山本家住宅内蔵二
この商家の二棟の内蔵は、互いに棟の向きを直交させて建つ。隣の内蔵一が南北に通るのに対し、こちらは東西に向け、棟方向をあえて違える。建物の間に立つまで気づきにくいが、そこに立つと偶然ではなく計らいだと分かる。
和歌山県海南市阪井、棕櫚・薬種商「山本勝之助商店」の住宅に残る二棟の内蔵のうちの一棟。隣の内蔵一と同じく、店の表構えの奥に置かれ、家の私的な物資を納める蔵である。建てられたのは大正中期、1912年から1925年の間で、隣の内蔵一とほぼ同じか少し後にあたる。
隣の蔵との違い
内蔵一の東に建つ土蔵造2階建で、桁行3間半、梁間2間。同じく花崗岩の高い石垣を基礎とし、外壁は白漆喰塗、腰を竪羽目板張とする点も共通する。小屋組はやはり屋根の勾配に沿わせる登梁である。
違いは葺材と妻にある。この蔵は隣の重い本瓦葺ではなく、軽い一枚物の桟瓦で葺く。戸口は南に開き、鉄板葺の小庇をかける。そして妻に母屋形を見せる。すなわち母屋の段々の輪郭を妻壁に表しており、簡素な実用建築のなかにささやかな仕上げをほどこしている。
登録の理由と価値
内蔵二は平成19年(2007)10月2日に登録有形文化財(建造物)となった(登録番号30-0125)。平成8年に導入された登録制度は、重要文化財に伴う許可制ではなく届出と指導・助言を通じて近代建造物を守る緩やかな保護で、幅広い近年の建物が記録されぬまま消えるのを防ぐためのものである。この蔵は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」の基準を満たす。
内蔵一と対で見れば、山本家が敷地の奥をどう構成したかが見えてくる。交差する棟、揃えた花崗岩の基礎と白壁、瓦と妻のわずかな違い。これらは、簡素な蔵の群れが互いにどう収まるかを考えた施主の手の跡であって、一棟ごとの自立だけを見ていたのではない。その配慮こそ、名高い一棟ではなく一群を残す意味である。
見どころ
二棟の内蔵を並べて見比べたい。棟は互いに交わり、屋根は一方が本瓦、こちらは軽い桟瓦。妻には隣にない母屋形が現れる。そして両者を地面から持ち上げる、揃いの花崗岩の基礎へと目を落とす。違いは小さいが、丁寧な造り手が意図して付けた種類のものである。
住宅の他の建物と同じく、ここは営業中の商家で見学施設ではない。蔵は街路から眺められるが、内部は常時公開されていないため、訪れる人が目にするのは街並みである。
Q&A
- 内蔵一とはどこが違うのですか。
- 棟が東西に通って隣と直交し、屋根は本瓦ではなく軽い桟瓦で葺きます。妻に母屋形を見せる点も、内蔵一にはない仕上げです。
- 土蔵造とは何ですか。
- 厚い土壁を防火のために積み上げ、白漆喰で仕上げる蔵の構法です。火災や盗難から貴重品を守るために古くから用いられました。
- いつ建てられたのですか。
- 大正中期、1912年から1925年の間です。隣の内蔵一とほぼ同じ時期、商店の最も栄えた頃にあたります。
- 見学はできますか。
- 敷地は公開施設ではなく営業中の商家です。蔵の外観は街路から眺められますが、内部は常時公開されていません。
基本情報
| 名称 | 山本家住宅内蔵二(やまもとけじゅうたくうちぐらに) |
|---|---|
| 所在地 | 和歌山県海南市阪井679他 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) |
| 登録年月日 | 平成19年(2007)10月2日登録、同月22日告示/登録番号30-0125 |
| 員数 | 1棟 |
| 年代 | 大正中期(1912〜1925) |
| 構造及び形式 | 土蔵造2階建、瓦葺、建築面積28㎡ |
| 所有・用途 | 山本勝之助商店(営業中の商家) |
| 交通 | JR海南駅からオレンジバス約10分「亀池公園」下車、または海南東ICから国道370号を車で約5分 |
参考文献
- 国指定文化財等データベース(文化庁)/山本家住宅内蔵二
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00006391
- 山本勝之助商店 公式サイト(沿革・屋号「かねいち」)
- https://yamamotokatsunosuke.com/about.html
- 一般社団法人 和歌山県建築士会 遺産めぐり「山本勝之助商店」
- https://www.wakayama-aba.jp/isan_meguri/山本勝之助商店
最終更新日: 2026.06.22