田中家住宅(山形市陣場)とは

田中家住宅は、山形県山形市陣場にある農家の屋敷で、明治9年(1876年)の道具蔵や明治前期の主屋、昭和9年(1934年)頃の門及び塀など5件が、平成20年(2008年)10月23日に登録有形文化財となった。

屋敷は通りの北側に敷地を構えている。通りに面して門と塀が東西にのび、その奥に茅葺の主屋が南を向いて建つ。文化庁は主屋を、格式を備えた近代の農家建築の例として紹介しており、門及び塀の解説では、この表構えが街道沿いの伝統的な町並みをかたちづくっていると述べている。

登録されたのは、主屋、座敷蔵、漬物蔵、道具蔵、門及び塀の5件である。住まいの中心となる主屋に、客を迎える座敷をしつらえた蔵、台所まわりの漬物蔵、農具や家財をしまう道具蔵が寄り添い、通りとの境を門と塀が区切る。山形盆地の農家が、暮らしと仕事と収蔵をひとつの敷地の中でどう組み立てていたかを、まとまりとして見ることができる。

年代の重なり

田中家住宅の5件を文化庁データベースの年代で並べると、明治の前半から昭和の初めまで、半世紀あまりをかけて屋敷が整えられてきたことがわかる。

  • 主屋:明治前期。昭和47年(1972年)に改修
  • 座敷蔵:明治前期
  • 漬物蔵:明治前期。昭和30年(1955年)に改修
  • 道具蔵:明治9年(1876年)
  • 門及び塀:昭和9年(1934年)頃

建築年がはっきり記録されているのは道具蔵だけで、ほかの3棟は「明治前期」とされる。主屋と3棟の蔵が明治の前半におおむねそろい、昭和の初めに通りに面した門と塀が整えられた、という順序が読み取れる。主屋はいまも茅葺の屋根を残し、その上に鉄板をかぶせた姿で建っている。

蔵どうしのつながりも見逃せない。文化庁の解説によれば、座敷蔵はまっすぐな材で組んだ独特の小屋組をもち、道具蔵も同じ架構を備えている。同じ時期に、同じ考え方で建てられた蔵である可能性を示す手がかりといえる。

敷地の配置

田中家住宅の屋敷構えは、通りに面した門と塀、その奥の主屋、主屋に連なる2棟の蔵、少し離れた道具蔵という形にまとまっている。文化庁の解説をもとに位置関係を整理する。

通りに面して:門と塀

門は主屋の正面に立つ腕木門で、間口は4.3メートル。門の両脇の袖塀から塀が東西にのび、敷地の内側では庭を仕切る塀へと続いて、延長は合わせて68メートルに及ぶ。

敷地の前寄り:主屋

主屋は敷地の前寄りに南を向いて建つ。建築面積は201平方メートルで、5件のなかでとびぬけて大きい。

主屋の背後:座敷蔵と漬物蔵

座敷蔵は主屋の奥、納戸の北面に蔵前を介してつながる。漬物蔵は主屋の北面の西寄りに接し、南の妻面に主屋からの出入口をもつ。どちらも主屋とひと続きの配置である。

主屋の南東:道具蔵

道具蔵だけは主屋から離れ、南東の道路脇を流れる水路に接して建つ。出入口は西面の中央に設けた庇の下にある。

暮らしに使う蔵は主屋の背後につなげ、道具の蔵は通り寄りに置く。家の中の動きと、外での作業の動きを分けて考えた配置と読むことができる。

登録の内容

田中家住宅の5件は、平成20年(2008年)10月23日付の第61回登録で登録有形文化財(建造物)となり、同年11月10日に告示された。登録番号は06-0106から06-0110までの連番である。登録基準は、主屋と座敷蔵が「造形の規範となっているもの」、漬物蔵・道具蔵・門及び塀が「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。

  • 主屋(06-0106):木造平屋一部2階建、茅葺(鉄板仮葺)、建築面積201平方メートル
  • 座敷蔵(06-0107):土蔵造2階建、鉄板葺、建築面積53平方メートル
  • 漬物蔵(06-0108):土蔵造平屋建、鉄板葺、建築面積10平方メートル
  • 道具蔵(06-0109):土蔵造平屋建、鉄板葺、建築面積21平方メートル
  • 門及び塀(06-0110):門は木造、銅板葺、間口4.3メートル。塀は木造、鉄板葺及び銅板葺、延長68メートル

登録基準が二つに分かれている点は興味深い。主屋と座敷蔵は意匠の手本として、残る3件は通りの景観を支える建物として評価されている。屋敷の中心と、それを取り巻く付属の建物とで、文化財としての見られ方が違うことがわかる。

見学とアクセス

田中家住宅は個人が所有する住宅で、2026年10月時点で一般公開や見学会の案内は確認できなかった。敷地や建物の内部には立ち入れない。通りに面した門と塀は外から目に入る位置にあるが、住んでいる方の迷惑にならないよう、敷地に入らず、長く立ち止まらないよう配慮したい。

建物の姿は、文化庁の国指定文化財等データベースで確かめられる。各棟のページに写真一覧があり、現地を訪ねる前に見ておくとよい。

所在地は山形市陣場1-22ほかで、JR北山形駅から西北西へ直線でおよそ2.3キロメートルの位置にある。この距離は地図上の位置から求めた目安であり、公式のアクセス案内は出ていない。

名称について

田中家住宅の読みは「たなかけじゅうたく」。同じ名称の登録文化財は大阪府、三重県、兵庫県などにもあるため、このサイトでは「山形市陣場」を添えて区別している。文化庁のデータベースでは、5件がそれぞれ「田中家住宅主屋」「田中家住宅座敷蔵」のように、屋敷名に棟名を続けた名称で登録されている。

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース「田中家住宅主屋」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00007335
文化庁 国指定文化財等データベース「田中家住宅座敷蔵」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00007336
文化庁 国指定文化財等データベース「田中家住宅漬物蔵」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00007337
文化庁 国指定文化財等データベース「田中家住宅道具蔵」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00007338
文化庁 国指定文化財等データベース「田中家住宅門及び塀」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00007339
文化遺産オンライン「山形市」の文化財一覧
https://online.bunka.go.jp/heritages/search/prefecture_cd:6/city_code:6201

最終更新日: 2026.10.07

基本情報

名称田中家住宅(山形市陣場)
所在地山形県山形市陣場1-22他
指定登録有形文化財 5件
座標38.27738, 140.31123