旧林家住宅主屋及び裏座敷とは

旧林家住宅主屋及び裏座敷は、愛知県一宮市起にある大正時代の住宅建築で、平成14年(2002年)に登録有形文化財(建造物)に登録された。木造2階一部平屋建、瓦葺で、建築面積は265平方メートルある。現在は一宮市尾西歴史民俗資料館の別館として公開されている。

この場所には格式のある宿があった。起は、東海道の宮宿と中山道の垂井宿を結ぶ脇往還・美濃路の七宿のひとつである。林家は享保5年(1720年)から明治維新まで、起宿の脇本陣と、木曽川の渡船を管理する船庄屋を務めてきた。大名や公用の旅人が本陣に入りきらないとき、控えの宿を担ったのが脇本陣である。

その建物は明治24年(1891年)の濃尾地震で倒れた。旧林家住宅主屋及び裏座敷は、その跡地に建て直されたものである。主屋が大正2年(1913年)に建てられ、昭和初期になって、江戸時代の屋敷構えを意識した裏座敷が増築された。宿場としての役目が終わってから40年以上あとに、宿場の記憶を組み込んだ住宅が建った。

登録の理由と、この建物が持つ価値

旧林家住宅主屋及び裏座敷が満たした登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。建物そのものの古さや珍しさではなく、街道の景観を構成しているという点が評価された。

文化庁の国指定文化財等データベースは、この建物について、座敷回りなどに近代的な構成が見られる一方、外観や細部は伝統的な大型町家の形式を踏襲していると記す。大正時代の住宅として新しい間取りを取り入れながら、通りに面した姿は江戸時代以来の宿場町の様式を守った。旧宿の景観を構成する主要な要素になっている、という判断はここから出ている。

脇本陣を務めた家が、宿場の制度が消えたあとも同じ場所で建て替えを続けた。旧林家住宅主屋及び裏座敷は、その連続性が建物の形として残った例である。宿場町では通りの並びが失われやすく、一軒の建物が街道の記憶を保つ役割を負うことになる。

見どころ

裏座敷の床が一段高い。旧林家住宅主屋及び裏座敷でまず見ておきたいのはこの段差である。脇本陣には、身分の高い客が使う上段の間があった。その上段へ続く玄関の趣が、昭和初期に増築された裏座敷に引き継がれている。江戸時代の屋敷構えを意識してつくられた部屋であり、床の高さがその意識を今も示している。

主屋と裏座敷をつなぐ渡り廊下では、土壁の赤い色に目が行く。平成30年度(2018年度)から行われた耐震補強整備工事で、建築当時の姿に戻された部分である。修理は建物を古く見せる作業ではなく、失われていた仕上げを根拠にもとづいて回復する作業でもある。赤い土壁はその成果として見ることができる。

庭も一緒に見たい。旧林家住宅主屋及び裏座敷の南に広がる旧林氏庭園は、10代目の林幸一が昭和初年から約10年をかけて作庭したもので、国の登録記念物になっている。心字池を中心とした回遊式で、鞍馬石、桃取石、揖斐黒石など各地から集めた石を組んでいる。ドウダンやカエデが植えられ、季節ごとに色が変わる。座敷から庭を見る配置になっているため、建物と庭は別々には成立しない。

見学方法とアクセス

旧林家住宅主屋及び裏座敷は一宮市尾西歴史民俗資料館の別館として公開されており、見学できるのは1階である。開館時間は午前9時から午後5時まで、本館への入館と旧林家住宅の見学は午後4時30分までとなっている。入館料は無料である。休館日は毎週月曜日で、月曜日が祝日や休日にあたる場合は開館する。祝日や休日の翌日も休館になるが、その日が土曜日、日曜日、祝日、休日であれば開館する。年末年始は12月28日から1月4日まで休みである。

行き方は鉄道とバスの乗り継ぎになる。JR東海道本線または名鉄名古屋本線の尾張一宮駅で降り、名鉄バスセンターの2番乗り場から「起」行きのバスに乗る。「起」停留所で降りて徒歩5分である。資料館の本館と旧林家住宅は隣り合っており、まとめて回ることができる。

建物の一部は貸し出しにも使われているため、展示や催しの状況によって見学できる範囲が変わることがある。開館日と公開範囲は一宮市尾西歴史民俗資料館へ事前に確認しておきたい。

Q&A

Q旧林家住宅主屋及び裏座敷は見学できますか。開館時間と入館料は。
A一宮市尾西歴史民俗資料館の別館として公開されており、1階を見学できます。開館時間は午前9時から午後5時までで、旧林家住宅の見学は午後4時30分までです。入館料は無料です。
Q旧林家住宅主屋及び裏座敷の休館日はいつですか。
A毎週月曜日が休館です。ただし月曜日が祝日や休日にあたる場合は開館します。祝日や休日の翌日も休館ですが、その日が土曜日、日曜日、祝日、休日であれば開館します。年末年始は12月28日から1月4日まで休館です。
Q旧林家住宅主屋及び裏座敷へのアクセスは。最寄り駅からどう行きますか。
AJR東海道本線または名鉄名古屋本線の尾張一宮駅で下車し、名鉄バスセンターの2番乗り場から「起」行きのバスに乗ります。「起」停留所から徒歩5分です。所在地は愛知県一宮市起字下町211です。
Q旧林家住宅主屋及び裏座敷はいつ、なぜ建てられたのですか。
A明治24年(1891年)の濃尾地震で起宿の脇本陣が倒壊したため、その跡地に再建されました。主屋が大正2年(1913年)に建てられ、昭和初期に裏座敷が増築されています。林家は享保5年(1720年)から明治維新まで起宿の脇本陣と船庄屋を務めた家です。
Q旧林家住宅主屋及び裏座敷はなぜ登録有形文化財になったのですか。
A登録基準のうち「国土の歴史的景観に寄与しているもの」に該当すると判断されたためです。外観や細部が伝統的な大型町家の形式を踏襲しており、旧宿の景観を構成する主要な要素になっていることが評価されました。平成14年(2002年)に登録されています。

基本情報

名称旧林家住宅主屋及び裏座敷
所在地愛知県一宮市起字下町211
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年2002年登録
員数1棟
寸法木造2階一部平屋建、瓦葺、建築面積265平方メートル
所有者一宮市
公開状況一般公開、1階のみ見学可、入館無料

参考文献

国指定文化財等データベース 旧林家住宅主屋及び裏座敷(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00002628
美濃路起宿脇本陣跡【旧林家住宅】(一宮市尾西歴史民俗資料館)
https://www.city.ichinomiya.aichi.jp/rekimin/1010274/1005629.html
利用案内・交通アクセス(一宮市尾西歴史民俗資料館)
https://www.city.ichinomiya.aichi.jp/rekimin/1010275/1005626.html

最終更新日: 2026.09.01