芦安堰堤とは

芦安堰堤は、山梨県南アルプス市芦安芦倉の御勅使川(みだいがわ)に、大正5年(1916年)に着工した砂防堰堤で、日本で初めてセメントを用いた砂防堰堤とされ、平成9年(1997年)9月3日に国の登録有形文化財(建造物)となった。読みは「あしやすえんてい」。大正13年(1924年)から15年(1926年)に嵩上げされた(文化庁)。

文化庁の記録では、下段重力式・上段アーチ式の堰堤で、堤高22.6メートル、堤長66.6メートル。登録番号は19-0017、所有者は山梨県である。

暴れ川・御勅使川の砂防

土木学会によれば、御勅使川は富士川水系釜無川の右支川で、平均勾配7.2パーセントの急流荒廃河川である。糸魚川-静岡構造線に近く、崩壊した土砂が国内屈指の広大な扇状地をつくってきた。明治15年(1882年)のムルデルらの建言で内務省直轄の砂防工事が始まり、空石積の堰堤が築かれたが、度重なる土砂流出で多くが壊れた。

山梨県によれば、既設の空石積施設はほとんどが破壊・流失し、永久に信頼できるものではないことが問題となり、より強固な施設としてコンクリートを用いた砂防堰堤が計画されたと考えられる。南アルプス市によれば、内務省直轄砂防事業として施工され、昭和7年(1932年)から山梨県が移管を受けて管理している。

登録有形文化財としての価値

芦安堰堤は「造形の規範となっているもの」として登録された。文化庁の解説は、内務省の直営工事でつくられた国内初のセメント使用の砂防堰堤で、上段アーチ式・下段重力式という類例の少ない構造をもち、練石積の表面仕上げなどに時代の特徴がよく表れていると評価する。平成15年(2003年)には「御勅使川堰堤群」の一つとして土木学会選奨土木遺産となった(土木学会)。

見どころ

山梨県によれば、大正7年(1918年)に竣工した重力式の堰堤は、その夏の出水でほぼ満砂となり、貯砂能力が限界に達した。地盤が強固で、嵩上げによる効果が大きいことから、既設の重力式堰堤を袖の天端まで嵩上げし、その上にアーチ式堰堤を載せる工事が行われた。アーチの基礎が既設堰堤から外れる部分は鉄筋を縦横に配して安全を図った。

芦安堰堤では、重力式の下段の上に弧を描くアーチ式の上段が重なる姿を見ることができる。

見学について

芦安堰堤は南アルプス市芦安芦倉の山間にある現役の砂防施設である。富士の国やまなしインフラガイドによれば、中部横断自動車道白根インターチェンジから約12キロメートル。

渓流内の施設のため、大雨の後は近づかず、見学は安全な場所から行いたい。問い合わせ先は山梨県中北建設事務所(055-224-1660)。

Q&A

Q芦安堰堤はいつ造られましたか?
A大正5年(1916年)に着工し、大正13年(1924年)から15年(1926年)に嵩上げされました(文化庁)。
Q何が「日本初」なのですか?
A日本で初めてセメントを用いた砂防堰堤とされます(文化庁、南アルプス市)。
Q構造の特徴は?
A下段が重力式、上段がアーチ式という類例の少ない構造です(文化庁)。
Qなぜ嵩上げされたのですか?
A竣工した年の出水でほぼ満砂となり、貯砂能力が限界に達したためです(山梨県)。
Q芦安堰堤が登録有形文化財になったのはいつですか?
A平成9年(1997年)9月3日です。

基本情報

名称芦安堰堤(あしやすえんてい)
所在地山梨県南アルプス市芦安芦倉字大曽利地内
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年平成9年(1997年)9月3日登録
員数1基
寸法下段重力式・上段アーチ式堰堤、堤高22.6メートル、堤長66.6メートル
所有者山梨県
公開状況屋外の砂防施設、安全な場所から見学

参考文献

芦安堰堤(国指定文化財等データベース)
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00000287
登録文化財 芦安堰堤(山梨県砂防課)
https://www.pref.yamanashi.jp/sabo/114_004.html
芦安堰堤(南アルプス市)
https://www.city.minami-alps.yamanashi.jp/docs/ashiyasuentei.html
芦安堰堤(富士の国やまなしインフラガイド)
https://www.yamanashi-infra.jp/infrastructure/148/
御勅使川堰堤群―源・藤尾・芦安堰堤(土木学会選奨土木遺産)
https://committees.jsce.or.jp/heritage/node/271

最終更新日: 2026.10.11