敷地でいちばん古い、江戸末期の蔵

葛利毛織工業株式会社土蔵は、愛知県一宮市木曽川町玉ノ井にある江戸時代末期(1830年から1868年頃)建設の土蔵造2階建で、2020年(令和2年)8月17日に登録有形文化財(建造物)に登録された。切妻造桟瓦葺、建築面積55平方メートル。敷地の中央西寄り、工場と離れのあいだに建つ。

北面と東面に下屋を廻し、本体の白い壁を庇が守る形をとる。内部は1階も2階も間仕切りのない一室で、内壁には竪板を張る。本体は家財を納める蔵として、下屋の部分は工場の倉庫として使われている。

会社の創業が大正元年(1912年)と伝えられることを思えば、葛利毛織工業株式会社土蔵はそれより半世紀以上前の建物である。工場も事務所も昭和に入ってからの建設で、この蔵だけが工業化以前の層に属している。

移築の伝えと、登録の理由

この蔵はもともと東隣の本家の敷地に建っていたものを、現在の位置へ移したと伝えられる。移築の年代を示す確かな記録は確認できなかったため、伝承として受け取っておきたい。土蔵造の建物は解体と再構築が可能な構法であり、移築自体は珍しいことではない。

登録の基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」で、工場や事務所など9棟が2020年(令和2年)8月17日に一括して登録有形文化財となった。葛利毛織工業株式会社土蔵の登録番号は23-0555である。

9棟のうち8棟は昭和の建築で、この蔵だけが江戸期にさかのぼる。近代の産業施設のなかに一棟だけ時代の違う建物が混じることで、敷地の景観に奥行きが生まれている。文化庁の解説も、その点を評価の理由に挙げている。

白壁と桟瓦、そして下屋の落差

土蔵造は、木の軸組の外側を厚い土で塗り込め、その上を漆喰で仕上げる構法である。火と盗難から中身を守るための造りで、壁は分厚く、開口は小さい。葛利毛織工業株式会社土蔵の白い壁面が、周囲の板張りの建物のなかで際立って見えるのはこのためである。

目を引くのは、本体と下屋の関係だろう。厚い壁の蔵に、後から軽い庇が取り付いている。家財を守る蔵と、工場の荷を置く場所が、1棟のなかで役割を分け合っている。

屋根は切妻の桟瓦葺。工場の鋸屋根、主屋と事務所の寄棟、離れの入母屋と並ぶと、この敷地には4種類の屋根形式が揃っていることになる。門から工場へ歩きながら見上げると、その違いがよく分かる。

見学方法とアクセス

葛利毛織工業株式会社土蔵は稼働中の工場敷地内にあり、常時公開はされていない。愛知県公式観光サイトによれば、事前に相談すれば時期によって敷地内を見学できる場合がある。申し込みは2週間前までに電話(0586-87-3323)へ。2名から3名の少人数から10名程度まで、11名以上は要相談で、土曜と日曜は休業日のため原則受け入れていない(2026年8月31日確認)。

撮影についての公開規定は確認できなかった。家財を納めた蔵であり、内部の撮影は特に慎重に相談したい。

名鉄尾西線の玉ノ井駅から徒歩約2分。車では東海北陸自動車道の一宮西出口から約15分、名神高速道路の一宮インターチェンジから約25分。敷地の中央にあるため、道路から白壁を見ることはできない。

Q&A

Q葛利毛織工業株式会社土蔵は見学できますか。
A稼働中の工場敷地内にあるため常時公開はしていません。2週間前までに電話(0586-87-3323)で相談すれば、時期により敷地内の見学が認められる場合があります。土日は休業日です。
Q葛利毛織工業株式会社土蔵はいつ建てられましたか。
A江戸時代末期、1830年から1868年頃の建築とされます。敷地の9棟のなかで最も古く、他の8棟は昭和期の建築です。
Q葛利毛織工業株式会社土蔵は移築されたのですか。
Aもともと東隣の本家に建っていたものを現在地へ移したと伝えられます。移築の年代を示す確かな記録は確認できていません。
Q葛利毛織工業株式会社土蔵は今どう使われていますか。
A本体は家財を納める蔵として、北面と東面に廻された下屋は工場の倉庫として使われています。
Q葛利毛織工業株式会社土蔵はいつ登録有形文化財になりましたか。
A2020年(令和2年)8月17日に登録有形文化財(建造物)に登録されました。登録番号は23-0555です。

基本データ

名称葛利毛織工業株式会社土蔵
所在地愛知県一宮市木曽川町玉ノ井字宮前114他
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年2020年(令和2年)登録
員数1棟
寸法土蔵造2階建、桟瓦葺、建築面積55平方メートル
所有者非公表(民間所有)
公開状況通常非公開、事前相談により見学可

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース 葛利毛織工業株式会社土蔵
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00013408
一宮市 一宮市内の文化財
https://www.city.ichinomiya.aichi.jp/katsuryokusouzou/hakubutsukan/1044092/1024202/1036232.html
愛知県公式観光サイト Aichi Now 葛利毛織工業株式会社
https://aichinow.pref.aichi.jp/spots/detail/3024/
一宮市観光協会 毛織物産地「尾州」のいま・むかし のこぎり屋根のある風景 vol.1
https://www.138ss.com/feature/detail/11/

最終更新日: 2026.08.31