久野家住宅(愛山居)門柱とは
久野家住宅(愛山居)門柱は、愛知県東海市加木屋町愛敬に立つ大正後期(1919年から1926年)の門柱で、令和6年(2024年)3月6日に登録有形文化財(建造物)に登録された。屋敷の東面に開く正門の柱にあたる。
構造は鉄筋コンクリート造、間口は2.4メートル。文化庁の登録番号は23-0600、員数は1棟で、種別は住宅のうち「その他工作物」に分類される。
建てられた年を示す記録は残っていないが、形式とつくり方から、久野家住宅(愛山居)門柱は主屋と同じ大正後期のものと考えられている。主屋は大正14年(1925年)の建築で、設計は西村伊作。
東海市の説明によれば、この屋敷を建てた当主は学生時代に哲学を専攻しており、「哲学は、丸のものが四角であり、四角のものが丸である」という考えにちなんで、自邸の門を「哲学の門」と呼んでいたと伝えられる。丸い玉石を積んで四角い柱をつくるこの門柱の姿は、その言葉と重なる。
「再現することが容易でないもの」として登録された
久野家住宅(愛山居)門柱の登録基準は「再現することが容易でないもの」である。主屋が「造形の規範となっているもの」という基準で登録されたのに対し、門柱と庭門は、同じものをもう一度つくることの難しさが評価された。
難しさの中身は、材料の選別と積み方にある。使われているのは、大きさのそろった楕円形で扁平な玉石。自然の石から寸法と厚みの近いものを大量に選り分ける作業が前提になる。
その玉石を、頂部が斜め上を向いて突き出すように積み上げ、全体としては方形平面の柱に仕上げる。一つひとつの石が同じ角度で持ち上がるため、柱の面は平らではなく、規則正しい凹凸をもつ。石を貼るのではなく、石を並べる角度で柱の表情を決めている点が、この工作物の要になる。
令和6年(2024年)3月6日には、久野家住宅(愛山居)門柱とともに主屋・庭門も登録された。屋敷の入口、庭への出入口、住まいの本体という3つの要素が同時に文化財となった形である。
通りから見る玉石の柱
久野家住宅(愛山居)門柱は、屋敷の東側、公道に面した位置に立つ。敷地の中に入らなくても正面から見ることができる、この屋敷で唯一の登録文化財である。
近づいて見たいのは石の向きである。玉石の頂部は一つの方向へそろって傾き、光の角度によって陰の落ち方が変わる。晴れた日の午前と午後で、同じ柱が別の表情になる。
間口は2.4メートル。人が2人並んで通れる程度の幅で、屋敷の規模に比べると控えめである。それでも通りに面した景観の中では目を引く。周囲の住宅地に同じつくりのものはない。
鉄筋コンクリート造という点も見落とせない。大正後期は、鉄筋コンクリートが日本の住宅まわりに入り込みはじめた時期にあたる。近代の材料で下地をつくり、表面には在来の石を用いる。久野家住宅(愛山居)門柱は、その組み合わせが屋敷の入口という目立つ場所で試された例である。
見学方法とアクセス
久野家住宅(愛山居)門柱は、法人が所有する私邸の一部であり、常時公開の施設ではない。敷地内には通常立ち入ることができない。ただし門柱そのものは東側の公道に面しているため、道路から外観を見ることはできる。
過去には、愛知県内の登録有形文化財を対象とした建物特別公開「あいちのたてもの博覧会(あいたて博)」に合わせ、所有者の案内による公開が行われたことがある。開催の有無と日程は年ごとに変わるため、事前に主催者の公式サイトか東海市教育委員会社会教育課で確認したい。
撮影について、公道からの外観撮影を妨げるものはない。人が暮らす住宅の門であるから、敷地内や窓に向けてカメラを向けることは避け、路上に長くとどまらないようにしたい。
最寄り駅は名鉄河和線の南加木屋駅で、南へ約500メートル、徒歩でおよそ10分。名鉄名古屋駅からは太田川駅で河和線に乗り換え、およそ30分である。
Q&A
- 久野家住宅(愛山居)門柱は見学できますか。公道から見えますか。
- 敷地は非公開ですが、門柱は屋敷の東側で公道に面しているため、道路から外観を見ることができます。敷地内に入れるのは、まれに行われる特別公開の機会に限られます。
- 久野家住宅(愛山居)門柱はどのようにつくられていますか。
- 鉄筋コンクリート造で、表面に大きさのそろった扁平な楕円形の玉石を用いています。各石の頂部を斜め上方に突き出すように積み上げ、全体としては方形平面の柱に仕上げています。間口は2.4メートルです。
- 久野家住宅(愛山居)門柱はいつ建てられたのですか。
- 正確な年は分かっていません。形式やつくり方から、大正後期(1919年から1926年)、主屋と同じころの建築と考えられています。主屋は大正14年(1925年)の建築です。
- 久野家住宅(愛山居)門柱が「哲学の門」と呼ばれたというのは本当ですか。
- 東海市の説明では、この屋敷を建てた当主が学生時代に哲学を専攻しており、「哲学は、丸のものが四角であり、四角のものが丸である」という考えから自邸の門を「哲学の門」と呼んでいたと伝えられています。丸い玉石で四角い柱をつくるという構成が、その呼び名と対応します。
- 久野家住宅(愛山居)門柱への行き方を教えてください。
- 名鉄河和線の南加木屋駅が最寄りで、南へ約500メートル、徒歩でおよそ10分です。名鉄名古屋駅からは太田川駅で河和線に乗り換え、およそ30分かかります。
基本情報
| 名称 | 久野家住宅(愛山居)門柱 |
|---|---|
| 所在地 | 愛知県東海市加木屋町愛敬83-2 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) |
| 指定年 | 令和6年(2024年)3月6日登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 間口2.4メートル、鉄筋コンクリート造 |
| 所有者 | 有限会社山善産業 |
| 公開状況 | 敷地は非公開。門柱は東側の公道から外観を見ることができる |
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース 久野家住宅(愛山居)門柱
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00014846
- 文化庁 国指定文化財等データベース 久野家住宅(愛山居)主屋
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00014845
- 東海市 東海市の文化財8(登録有形文化財)
- https://www.city.tokai.aichi.jp/bunka/1002738/1009425/1002768/1008155.html
- 文化庁 登録有形文化財登録基準
- https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/yukei_kenzobutsu/toroku_yukei_kijun.html
- 文化庁 文化審議会の答申(登録有形文化財(建造物)の登録)令和5年11月24日
- https://www.bunka.go.jp/koho_hodo_oshirase/hodohappyo/93969901.html
最終更新日: 2026.08.31