足助の町を代表する大商家

足助は豊田市の中心部から東へ入った山あいにある。かつては中馬街道の宿場町として、三河の海と内陸の信濃を結ぶ塩や物資の往来でにぎわった土地である。その古い街道筋のほぼ中央に、町でいちばん広い屋敷が建つ。鈴木家の旧宅、約4,000平方メートルの敷地に16棟が並ぶ一画である。

鈴木家の屋号は紙屋。もともとは紙を商う家だったが、代を重ねるうちに味噌や漆の取引へ広げ、やがて醸造業、金融業、三河湾沿岸の新田開発にも手を伸ばした。江戸後期には地域有数の豪商となり、屋敷もそれにつれて拡張していった。

最も古い主屋が建てられたのは安永5年(1776年)。前年の安永4年(1775年)に足助の町の大半を焼いた大火の、翌年のことである。これより前の建物は町に残っておらず、主屋は保存地区のなかで最古の遺構となる。鈴木家はこの主屋を起点に、座敷や仏間、いくつもの蔵、井戸屋形と釜屋、門屋、大工小屋などを明治期にかけて建て足していった。

屋敷全体が指定された理由

平成25年(2013年)、16棟とその敷地はまとめて重要文化財に指定された。評価の根拠は、一つの傑作というより、屋敷がまるごと残っている点にある。商家は断片的にしか残らないことが多い。ここでは江戸後期から明治にかけての建物が一体として保たれ、大きな商家がどのように時間をかけて広がっていったかを目に見える形で示している。

年代の裏づけも厚い。後から加わった仏間座敷には宝暦7年(1757年)の墨書があり、本座敷は文化14年(1817年)、新座敷は明治29年(1896年)の建築とわかっている。指定はこの屋敷を地方的特色において顕著なものと位置づけ、周囲に広がる重要伝統的建造物群保存地区の核としても重視している。豊田市内で重要文化財の建造物はわずか2件、その一つがこの屋敷である。

訪れる際の見どころ

主屋が一般に公開されたのは令和5年(2023年)8月のことである。長い修理を経て、明治29年ごろの姿に復原する方針がとられた。工事の過程では、どれほど古い材が生き残っていたかが明らかになった。手仕事で組み直された柱や梁、土壁。表側の二部屋は、その床組の材が大工小屋に保管されていたため、それを補修して実際に使い直している。

屋根のあたりを見上げると、海鼠(なまこ)壁が目に入る。黒い瓦の上に白い漆喰の目地を盛り上げた格子状の意匠で、栄えた商家の表構えを示す。調査の最中に一枚だけ見つかった海鼠瓦が、修理の手がかりとなった。主屋の奥では残り15棟の修理がいまも続いており、市はその現場を見学するツアーを折にふれて開いている。文化財の修理技術を間近で見られる機会である。ここで用いられる技は、2020年にユネスコ無形文化遺産にも登録された。

主屋の公開はおおむね金曜から日曜と祝日で、11月と中馬のおひなさんの期間は毎日開く。出かける前に、その時々の開館日を確かめておきたい。

Q&A

Q中に入れますか。
A主屋は令和5年(2023年)8月から公開されています。残り15棟は修理中ですが、工事現場の見学ツアーが折にふれて行われます。
Q鈴木家はどんな家でしたか。
A屋号を紙屋といい、紙にはじまり味噌・漆・醸造・金融・新田開発へと商いを広げ、地域有数の豪商となった家です。
Q主屋はどのくらい古いのですか。
A安永5年(1776年)の建築です。前年の大火で足助の大半が焼けた翌年にあたり、保存地区で最古の遺構です。
Qなぜ16棟が一括で指定されたのですか。
A屋敷がまるごと残っている点に価値があります。建物と土地が一体で、大商家が江戸後期から明治へ広がる過程を示すためです。
Q主屋の公開日は。
Aおおむね金曜から日曜と祝日で、11月と中馬のおひなさんの期間は毎日開きます。訪問前に開館日をご確認ください。

基本情報

名称旧鈴木家住宅(愛知県豊田市足助町)
所在地愛知県豊田市足助町本町20番・21番、山王6番・7番・8番
指定区分重要文化財(平成25年〔2013年〕8月7日指定)
対象16棟および土地。主屋は安永5年(1776年)建築
立地足助の重要伝統的建造物群保存地区の核
公開状況主屋は金曜から日曜・祝日に公開。11月と中馬のおひなさん期間は毎日。要確認

References

国指定文化財等データベース(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/00004654
文化遺産オンライン(国立文化財機構)
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/229638
豊田市 国指定重要文化財 旧鈴木家住宅 保存修理事業
https://www.city.toyota.aichi.jp/kurashi/shogaigakushu/1009223/1028563.html
ツーリズムとよた 旧鈴木家住宅
https://www.tourismtoyota.jp/spots/detail/656/

最終更新日: 2026.06.24

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