山本家住宅石塀

この商家の構えのなかで、通りすがりの人の記憶に残るのは石塀である。国道沿いに18メートル余り続き、高さは約1.8メートル。和歌山産の青石、すなわち緑泥片岩を人頭大の石として用い、乱石積に積み上げる。石肌の青みは光と天候によって表情を変え、屋根よりもむしろこの低い青灰色の塀が、この街路の眺めを決めている。

和歌山県海南市阪井、棕櫚・薬種商「山本勝之助商店」の住宅に属し、明治39年(1906)頃の築造。敷地南面の東半に築かれ、主屋座敷部の庭園と国道とを画す。門の袖塀の南端から始まり、東へと延びる。

石と積み方

材は紀州の青石、緑泥片岩である。冷たい青緑の色合いから、和歌山では古くより塀や庭石に重んじられてきた。ここでは石を凡そ人頭大に取り、乱石積とする。整層に切り揃えるのではなく、目で合わせて積むため、塀のどの一続きも同じ表情を繰り返さない。基底の幅は約40センチメートル、上端は笠木形に仕上げて雨を切る。

この種の塀は、素朴な普請であると同時に、控えめな表構えでもある。庭の境を街道に対して保ち、なおかつ富裕な家の縁にふさわしく見えねばならない。青石はその双方を果たし、土地の石を土地の手法で扱ったものであるがゆえに、塀は山本家の屋敷をその立つ場所へと結びつけている。

登録の理由と価値

石塀は平成19年(2007)10月2日に登録有形文化財(建造物)となった(登録番号30-0129)。平成8年に導入された登録制度は、重要文化財の許可制ではなく届出と指導・助言を通じて近代の建造物を守る緩やかな保護であり、幅広い近年の建造物が記録されぬまま失われるのを防ぐためのものである。石塀は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」の基準を満たし、それを屋敷のどの部分にも劣らず素直に体現している。

価値は街路への効きにある。境の塀が建築として語られることは稀だが、この一基は表構え全体の調子を定め、明治の商人が土地の石を用いて、自家の境をいくらかの構えをもって画した様を示している。門・主屋・蔵とともに登録されることで、家が街道に向けて示した境界を一続きのものとして完結させている。

見どころ

登録された各要素のなかで、最も気軽に味わえるのがこの石塀である。街路から見られるように造られ、それ以上を求めない。石の青緑の色味と、一日のうちに移ろうさまを見たい。乱石積のふぞろいな合わせ目には、石を石に目で合わせた手のあとがあり、上端には笠木形の仕上げがある。門の南袖塀から東へ塀をたどり、背後の黒漆喰の門と白い蔵とあわせて、一続きの表構えとして読むのがよい。

塀は見学施設ではなく営業中の商家に面しているが、街道沿いの境界である以上、それを味わうのにふさわしい場所はほかでもない公道のうえである。

Q&A

Q青石とは何ですか。
A和歌山で古くより切り出されてきた緑泥片岩です。冷たい青緑の色合いから、この地では庭石や境の塀に好んで用いられてきました。
Q塀の大きさはどれくらいですか。
A延長は18メートル余り、高さは約1.8メートル、基底の幅は約40センチメートルで、上端は笠木形に仕上げられています。
Q乱石積とは何ですか。
A切り揃えていない不定形の石を、整った層に積むのではなく目で合わせて積む手法です。これにより塀の表面に変化が生まれます。
Q近くで見ることはできますか。
Aはい。塀は公道に沿って続き、そこから見られるように造られているため、住宅の登録された各部のうち最も自由に見られるものです。

基本情報

名称山本家住宅石塀(やまもとけじゅうたくいしべい)
所在地和歌山県海南市阪井679他
指定区分登録有形文化財(建造物)
登録年月日平成19年(2007)10月2日登録、同月22日告示/登録番号30-0129
員数1基
年代明治39年(1906)頃
構造及び形式石造、乱石積(和歌山産青石)、延長18m、高さ約1.8m
所有・用途山本勝之助商店(営業中の商家)
交通JR海南駅からオレンジバス約10分「亀池公園」下車、または海南東ICから国道370号を車で約5分

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁)/山本家住宅石塀
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00006393
山本勝之助商店 公式サイト(沿革・屋号「かねいち」)
https://yamamotokatsunosuke.com/about.html
一般社団法人 和歌山県建築士会 遺産めぐり「山本勝之助商店」
https://www.wakayama-aba.jp/isan_meguri/山本勝之助商店

最終更新日: 2026.06.22