には玄関ポーチが張り出す。和風の屋根に洋風の外壁という取り合わせは、昭和初期の学校建築によく見られるものである。
平面は、1階が中廊下形式で、廊下の両側に部屋を並べる。2階は仕切りのない一室の大教室とする。多人数へ一斉に教える授業の形が、そのまま2階の床面に残っていることになる。東半部は昭和40年(1965年)に増築された鉄骨造の別棟で、木造部分との境が構造の違いとして読み取れる。
建築面積は215平方メートル。学校建築としては小さく、単一の校舎で完結する規模である。
玄関ポーチの四つ玉算盤の欄間
旧羽根学園熊野高等経理学校校舎で最も目を引くのは、玄関ポーチに掲げられた欄間である。意匠は四つ玉算盤、つまり上段に玉を一つ、下段に玉を四つ並べる形式の算盤をかたどる。通りに面した入口の真上にこれが据えられているので、建物の前に立てば何を教える学校だったかが一目で分かる。
珠算は、電子計算機が普及する以前、銀行や会計の仕事に就くための基礎技能だった。校舎の意匠に算盤を選んだことは、その技能を看板に掲げるという意思表示でもある。文化庁はこの欄間について、開学時の息吹を伝えるものと記している。
見学方法
旧羽根学園熊野高等経理学校校舎は営利法人が所有する民有の建物で、公開施設ではない。拝観料や開館時間にあたるものはなく、内部の公開についての案内も公的な資料では確認できない。
校舎は通りに西面して建つため、玄関ポーチと四つ玉算盤の欄間、下見板張りの外壁、入母屋造の屋根は道路から見ることができる。敷地内へ立ち入ることは想定されていない。公開の予定や特別な見学の可否は、新宮市観光協会に問い合わせるのが確実である。
最寄り駅はJR紀勢本線の新宮駅で、北へ徒歩10分ほどの距離にある。建物のすぐ北は国史跡の新宮城跡で、丹鶴二丁目はその城跡の南に広がる一帯にあたる。
Q&A
- 旧羽根学園熊野高等経理学校校舎はいつ建てられましたか。
- 昭和12年(1937年)の建築です。昭和40年(1965年)に東半部が鉄骨造で増築されています。
- 玄関ポーチの欄間は何をかたどったものですか。
- 四つ玉算盤です。上段に玉を一つ、下段に玉を四つ並べる形式の算盤をかたどっており、簿記や珠算を教えた学校であることが意匠に表れています。
- 旧羽根学園熊野高等経理学校校舎はどの文化財区分ですか。
- 登録有形文化財(建造物)です。令和6年(2024年)12月3日に登録番号30-0376で登録されました。指定ではなく登録の制度にあたります。
- 旧羽根学園熊野高等経理学校校舎は見学できますか。
- 民有の建物で公開施設ではありません。通りに西面して建つため外観は道路から見られますが、内部公開の案内は公的資料では確認できません。新宮市観光協会に問い合わせるのが確実です。
- 建物の構造と規模を教えてください。
- 木造一部鉄骨造の2階建で、屋根は瓦葺一部鉄板葺、建築面積は215平方メートルです。1階は中廊下形式、2階は一室の大教室とします。
基本情報
| 名称 | 旧羽根学園熊野高等経理学校校舎 |
|---|---|
| 所在地 | 和歌山県新宮市丹鶴2丁目7683-51 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) |
| 指定年 | 令和6年(2024年)12月3日登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 建築面積215平方メートル |
| 所有者 | 株式会社HANEヘリテージ |
| 公開状況 | 民有。外観のみ道路から |
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース 旧羽根学園熊野高等経理学校校舎
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00015215
- 文化遺産オンライン 旧羽根学園熊野高等経理学校校舎
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/620649
- 文化庁 文化審議会の答申(登録有形文化財(建造物)の登録)令和6年7月19日
- https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai//shokai/yukei_kenzobutsu/pdf/94102101_01.pdf
- 新宮市観光協会
- https://www.shinguu.jp/
最終更新日: 2026.09.19