木曽川の左岸に鋸の歯を並べた織物工場

葛利毛織工業株式会社工場は、愛知県一宮市木曽川町玉ノ井にある昭和7年(1932年)頃建設の毛織物工場で、2020年(令和2年)8月17日に登録有形文化財(建造物)に登録された。木造平屋建、桟瓦葺、建築面積563平方メートルを測る。

敷地の北寄りに東西へ長く伸びる建物で、屋根は鋸の歯のような三角が4つ連なる。この一山を1スパンと数える。小屋組はトラスで、床に立つ柱を減らして広い作業面を確保している。内部は間仕切りのない一室。独立柱を避けるように織機が置かれ、機械の間を人と糸が行き来する。

会社の創業は大正元年(1912年)と伝えられる。当初はこのあたりの機屋の多くと同じく絹綿交織絣を織っていたが、昭和7年(1932年)にションヘル織機を導入して毛織物へ転じた。工場の建設もこの時期にあたり、当初は2スパンだった。昭和20年(1945年)頃に南側へ2スパンが継ぎ足され、昭和30年代(1955年から1964年)には東西へも広げられて、いまの4スパンになっている。

登録の理由と、産地のなかでの位置

登録の基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」。同じ敷地に建つ事務所、主屋、離れ、男子寮、旧浴場及び便所、土蔵、原糸倉庫、倉庫と合わせて9棟が同じ日に登録された。葛利毛織工業株式会社工場はその中心にあたる建物で、登録番号は23-0549である。

愛知県西部から岐阜県南部にかけての一帯は尾州と呼ばれる毛織物の産地で、住宅地のあいだに鋸屋根の工場が点在してきた。廃業や建て替えでその数は減り続けている。葛利毛織工業株式会社工場が評価されたのは、形が残っているからではなく、建設時と同じ紳士服地の生産にいまも使われているためである。

登録有形文化財は所有者の届出を基本とする緩やかな制度で、外観の4分の1を超えない範囲であれば改修も認められる。稼働中の工場が保護の枠に入りやすいのはそのためで、生産を止めずに建物を守る道筋がここにある。

北の高窓から入る光と、低速で回る織機

鋸屋根の垂直に近い面には高窓が並び、光は北からだけ入る。南からの直射を入れると、朝と昼と夕方で糸の色が違って見えてしまう。生地の色を目で確かめる仕事にとって、一日じゅう変わらない北の光は道具に近い。葛利毛織工業株式会社工場の内部が明るいわりに影の少ない見え方をするのは、この屋根の形によるものである。

床に据えられているのはションヘル織機と呼ばれる古い型の力織機で、昭和7年(1932年)の導入以来使われてきた。一宮市観光協会の解説によれば、いま一般的な織機の5分の1から9分の1ほどの速度でしか動かない。糸に無理をかけないぶん、織り上がった生地は手織りに近い柔らかさになる。

外から眺めるなら、屋根の稜線を数えてみるとよい。2スパン、2スパン、そして東西の増築と、建てられた順に山の高さや瓦の色みがわずかに違う。継ぎ足しの跡がそのまま会社の成長の記録になっている。

見学方法とアクセス

葛利毛織工業株式会社工場は稼働中の生産現場であり、いつでも入れる観光施設ではない。愛知県公式観光サイトによれば、事前に相談すれば時期によって生産現場を見学できる場合がある。申し込みは2週間前までに電話(0586-87-3323)で行い、受け入れは2名から3名の少人数から10名程度まで。11名以上は相談が必要で、土曜と日曜は休業のため原則として受け入れていない(2026年8月31日確認)。

撮影の可否について公開された規定は見当たらない。稼働中の機械と製品が並ぶ場所なので、申し込みの際に併せて確認したい。

最寄り駅は名鉄尾西線の玉ノ井駅で、徒歩約2分。車の場合は東海北陸自動車道の一宮西出口から約15分、名神高速道路の一宮インターチェンジから約25分である。門の外の道路からは主屋と事務所の妻面が見え、その奥に鋸屋根の稜線がのぞく。敷地の中は私有地なので、無断で立ち入らないこと。

Q&A

Q葛利毛織工業株式会社工場は見学できますか。申し込み方法は?
A常時公開はしていませんが、事前相談により見学できる場合があります。2週間前までに電話(0586-87-3323)で相談し、2名から3名の少人数から10名程度まで受け入れています。土日は休業日です。
Q葛利毛織工業株式会社工場へのアクセスは?最寄り駅からどのくらいですか。
A名鉄尾西線の玉ノ井駅から徒歩約2分です。車では東海北陸自動車道の一宮西出口から約15分、名神高速道路の一宮インターチェンジから約25分です。
Q葛利毛織工業株式会社工場の鋸屋根はいくつありますか。
A現在は4スパンです。昭和7年(1932年)頃の建設当初は2スパンで、昭和20年(1945年)頃に南へ2スパン、昭和30年代(1955年から1964年)に東西へ増築されました。
Q葛利毛織工業株式会社工場はいつ登録有形文化財になりましたか。
A2020年(令和2年)8月17日に登録有形文化財(建造物)に登録されました。登録番号は23-0549で、同じ敷地の8棟と同時の登録です。
Q葛利毛織工業株式会社工場では今も織物を生産していますか。
A生産を続けています。昭和7年(1932年)に導入されたションヘル織機で紳士服地を織っており、建物は建設時と同じ用途で使われています。

基本データ

名称葛利毛織工業株式会社工場
所在地愛知県一宮市木曽川町玉ノ井字宮前1
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年2020年(令和2年)登録
員数1棟
寸法木造平屋建、桟瓦葺、建築面積563平方メートル
所有者非公表(民間所有)
公開状況通常非公開、事前相談により見学可

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース 葛利毛織工業株式会社工場
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00013402
文化遺産オンライン 葛利毛織工業株式会社工場
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/380577
一宮市 一宮市内の文化財
https://www.city.ichinomiya.aichi.jp/katsuryokusouzou/hakubutsukan/1044092/1024202/1036232.html
愛知県公式観光サイト Aichi Now 葛利毛織工業株式会社
https://aichinow.pref.aichi.jp/spots/detail/3024/
一宮市観光協会 毛織物産地「尾州」のいま・むかし のこぎり屋根のある風景 vol.1
https://www.138ss.com/feature/detail/11/

最終更新日: 2026.08.31