働く人の一日を支えた34平方メートル

葛利毛織工業株式会社旧浴場及び便所は、愛知県一宮市木曽川町玉ノ井にある昭和30年(1955年)頃建設の附属施設で、2020年(令和2年)8月17日に登録有形文化財(建造物)に登録された。木造平屋建、切妻造桟瓦葺、建築面積34平方メートル。工場の南東、男子寮の東に建つ。

建物は通路をはさんで西と東に分かれる。西側が浴場で、その内部がさらに東西に区切られ、東を男性用、西を女性用の浴室とした。東側には便所が南北に並ぶ。外壁は漆喰塗、腰はモルタル塗という仕上げで、湿気と水を受ける場所に合わせた材が選ばれている。

建設からまもない昭和30年代(1955年から1964年)に増築があり、便所は当初の3室から2室分が加えられた。葛利毛織工業株式会社旧浴場及び便所の規模の変化は、そのまま敷地で暮らす人数の変化を映している。

生活の設備が文化財になるということ

登録の基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」。工場や事務所と並んで、この浴場と便所も同じ日に登録有形文化財となった。葛利毛織工業株式会社旧浴場及び便所の登録番号は23-0554である。

浴場や便所は消耗が早く、建て替えの対象になりやすい。改修されて姿を変えるか、不要になって撤去されるかのどちらかをたどることが多い。工場や住宅と一緒に残っている例は限られる。

男女を分けた浴室が用意されていたことは、住み込みで働く人に女性が含まれていたことを示す。主屋の北側が当初女子寮だったという伝えとも符合する。葛利毛織工業株式会社旧浴場及び便所は、工場の設備一覧ではなく、そこで暮らした人の構成を語る資料でもある。

今の使われ方に残る痕跡

浴場としての役目はすでに終わっている。一宮市観光協会の解説によれば、かつての男子浴室は物置に、女子浴室は糸を置く場所に変わった。タイルや排水の勾配が残るなかに糸が積まれている状態で、名称に「旧」が付く理由がここにある。

外から見ると、切妻の小さな屋根と白い壁、その足元のモルタルという三段の構成が分かる。工場の鋸屋根や主屋の寄棟と比べると、装飾のない実用一点の姿である。

南北に並ぶ便所は、増築の前後で建具や仕上げに違いが出ていることがある。壁の継ぎ目や瓦の色みの差を追うと、どこまでが昭和30年(1955年)頃で、どこからが増築かの見当がつく。

見学方法とアクセス

葛利毛織工業株式会社旧浴場及び便所は稼働中の工場敷地の奥にあり、常時公開はされていない。愛知県公式観光サイトによれば、事前に相談すれば時期によって敷地内を見学できる場合がある。申し込みは2週間前までに電話(0586-87-3323)へ。2名から3名の少人数から10名程度まで、11名以上は要相談で、土曜と日曜は休業日のため原則受け入れていない(2026年8月31日確認)。

撮影についての公開規定は確認できなかった。現在は物置と糸置き場として使われているため、申し込みの際に併せて相談したい。

名鉄尾西線の玉ノ井駅から徒歩約2分。車では東海北陸自動車道の一宮西出口から約15分、名神高速道路の一宮インターチェンジから約25分。敷地の南東寄りに位置し、道路からは見えない。

Q&A

Q葛利毛織工業株式会社旧浴場及び便所は見学できますか。
A工場敷地の奥にあるため常時公開はしていません。2週間前までに電話(0586-87-3323)で相談すれば、時期により敷地内の見学が認められる場合があります。土日は休業日です。
Q葛利毛織工業株式会社旧浴場及び便所はどんな建物ですか。
A昭和30年(1955年)頃の木造平屋建、切妻造桟瓦葺で、建築面積は34平方メートルです。西側が浴場、東側が便所で、浴場は東を男性用、西を女性用に分けていました。
Q葛利毛織工業株式会社旧浴場及び便所は今どう使われていますか。
A浴場としては使われていません。かつての男子浴室は物置に、女子浴室は糸を置く場所に転用されています。
Q葛利毛織工業株式会社旧浴場及び便所はいつ登録有形文化財になりましたか。
A2020年(令和2年)8月17日に登録有形文化財(建造物)に登録されました。登録番号は23-0554です。
Q葛利毛織工業株式会社旧浴場及び便所へのアクセスは?
A名鉄尾西線の玉ノ井駅から徒歩約2分です。車では東海北陸自動車道の一宮西出口から約15分、名神高速道路の一宮インターチェンジから約25分です。

基本データ

名称葛利毛織工業株式会社旧浴場及び便所
所在地愛知県一宮市木曽川町玉ノ井字宮前1
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年2020年(令和2年)登録
員数1棟
寸法木造平屋建、桟瓦葺、建築面積34平方メートル
所有者非公表(民間所有)
公開状況通常非公開、事前相談により見学可

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース 葛利毛織工業株式会社旧浴場及び便所
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00013407
一宮市 一宮市内の文化財
https://www.city.ichinomiya.aichi.jp/katsuryokusouzou/hakubutsukan/1044092/1024202/1036232.html
愛知県公式観光サイト Aichi Now 葛利毛織工業株式会社
https://aichinow.pref.aichi.jp/spots/detail/3024/
一宮市観光協会 毛織物産地「尾州」のいま・むかし のこぎり屋根のある風景 vol.1
https://www.138ss.com/feature/detail/11/

最終更新日: 2026.08.31