久野家住宅(愛山居)主屋とは

久野家住宅(愛山居)主屋は、愛知県東海市加木屋町愛敬にある大正14年(1925年)建築の郊外住宅で、令和6年(2024年)3月6日に登録有形文化財(建造物)に登録された。伊勢湾の東岸、知多半島の付け根にあたる丘陵地に敷地を構える。

構造は木造2階建(一部平屋建)、切妻造、屋根は天然スレート葺。建築面積は176平方メートルで、文化庁の登録番号は23-0599である。

設計者は西村伊作。明治17年(1884年)に和歌山県新宮に生まれ、大正10年(1921年)に東京・駿河台で文化学院を創設した人物で、芸術家・建築家としても多くの建物を手がけた。久野家住宅(愛山居)主屋は、建築を本業としないこの設計者が施主のために描いた住宅である。

建物は老朽化した先代の家屋を建て替えたものだった。竣工後まもなく一部が改修され、2階に見晴らしのよい展望室が加えられている。昭和5年(1930年)にはその姿を確認でき、同じ年、知多半島を訪れた皇族がこの家に宿泊して展望室を使った。文化庁の国指定文化財等データベースは、昭和5年(1930年)頃の増築と、昭和47年(1972年)の改修を記録している。

「造形の規範となっているもの」という登録基準

久野家住宅(愛山居)主屋の登録基準は「造形の規範となっているもの」である。同じ敷地の門柱と庭門が「再現することが容易でないもの」という別の基準で登録されたのに対し、主屋はかたちそのものが評価された。

西村伊作は生涯に多くの文化住宅や教会を関東・関西を中心に設計したが、震災などによってその大半が失われている。東海市の説明によれば、久野家住宅(愛山居)主屋は全国的にみても数少ない遺例にあたる。

大正期の日本では、家族の生活を中心に据えた合理的な間取りをもつ住宅が広まった。この家でも1階・2階のいずれも、日当たりのよい南側に家族の居住空間と応接室・書斎を配し、和室と洋室を用途によって使い分ける。1階は和室、2階は洋室が中心となる構成である。

主屋・門柱・庭門の3件は、令和6年(2024年)3月6日に同じ日付で登録されている。1つの屋敷を建物と工作物の両面から残す扱いになっている。

アーチと外壁を見る

久野家住宅(愛山居)主屋で最初に目に入るのはアーチである。南面の窓と、各階のベランダの柱間にアーチが連続し、外観の印象を決めている。

屋根は南に妻を見せ、そこに半円形の屋根窓が付く。曲線が地上から屋根の高いところまで反復する。

外壁は上下で仕上げが違う。1階はドイツ壁で、豆砂利を混ぜたセメントモルタルを塗る。2階は下見板の横張り。ざらついた面となめらかな板の対比が、建物を上下に分けて見せている。

ベランダは1階と2階の両方に取られている。日の当たる場所を各階に確保するという考え方は、大正期の郊外住宅としては新しいものだった。

敷地の東の入口には門柱が、主屋の南東には庭園への出入口となる庭門が立つ。いずれも久野家住宅(愛山居)主屋と同じ日に登録された工作物で、門柱は通りに面しているため外からでも意匠を確かめられる。

見学方法とアクセス

久野家住宅(愛山居)主屋は法人が所有する私邸で、常時公開の施設ではない。通常は敷地内に立ち入ることができない。

過去には、愛知県内の登録有形文化財を対象とした建物特別公開「あいちのたてもの博覧会(あいたて博)」に合わせ、所有者の案内による公開が行われたことがある。開催の有無と日程は年によって変わるため、訪問を計画する場合は主催者の公式サイトか、東海市教育委員会社会教育課に事前に確認したい。

撮影は、公開が行われる場合でも所有者と主催者の指示に従う。敷地の外からは、東側の通りに面した門柱を見ることができる。人が暮らす住宅であり、近隣の生活の場でもあるため、道路上に長くとどまるのは避けたい。

最寄り駅は名鉄河和線の南加木屋駅で、南へ約500メートル、徒歩でおよそ10分。名鉄名古屋駅からは太田川駅で河和線に乗り換え、およそ30分である。

Q&A

Q久野家住宅(愛山居)主屋は見学できますか。公開されていますか。
A常時公開はされていません。法人が所有する私邸で、通常は敷地内に入ることができません。過去には「あいちのたてもの博覧会(あいたて博)」に合わせた特別公開が行われた例があります。最新の予定は主催者の公式サイトか東海市教育委員会社会教育課でご確認ください。
Q久野家住宅(愛山居)主屋はいつ建てられ、誰が設計したのですか。
A大正14年(1925年)の建築で、設計は西村伊作です。明治17年(1884年)に和歌山県新宮に生まれ、大正10年(1921年)に東京・駿河台で文化学院を創設した人物で、芸術家・建築家としても多くの建物を手がけました。
Q久野家住宅(愛山居)主屋はどのような構造の建物ですか。
A木造2階建(一部平屋建)、切妻造、天然スレート葺です。建築面積は176平方メートル。外壁は1階が豆砂利入りセメントモルタル塗りのドイツ壁、2階が下見板の横張りとなっています。
Q久野家住宅(愛山居)主屋への行き方を教えてください。
A名鉄河和線の南加木屋駅が最寄りで、南へ約500メートル、徒歩でおよそ10分です。名鉄名古屋駅からは太田川駅で河和線に乗り換え、およそ30分かかります。
Q久野家住宅(愛山居)主屋はどのような文化財ですか。
A令和6年(2024年)3月6日に登録有形文化財(建造物)として登録されました。文化庁の登録番号は23-0599、員数は1棟です。登録基準は「造形の規範となっているもの」です。

基本情報

名称久野家住宅(愛山居)主屋
所在地愛知県東海市加木屋町愛敬83-1
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年令和6年(2024年)3月6日登録
員数1棟
寸法建築面積176平方メートル、木造2階建
所有者有限会社山善産業
公開状況非公開。特別公開が行われる場合を除き敷地内には入れない

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース 久野家住宅(愛山居)主屋
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00014845
文化遺産オンライン 久野家住宅(愛山居)主屋
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/564725
東海市 東海市の文化財8(登録有形文化財)
https://www.city.tokai.aichi.jp/bunka/1002738/1009425/1002768/1008155.html
文化庁 文化審議会の答申(登録有形文化財(建造物)の登録)令和5年11月24日
https://www.bunka.go.jp/koho_hodo_oshirase/hodohappyo/93969901.html
文化庁 登録有形文化財登録基準
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/yukei_kenzobutsu/toroku_yukei_kijun.html
新宮市 西村伊作
https://www.city.shingu.lg.jp/Info/54

最終更新日: 2026.08.31