羽前絹練株式会社とは

羽前絹練株式会社(うぜんけんれん)は、山形県鶴岡市新海町で明治39年(1906年)から絹織物の精練を続けている工場で、大正後期から昭和18年(1943年)ごろにかけて建てられた7棟が、令和6年(2024年)12月3日に登録有形文化財となった。敷地は鶴ヶ岡城跡の西方にあり、7棟はいまも作業場として使われている。

創立は明治39年6月である。鶴岡市の資料によれば、翌年に創業した羽前織物株式会社が輸出向けの絹織物を製造販売するにあたり、その精練工程を引き受けたのが始まりだった。大正13年(1924年)3月には鶴岡織物株式会社系の精練会社を吸収し、地域の精練を一手に担う会社となった。

戦後、各地の精練業者が合成繊維の加工へ転じて市場が縮むなかでも、羽前絹練株式会社は絹織物の精練にとどまり、国内各地からの注文を受けてきた。染色部門にも進み、伝統的な絹織物のほか、海外向けスカーフなどの特殊加工も手がけている。

精練という工程と7棟の役割

精練は、織り上がった絹織物から、繭に由来するセリシンなどの不純物を取り除く工程である。石鹸とアルカリ剤を入れた湯で生地を煮ると、絹はなめらかになり光沢が出る。養蚕、製糸、製織のあとに置かれる工程で、ここを経ないと絹本来の手ざわりにならない。

羽前絹練株式会社の7棟は、この流れに沿って役割が分かれている。

  • 事務所及び仕立棟:反物を木枠に巻き取り、精練に回す準備をする
  • 精練棟:生地を水槽で煮て不純物を除く
  • 染色棟(旧染色室及び旧汽罐室):精練を終えた生地を染める
  • 第一仕上棟:すすぎ、脱水、乾燥を行う
  • 第二仕上棟:乾燥で縮んだ生地を整える
  • 検査棟:目で検査し、出荷用に分ける
  • 土蔵:製品を保管する

湯を使う精練棟と染色棟、乾燥を担う第一仕上棟、第二仕上棟には、いずれも屋根の頂に越屋根が載る。蒸気を逃がし、光を採るための小屋根で、羽前絹練株式会社の工場らしい屋根並みはこの越屋根の連なりがつくっている。

7棟の登録と配置

羽前絹練株式会社の7棟は、令和6年(2024年)7月19日の文化審議会の答申を経て、同年12月3日の文部科学省告示第162号でそろって登録有形文化財となった。登録番号は06-0222から06-0228までの連番である。これにより、鶴岡市内の国の登録有形文化財は26件になった。

文化庁のデータベースが示す年代と規模は次のとおり。土蔵だけが「造形の規範となっているもの」、ほかの6棟は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」の基準で登録された。

  • 事務所及び仕立棟:昭和15年(1940年)、昭和中期増築。木造平屋一部2階建、建築面積705平方メートル
  • 精練棟:大正後期。木造平屋建、建築面積368平方メートル
  • 染色棟(旧染色室及び旧汽罐室):昭和4年(1929年)、昭和8年(1933年)ごろと昭和中期に増築。木造平屋建、建築面積238平方メートル
  • 第一仕上棟:大正後期、昭和前期増築。木造平屋建、建築面積391平方メートル
  • 第二仕上棟:大正後期、昭和中期増築。木造平屋建、建築面積368平方メートル
  • 検査棟:昭和18年(1943年)ごろ。木造平屋建、建築面積357平方メートル
  • 土蔵:大正後期、昭和15年(1940年)移築。木造2階建、建築面積75平方メートル

データベースは大正後期を1919年から1926年の幅で記している。山形県の解説によれば、敷地の北東に事務所があり、その南に仕立棟が続く。西には精練棟、染色棟、第一仕上棟、第二仕上棟が並び、南東に検査棟と土蔵が配される。検査棟だけは地番が新海町21-3で、ほかの6棟は21-5ほかにある。

日本遺産「サムライゆかりのシルク」

羽前絹練株式会社は、平成29年(2017年)に認定された日本遺産「サムライゆかりのシルク 日本近代化の原風景に出会うまち鶴岡へ」の構成文化財の一つでもある。明治維新のあと、旧庄内藩士が松ヶ岡を開墾して蚕室を建てたことから、鶴岡は絹の産地として育った。日本遺産のストーリーは、養蚕から製糸、製織、精練、捺染までの工程が一つの地域に残る例として鶴岡を紹介し、明治時代に創業した工場で続く精練をその工程の一つに数えている。

日本遺産の案内は、創業当時からの釜を用いた精練がいまも行われていると伝える。

見学と行き方

羽前絹練株式会社は稼働中の工場で、7棟とも作業場として使われている。一般向けの工場見学の受付は、同社や鶴岡市、日本遺産の案内では確認できなかった(2026年9月28日時点)。敷地の内側には入らず、道路から外観を眺めるにとどめたい。

道路からいちばんよく見えるのは、敷地北東の事務所である。日本遺産の案内は、黒い板塀と門脇の松が一体となった純和風の構えを見どころに挙げている。

羽前絹練株式会社の案内によれば、JR羽越本線の鶴岡駅から約3キロ、車で約10分、山形自動車道の鶴岡インターチェンジからも約3キロ、庄内空港からは約16キロ、車で約25分の距離にある。

参考文献

国指定文化財等データベース 羽前絹練株式会社事務所及び仕立棟(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00015132
国指定文化財等データベース 羽前絹練株式会社精練棟(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00015133
国指定文化財等データベース 羽前絹練株式会社染色棟(旧染色室及び旧汽罐室)(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00015134
国指定文化財等データベース 羽前絹練株式会社第一仕上棟(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00015135
国指定文化財等データベース 羽前絹練株式会社第二仕上棟(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00015136
国指定文化財等データベース 羽前絹練株式会社検査棟(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00015137
国指定文化財等データベース 羽前絹練株式会社土蔵(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00015138
羽前絹練株式会社精練棟ほか6件が国登録有形文化財に登録されました(鶴岡市)
https://www.city.tsuruoka.lg.jp/bunka/rekishi/uzenkenren.html
羽前絹練株式会社と国登録について答申された建造物(鶴岡市、PDF)
https://www.city.tsuruoka.lg.jp/bunka/rekishi/uzenkenren.files/uzenkenren.pdf
羽前絹練株式会社精練棟ほか6件(山形県、PDF)
https://www100.pref.yamagata.jp/documents/19483/touroku_uzen.pdf
羽前絹練株式会社(日本遺産ポータルサイト、文化庁)
https://japan-heritage.bunka.go.jp/ja/culturalproperties/result/2980/
サムライゆかりのシルク ストーリー(日本遺産ポータルサイト、文化庁)
https://japan-heritage.bunka.go.jp/ja/stories/story040/
羽前絹練株式会社(日本遺産 サムライゆかりのシルク、鶴岡市日本遺産推進協議会)
https://samurai-yukarino-silk.jp/cultural_properties/uzenkenren/

最終更新日: 2026.09.28

基本情報

名称羽前絹練株式会社
所在地山形県鶴岡市新海町21-5他
所有者羽前絹練株式会社
指定登録有形文化財 7件
座標38.72865, 139.81733